TSUYOSHIと西崎信太郎のR&B談義

R&Bフリーク以外は置き去りにするR&B評 第25編『Silk』

2016/10/01 19:36 投稿

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Silk

アメリカ合衆国ジョージア州アトランタにて結成されたR&Bグループ。キース・スウェットにより発掘、全米総合チャート1位に輝いた”Freak Me”などのヒット曲で知られる。

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<TSUYOSHI評>

シルクにおける一番の代表曲『Freak Me』。例えばサビ前半の”Let me lick you up and down の箇所を作者であるキース・スウェットに、サビ後半の”Cause tonight baby の箇所をK-Ci (ケー・シー)もしくは全盛期のアーロン・ホールにでも歌ってもらったなら多分最強な曲になる気がする。

 などと野暮なことはさておき。とかく人は意外性や落差の大きさというものにどう抗っても心を持っていかれがちなもの。90年代までは数多存在していた黒人ボーカルグループ、有名どころは何かしらの強烈な個性をもってファンの心を鷲掴みにしてきた。例えば、圧倒的な歌声のデヴィッド・ラフィンと美しいファルセットのエディ・ケンドリックスの二枚看板を擁するテンプテーションズ。ソウルのお手本バリトンなマーヴィン・ジュニアとソウルのお手本ファルセットなジョニー・カーターの二枚看板を擁するデルズ。斜めな目線で言えば、小柄な双子がフロントに並ぶ時点ですでに個性的なウィスパーズなんてのもある。80年代に入ってからも、見た目を裏切るバブルガムな歌声のラルフ・トレスヴァントとタフネスな歌唱を売りにする前任ボビー・ブラウン&後任ジョニー・ギルを擁したニュー・エディションなど、やはりどのグループも皆それぞれ何らかの個性がある。ウィスパーズはさておき、今あげた各グループのリードシンガーは対局なタイプの2人で構成されている。今回のシルクも実際はこのタイプの部類に入るグループ。言わずもがな小さな巨人"リル・Gの強めテナーが売りのシルクなのだが、実際は鼻にかかったテナーからファルセットまでかますジョナサン・ラズボロとの二枚看板と言える。『Meeting In My Bedroom(https://youtu.be/mlJwac3PXUw)(https://youtu.be/bNEWVHtF5gM)は、最後の最後でリル・Gがかっさらっていくが、基本はジョナサンがリードの曲。テーマ部分の構成等とてもソウルマナーを感じるアレンジはそんなシルクにぴったりな楽曲なのだと思う。ステージングも皆でちゃんと振りをやっているし、伝統的な黒人ボーカルグループの雰囲気は踏襲されている。『If You (Lovin’ Me)(https://youtu.be/Hf6xKBIO5gA)(https://youtu.be/faK_xV3XpxM)も前半はジョナサン、後半はリル・Gとリードを交代する。この曲を聴いていて特に思うのだが、同じ曲なのに前半と後半で違う曲に変わってしまったのかと思わせるほどリードシンガーの歌の質が違うのにはちょっと驚く。やはり魅力的なグループなのだと改めて思う次第。

一時期リル・Gがグループを抜けている間、アル・B・シュア!、ジェイムス・イングラム、エル・デバージ、バリー・ホワイトがマイクパスをする名曲『The Secret Garden (Sweet Seduction Suite)』をカバー。メンバー4人全員が適材適所で本家の如くリードを回していた。そして昨年発表された『Love 4 U 2 Like Me(https://youtu.be/pXr5RG3IvNY)では良質なトラックに乗せて5人がそれぞれ存在感を出している。90年代にデビューしてゴリゴリやっていたアーティストが、オトナで良質な雰囲気をまとったR&Bで帰ってくるのもまた一興だ。


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<西崎信太郎評>

決定的な'90年代リヴァイヴァルな流れを感じているわけではないのですが、ディアンジェロ、ジョデシィという'90年代の巨頭が、ここ2年の間に新作をリリースし(両者共に15年以上のブランクがあった為、今のシーンにおいて跳ね返り度合いも格段に大きかった)、そんなディアンジェロの初来日公演も決行されたり、その流れも手伝ってかマクスウェルの初来日公演も実現したりと、やはり支持が高い'90年代のアーティストと、彼らのサウンド。

 このシルクも、R&B黄金期の'90年代にデビューしたヴォーカル・グループ。ご存知キース・スウェットのバックアップにより、キースのレーベルKeiaの第1弾アーティストとしてデビューしたのが'92年。シルクと言えば"Freak Me"。シルクの人気を決定付けたスロウ・ジャムですが、ジョデシィにしても、H・タウンにしても、代表曲がスロウ・ジャムって、今のR&Bシーンにおいてのヒットの法則とは全く異なるアプローチ。今は、そもそもシーンを牽引するグループが皆無だから、単純比較は出来ないかもしれませんが。

 さてさて、そんなシルクが、'16年に新作『Quiet Storm』をリリースしたわけですが、これがオリジナル・メンバーによる新作リリース。正直、グループという外枠があってグループのDNAが引き継がれていれば、イチファンとしてはどんな形のリユニオンでも嬉しい限りですが、やっぱりオリジナル・メンバーでの再起は格別のトピック。しかも、MV作成曲で、シルク健在っぷりと十分すぎるほどアピールした"Love 4 U 2 Like Me"は、師キースの作品をはじめとし、ジョニー・ギル、チャーリー・ウィルソンらを手掛けてきたワーリー・モリスが制作という泣きのプロダクション。

 今のR&Bシーン全盛のオルタナティヴ・ソウルやトラップ・ソウルを、スロウ・ジャムとして解釈するしないは別の話として、シーンの流れとは別の視点で、個性を主張するスタンスが好きなんです。『Quiet Storm』というタイトルが全てを物語る、今なお進行形のシルク・イズム。これからも仲良く歳をとって頂きたいかぎりです。




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