カトリックの総本山であるバチカン市国は、宗教的だけでなく大きな役割を持っています。国をまたいだ資料館としての意味です。「最後の晩餐」などの絵画や彫刻に注目が集まりやすいだけに、意外に思う方も多いかもしれませんね。
バチカンは古くからカトリックを通して多くの国とやり取りをしてきたので、貴重な書物や各国の王・有力者との手紙などが図書館にたくさん保管されているのです。
この図書館自体は1448年に作られたのですが、収容している資料はそれ以前のものも大量に含まれています。諸々の陰謀説やオカルト、フィクションの題材になっているのもこのためでしょう。
そうした濡れ衣(?)を晴らすため...ではありませんが、つい先日、バチカン図書館のアーカイブ化が始まりました。NTTデータバンクが請け負っているため、このニュースを目にした方も多いのではないでしょうか。
まだ始まったばかりなのでごく一部しか見ることができませんが、現時点ではこんなものがあります。
ギリシャ神話の叙事詩「イーリアス」の写本
これは元々平家物語のように口頭で伝わっていた、ギリシャ神話の物語を改めて記述した本です。アーカイブ化されたのはギリシャ語とラテン語版で、どちらもカラーの挿絵つき。装丁も凝っていて、文章がわからなくても楽しめます。
コーランの破片
1946年に個人から寄贈されたものですが、資料そのものはクーフィー体という古代の様式で書かれており、相当古いものであることがうかがえます。
クーフィー体はアラビア語最古の書体で、"アラビア書道"とも言われており、装飾・芸術的な面が強い書き方です。残念ながら保存状態が悪く、紙の大部分が欠けてしまっていますが、文字そのものの美しさは伝わってくるのではないでしょうか。
カトリック以外の文化や宗教圏の資料があるのはちょっと意外ですね。
他にも日本でキリスト教が迫害されていた時代にキリシタンの助命を嘆願した手紙など、日本に関わりのあるものもいくつか載っています。
かつてバチカン図書館からは何回か日本へ資料の貸し出しをしたことがあるとのことなので、こちらもいずれアーカイブ化されるかもしれませんね。6世紀頃の旧約聖書など、他ではとても手に入らないものあるそうですから、アーカイブ化されたら大きなニュースになりそうです。
こういうものがあるということを知ってからバチカンへ行ってみると、また違った楽しみ方ができるかも?