前回までは「公的年金」、すなわち国の年金のお話をしてきました。今回からはサラリーマンの方に焦点を絞って、「企業年金」についてのお話をしたいと思います。
「企業年金」とは一体何でしょう?
「退職金ならわかるけど、企業年金って今ひとつよくわからない」、そういう方も多いと思います。以前にもこのコラムで書きましたが、ごく簡単にざっくりと言ってしまえば「企業年金」というのは退職金のことなのです。
会社を辞める時に一度にまとめてもらえば退職金、何年にもわけて受け取れば「企業年金」になるというだけのことです。つまり退職金をあたかも公的年金のように何年にもわけて年金化して受け取る方法のことを「企業年金」と言っているだけのことです。
もちろん中には年金方式で受け取れない退職金もありますし、逆にそもそも勤務年数が少ない場合は年金化して受け取ることができず、一時金でしか貰えない場合もあります。
したがって全部が全部、企業年金=退職金とは言い切れませんが、ここは私流のざっくり解説で「企業年金とは退職金のことである」と理解しておいてください。
サラリーマン全員が受け取れる訳ではない
企業年金というのは、どこの会社にでもあるわけではありません。それどころか、退職金すらもないという会社だってたくさんあります。したがってサラリーマンの方は、まず自分の会社に退職金や企業年金の制度があるかどうかを確認することが重要です。
以前に「老後に1億円かかる、は本当か」でも書きましたが、この企業年金・退職金があるかないかで、老後に対する準備や心構えは全然違ってくるからです。会社が退職金を払うというのは、実際に払う段になってあわててお金をかき集めてくるなどということではなく、あらかじめ準備をしています。
つまり社員が入社した時から少しずつお金を積み立てていって、実際に退職する時に支払うという仕組みになっているのです。
したがって、企業年金や退職金というのは別な言い方をすれば「給料の後払い」という性格を持っています。社員から見れば、後払いで給料をもらう権利であるのに対して、会社から見るとそれは将来必ず支払わなければならない債務ということになります。
退職金や企業年金の積立てを「退職給付債務」と表現するのは、こういうわけだからです。
ところが企業年金の最大の問題点というのは、実はこの「退職給付債務」にあるのです。
次回はこの問題について少し考えてみたいと思います。