無料通話アプリ「LINE」を使って、多い日には一日1600件ものメッセージを、交際していた女性に送っていた男が今年2月、警視庁に逮捕された。ただし、逮捕理由は、女性の頭を殴ったり、腹部を蹴ったりしたという「暴行容疑」だ。報道によると、いわゆるストーカー規制法の適用は見送られたという。
ストーカー規制法は昨年6月に改正され、嫌がる相手に何度もメールを送りつける行為も「つきまとい」の一種として取り締まりの対象となった。しかし、ここ数年、若者を中心にコミュニケーション手段としての地位を確立しているLINEやTwitterなどのSNSは対象外。法律が社会の実態に追いついていない現状がある。
今回のように、ストーカー規制法の対象にならない行為がしだいにエスカレートしていくケースは、今後もありうるだろう。LINEのようなSNSのメッセージを連続で受けている場合、被害者が何か対処する手段はあるのだろうか。中川彩子弁護士に聞いた。
SNSのメッセージが「ストーカー規制法」の対象となる場合も
「ストーカー行為等の規制に関する法律(以下、「ストーカー規制法」)は、ストーカー行為による殺人事件が発生したことなどを受けて、2000年に成立した法律です。しかし、近年のインターネット等の発展に規制が追いついていません」
このように中川弁護士は切り出した。
「昨年になってようやく、拒まれているにもかかわらず何度もメールを送りつける行為が規制対象となりましたが、SNSはこの対象とされませんでした。したがって、SNSで連続メッセージを受けたこと自体に、ストーカー規制法を直接適用することはできません。
けれど、SNSは適用外だから警察は対応しない、とは決して考えないでください。SNSによってストーカー行為を受けている場合は、速やかに警察に相談し、対応を求めるべきです」
どんなときに、警察は動いてくれるのか。
「たとえば、送られたメッセージの内容が次のようなものであれば、ストーカー規制法2条1項の各号にもとづき、SNSのメッセージであっても、ストーカー規制法が適用される可能性があります。
・行動を監視していると思わせるような事項を告げるもの
・面会、交際その他義務のないことを行うことを要求するもの
・名誉を害する事項を告げるもの
・性的羞恥心を害する事項を告げるもの」
「ストーカー被害を受けたら、ひとりで悩まないで」
では、ストーカー規制法以外で、SNSを通じたストーカー行為に適用される法律はないだろうか。
「危害を加えるようなメッセージを送る行為は、刑法の脅迫罪(刑法第222条)にあたる可能性があります。また、他人が閲覧できるSNS上に悪口を書き込む行為は、名誉毀損罪(刑法第230条)に該当する可能性がありますね」
SNSストーカーでは警察は動かない、と早合点しないほうがよさそうだ。
「はい。いずれにしろ、被害を受けた場合は、ひとりで悩まないでください。早い段階で、警察や弁護士に相談をすることが重要です。
弁護士に依頼して、ストーカー行為をやめるよう通知してもらうことで、ストーカー行為が収まるケースもありますから」
このように中川弁護士は述べるとともに、「SNSがこれだけ普及している現在、SNSの連続メッセージを規制対象とする法改正を期待したいところです」と話していた。
デジタル社会の変遷は激しいが、1人でも多くの被害者を救うために、政府には社会の現実に見合った法改正を求めたい。
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