発明家にして変人、キューゲルシュライバー博士の頼みにより、「鳥肉サラダ屋敷」の警護を請け負った一行。
その日の夜に現れたラットマンを、一同は打ち倒した。
しかし博士によれば、自分が悩まされているたかり屋と、このラットマンは全く別物だとのこと。
一行は疑問符を浮かべつつ、その日は眠りについた。
次の日の夜、屋敷に現れたのは、マスクで顔を隠し、羽つき帽子を被った、五人組の男たちだった。
リーダー格の男は、芝居がかった仕草、丁寧ながら有無を言わさぬ口調で、金品を要求する。
脅しつけるように抜身の剣を扱う仕草は、それなりの使い手であることを伺わせた。
ここでことを荒立てては、互いに無事では済まないだろう。
皆は苦々しく思いながらも、彼らに金を渡してお引き取り願うことにした。
バルデマーが決意を込めた様子で、一人、追跡を試みる。
馬で悠々立ち去るたかり屋どもだが、バルデマーは密やかに、そして確実に尾行していった。
たかり屋どもは、酒場で軽く一杯ひっかけ、別の屋敷でまた金を巻き上げた後、アジトらしき場所へ戻っていった。
その場所は、なんと市警の詰所だったのだ。
市警について、デルベルツの街の人々に探りを入れても、特に不自然な話は出てこない。
たかり屋に関しても、有力な情報は何も得られなかった。
そして皆は、その行為が敵を刺激してしまったことを、身をもって知ることになる。
夜にも関わらず、「鳥肉サラダ屋敷」の周囲が騒がしくなり始めた。
馬や人の規則正しい足音、金属のガチャガチャ鳴る音が、屋敷を取り囲む。
「この屋敷に、恐ろしい強盗が潜んでいると聞いた。出てこなければ屋敷の主人もグルとみなす!」
市警による包囲網が完成していたのだ。
博士は取り乱し、頭をかきむしったが、すぐに決意を固め、潜水艇で逃げると宣言した。
そして皆へ報酬を渡し、彼は屋上を示した。空を飛んで逃げろ、と。
「キューゲルシュライバー式飛行機械がある」
皆は困惑し、顔面蒼白になり、しかし銃を構えた市警がついに突入してきたのを見て、覚悟を決めた。
ついでに屋敷は燃やしてしまおう、と、油や火種を屋敷中にばらまく。
屋上へ行き、飛行装置を装着したところで、階下から爆発が起こった。
熱風が皆の背を押す。嵐の名残か、風は強い。身を任せ、皆は屋根から飛び出した。
目指すは、城壁の外だ。
アンヤを伴うウドーは危うげなく悠々と飛んでいき、ウルディサンも鳥のごとく身をひるがえす。
バルデマーは危ういところで「早抜き鞘」に装着したワイヤーを使い、高度を保つ。
下からの銃撃にさらされたグレッチェンは地面へ墜落してしまい、グルンディが助けようと試みるも、うまくいかない。
風の中、皆は恐るべきものを目にする。
渦巻く風の中に、サメが泳いでいたのだ。
さらに、捕えていたジャイアントが逃げた、という声が上がる。
サメの牙、ジャイアントの棍棒による猛攻が、皆へ襲いかかる。
ジャイアントの攻撃をしのいだものの、バルデマーは墜落し、死につながる重傷を負ってしまう。
グレッチェンもサメの牙に深手を追わされる。
グルンディもついに墜落し、サメやジャイアントの攻撃にさらされる。
死の影に追われながらも、バルデマーは諦めず飛び立とうとする。
しかし、自力ではとても壁を越えられそうにない。
支援を求めて投げたワイヤーを受け取ったのは、ウルディサンだ。
エルフは自分が壁の向こうへ飛び降りる勢いを利用し、バルデマーを引きあげた。
しかし勢い余って、バルデマーは宙へ投げ出されしまい、かろうじて木の枝に受け止められた。
ぐったりと枝葉にもたれるその姿は、既に命の火が尽きていたかのように見えたが――
グレッチェンは、腕から血を流しつつも、なんとか飛び立った。
が、壁を越えようとする彼女の背後に、ジャイアントが迫る。
手は出させぬ、と立ちはだかったのは、一人のドワーフ。
もはや飛ぶことさえしようとせず、グルンディは武器を構えて、巨人と正面から対峙した。
「この巨人が、わしの墓標じゃ」
グルンディは、巨人に鋭く深い一撃を入れた。
痛みに暴れる巨人の棍棒がグルンディを殴り飛ばし、その身を壁の外まで弾きだした。
傍目には、ドワーフは確かに殺されたように見えた。
が、ドワーフの身に宿る運命の力が、かろうじて彼を生に繋ぎとめたのだった。
ウルディサンがバルデマーを木から下ろす。
バルデマーは息をつき、意識を取り戻した。
まるで、運命に導かれたかのごとく、彼は死の淵より戻ってきたのだ。
かくして一行は、死を垣間見ながらも、デルベルツの街をかろうじて脱出することができたのだった。
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