マディソン・スクエア・ガーデン公演から、またさらに進化した素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたウェンブリー・アリーナ公演。

映画『WE ARE X』で浮かび上がってくる答えが、そのままライブにつながることで、感動はまた何倍にも膨れ上がる。

X JAPANの壮絶な歴史と、これから向かっていく未来が、映画とライブでひとつになり、ファンの心を感動と夢で満たしてくれた。

今年は間違いなく、X JAPANの新しい歴史が世界規模で創られていくことになるだろう、と僕は思う。



前回に引き続き、『La Venus』の魅力を音楽的に見ていきたいと思うが、映画『WE ARE X』とウェンブリー・アリーナ公演の興奮の中にいる今、幸せなことに、今回はその2つともしっかりリンクした内容となる。

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『La Venus』という作品はまるで『今のYOSHIKIのすべて』のようだ。

だから僕は、『La Venus』から、これからのX JAPANが見えると思うのだ。


今回のウェンブリー・アリーナ公演で演奏された『La Venus』のアレンジには、激しく心をつかまれたが、それはまるで『La Venus』の意味をそのまま音にしたようだった。

後半、突然登場する、パイプオルガンと聖歌の合唱のようなコーラス。

『WE ARE X』を観た多くの人もそうだと思うが、聴いた瞬間、僕の脳裏には『WE ARE X』のHIDEやTAIJIにまつわる場面が浮かんだ。


「痛みは消えない」・・・

『La Venus』が『WE ARE X』の主題歌だから当然なのかも知れないが、『La Venus』はキジャック監督が切り取ってみせたX JAPANとYOSHIKIの物語への、答えそのものだ。

歌詞に描かれているのは、HIDEとTAIJI(YOSHIKI個人としてはお父さんも含んでいることだろう)への深い想いと願い、そして自分たちが「消えない痛み」と共に生きながら、未来に向かって生きていくという決意だ。


では音楽はどうだろう。

これまでYOSHIKIが生んできたどんな作品よりも素直でシンプル、優しさとぬくもりに満ちたメロディー。

それらを表現するTOSHIの、これまでのどんな作品よりも美しく、存在感のある声で歌い上げる圧倒的な歌。

ここから何が見えるのだろうか。

映画に描かれているように、X JAPANの歴史を襲った3つの悲劇のうち一つはTOSHIが去っていったことだ。

そのTOSHIが、心の中も含めて本当の意味で戻ったとき、X JAPANは新しい未来に向かって再び歩み始めた。

解散前の頃とは違い、YOSHIKIが深く信頼を寄せるTOSHIのボーカルは、本格的な世界進出を可能にした。

つまりTOSHIの美しさに溢れた歌は、X JAPANの今と未来そのものだ。



では、素直でシンプル、優しさとぬくもりに満ちた音楽から、何が見えてくるのだろう。

同じように作曲をしてアレンジを手がける者として、断言できること。

それは、自信だ。

音楽に対する自信。

100年残る、世界に通用する音楽。

それを生むことができる、という自信から、YOSHIKIは『La Venus』という恐ろしく自然で素直、そしてシンプルな作品を生んだのだろう。



さて、このことで見えてくるのは、とても大切なことだ。

それは、「消えない痛み」を背負いながらも未来を力強く創っていく、というYOSHIKIの決意を可能にするのは『音楽』なのだ ということ。



2014年のマディソン・スクエア・ガーデン公演を観た時に、僕は2つの確信を得た。

ひとつは、このブロマガ、【夢と夕陽】21. 横浜アリーナ公演で僕が確信した X JAPANの今と未来 1.(http://ch.nicovideo.jp/tsudanaoshi/blomaga/ar637742)から4回にわたって書いた文章の中にある通り、

『YOSHIKI自身が、Xになっていた』ということ。

そしてもうひとつは、当時まだアルバムに関する情報が不確定だったため、無用な混乱を起こさないように文章にしなかったのだが、

『今のYOSHIKIは音楽的なクリエイティビティが爆発している』ということだった。

あの素晴らしいパフォーマンスは、音楽に対する自信、そして何よりも『音楽が未来を切り開いてくれる』という強い意識の賜物なのだと、僕はあのとき確信したのだ。

そして、その爆発するクリエイティビティが、ニューアルバムに収録されるいくつもの新曲として結実しつつあるのだ。


そう。

「痛みは消えない」・・・・けれど、その「消えない痛み」と共に未来に向かって歩き続ける、と決意したYOSHIKIにとって、歩き続けることができるのは、『音楽の力』があるからだ。

この『La Venus』という作品は、映画の主題歌を・・・というキジャックの希望から昨年完成したとYOSHIKIのインタビュー記事にある。

ということは、アルバムに収録される新曲たちが曲として既に完成しており、レコーディングの作業が営まれている時に完成した、ということになる。




2017年。
今年はX JAPANの新しい歴史が世界規模で創られていくことになる、と僕は確信している。

マディソン・スクエア・ガーデン公演から『WE ARE X』が制作され
ニューアルバムが制作される中、『WE ARE X』の主題歌として『La Venus』が生まれた。
そして、ロックの殿堂ウェンブリー・アリーナ公演の大成功・・・。



僕は、ひとつの確信を得た。

『WE ARE X』に描かれたX JAPANの壮絶な歴史と悲劇、その答えとしてYOSHIKIが未来に向かって歩む決意が作品となった『La Venus』
その音楽は自信に溢れ、優しく、そしてとても力強い。

そうだ・・・。

きっと、YOSHIKIが未来に向かって歩んでいく上で、大きな力になっているのは、ニューアルバムの存在なのだ。

ニューアルバムの作品達が、YOSHIKIの、そしてX JAPANの未来を切り開いて行くのだ。

その『音楽の力』があるから、YOSHIKIはHIDEとTAIJIに祈りを捧げながら、共に X JAPANとして世界中を回ることができるのだ。

YOSHIKIはニューアルバムが世の中に出る前に、映画『WE ARE X』の上映を受けて、『La Venus』という作品を送り出した。

その作品は、今のYOSHIKIそのものだ。

そこには、YOSHIKIの今の決意と、ニューアルバムに込められた音楽への自信が、そのまま形になっていた。

だから、もう心配しなくていいんだ、と僕は思う。

「傷は決して消えない」けれど、『音楽の力』があるから未来に向かっていける。

そして、その未来へ向かう道程は、ファンと共にあるのだ。