黒字倒産。
新聞やニュースなどで登場する言葉です。
「儲かっているのに倒産する」という不思議なこの現象、なぜ起こるのでしょうか?
「会計」と「実際のお金の動き」は違う?
「黒字」という状況は、一般的に企業の業績を示す「損益計算書」の最終的な数値がプラスの状態であることを指します。
その会社の「売上」があって、そこから仕入れや給料や経費など諸々の「費用」を支払った結果、きちんと利益が出た、つまり儲かった! という状態です。
しかし、この「売上」や「費用」を計算するタイミングが重要なポイントになります。
こんなときに差異が生じる!
例えば、「お金が入ったとき」ではなく「お金が入ることが確定したと認められるとき」だったり。
「お金を払ったとき」ではなく、「お金を払って購入した商品が売れたとき」だったり。
会計上では、お金の動き=黒字赤字とはならず、お金の動きとは違ったタイミングで「売上」や「費用」を捉えるのが悩ましいところです。
このような場合にはどうなる?
商品を納品したので、お金をもらうことが確定しているけど、取引条件が末締めの翌々月末日支払いなので、実際にお金が入ってくるのは2カ月以上後......
この場合、売上をカウントするのは納品した日ですが、もしその取引先が翌月になって急きょ倒産してしまったら?
売れ行きが非常に好調なので、取引条件を良くするために大量仕入を行った商品が、人気が急激に失速して在庫の山となってしまった。
この場合、すでにお金を払って購入しているわけですが、売れるまでは費用としてカウントされません。では、この在庫の山を抱え続けたら?
いずれの場合も、お金はない状態となっていますが......
例1では売上(=プラス)がカウントされています。
例2では費用(=マイナス)がカウントされていません。
どちらも、黒字となる要因となります。
しかしこの状況でも、当然のように月末になったら社員の給料、さらに店舗や営業所などの家賃、リース料や保険料などなど......毎月必須の支払いが発生します。
もちろん「取引先が一社倒産しただけ」「一つの商品の仕入に失敗しただけ」という程度では、これらの支払いが不可能となるところまではいかないケースが大半ではあります。
しかし、上記のようなことが複合的に発生したり、業界全体で連鎖的に起こったり、すでに金融機関からめいっぱい借入をしていたりすると、お金が回らなくなってしまうことがあり得るのです。
その結果、黒字倒産は起こります。
お金は企業の血液、と比喩されることがあります。
黒字倒産は、全身健康そのものと評判の人が、急に心臓に病を抱え、亡くなってしまうのと似ているのかも知れません。
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