勝てばそのまま旅行にも出かけられるし、負ければ自宅で引きこもり、2ちゃんねるで芸能人の悪口を書いて過ごす日々となる。G.W明けには、プロバイダからネットでの誹謗中傷をやめるよう警告のメールが届いた、なんて話もあったほど。
天皇賞が行われる京都競馬場の最寄り駅でもある京阪電車の淀駅。二十歳前後の頃、この駅で毎週のように友人の木下と待ち合わせをしていた。今はどうか知らないが、当時、駅から競馬場へ行くまでの道には様々な露天が並んでおり、怪しい店も多かった。
有名なところではピンポン玉の当たりを引く博打屋があった。木箱にピンポン玉が30個ほど並んで入っており、露天のオヤジがそこに当たりのピンポン玉(振ると鈴のような音が鳴る玉)を一つ落として木箱を軽く振って混ぜる。その中から当たり玉を的中させるというシンプルな博打であり、一回挑戦するのに1万円、当たれば3万円というシステムだった。
競馬場へ向かう時はそんな怪しい露天に誰も見向きしないのだが、これが競馬帰りの道のりでは事態が一変する。馬券で負けて後がない連中がピンポン玉博打の周りに人だかりを作り、今考えたら明らかにサクラのオヤジがいて、そのオヤジが万札をヒラヒラさせて「ワシ、やるで!」と高らかに宣言して挑戦する。
サクラのオヤジは見事に的中して3万円を受け取って、今度は別のサクラのオヤジも続けて挑戦して的中。それを見た通りすがりの素人のオヤジが、競馬の負けを取り戻そうとして挑戦。露天のオヤジが音の鳴るピンポン玉をゆっくり木箱の中に落として軽く振る。素人のオヤジは当たりの玉を目でじっくり追いかけて、これだと思うピンポン玉を一つ選択、手に取って振ってみて音が鳴らずに見事ハズレとなるのであった。
そんな光景を毎週のように見続けて、自分も競馬の負けがこんだ時など何度かそのピンポン玉博打に挑戦しそうになったが、ある日服の袖から入れ墨がはみ出ているヤクザが急に箱のピンポン玉をすべて割って当たり玉が一つも入っていないことが判明。冷や汗を流しながら首をひねる露天オヤジの首根っこをヤクザが掴み、そのままどこかへと消えていってしまった。
それ以降、ピンポン玉の露天オヤジを見かけることはなくなったが、風の噂ではどこかの競輪場近くでなぜかタロット占い師になっていたとのことであった。
さて今年の春の天皇賞。凱旋門賞を走った経験を持つ2頭に加え、成長著しい上がり馬も多く、G.Wにふさわしい華やかなレースとなりそうである。そんな折ちょうど金曜夕方、信頼できるK先生から8枠15番サウンズオブアースで間違いないという情報が入ってきた。過去のレースもすべて見直して「この馬の鬼足なら届く」と判断を下したとのことで、弟子の俺もそれには完全に同意であった。
昨年の菊花賞の好走も光る、このサウンズオブアースで勝負したい。対抗にはアドマイヤデウスとスズカデヴィアス。崖っぷち、待ったなし、外れたらタロットの勉強を始める覚悟である。
2015年5月2日
新爆