改正公職選挙法の成立で、選挙戦中のインターネット利用が夏の参院選から解禁されます。
慶応SFC助教授時代から約15年来の悲願を達成した感慨もありますが、ここからが本番です。まだ法改正で環境が整ったに過ぎません。党の広報委員長として、参院選で3期目を目指す候補予定者として、どのようにネット解禁を生かすのか具体化していかねばなりません。
●リアル選挙と相乗効果
ネット選挙法案が成立した直後の先日、議員会館の私の部屋を訪れたご年配の党OBが、ネット広報を担当する事務所スタッフに「選挙は有権者と顔を合わせるものだぞ」とクギを刺されていました。
大先輩、全くのご指摘の通りです。ただ、僭越ながらちょっと誤解もあります。ネット選挙は一見すると、パソコンでバーチャルなやり取りをする印象がありますが、実は、従来の選挙戦で政治家と接点が無かった有権者の方々とのリアルなつながりを新たに作り出せるかが勝負だと思います。最近、商業施設でネット利用者を、リアルの店舗に呼び込む仕組みを「オンライン・トゥ・オフライン」(O2O)と言いますが、ネット選挙でも、政治家が有権者との「O2O」を築けるかが重要なのです。
「O2O」で事例を一つ上げましょう。都市部の選挙区だとベッドタウンで選挙戦中の平日に街頭演説をした場合、街におられる有権者は在宅の主婦やご年配の方々が中心です。日中、都心部で仕事をされている方々に直接演説を聴いていただくには土日の昼間に限定されがちです。しかし演説の模様を候補者のホームページで動画で流せば、選挙戦終了後の午後8時以降に帰宅して、昼間に候補者が何を話したのかを見聞きできます。これまで選挙戦中のホームページ更新は禁止されていました。
ネット選挙解禁により、時間的、物理的制約を解消し、候補者と有権者の接点が作れるのです。参院選は週末が3度ありますが、選挙戦が1週間しかない地方選の場合、この意義は小さくありません。
●政治家が発信拠点を持つ意義
勿論、かしこまった演説の動画をわざわざアクセスする人は少ないでしょう。トークライブのように娯楽要素を加味すると若い方の関心を呼べるかもしれません。4月下旬、新宿ロフトワンプラスで、ネット選挙解禁の意義を考えるライブに他党の論客と参加しました。
客席はパブ形式でお酒やつまみを注文でき、音楽を聴くように政治家同士の議論を気軽に聴くのです。他の方と激論するシーンもありましたが、地上波テレビの収録と違い、カットされることがないので候補者が本当に伝えたいことをお話でき、有権者とじっくり対話できます。候補者がイベントを主催した場合は飲食の提供こそできませんが、動画中継を交えると会場に来られなかった方とも幅広く「熟議」が可能になります。
その意味では、政治家がメディアを持つ意味合いがますます重要になるでしょう。私自身、2001年からインターネットTV「スズカンTV」を運営してきましたが、この4月から新宿タカシマヤ近くにトレーラーハウスの「すずきかんコラボスタジオ」(すずスタ)を開設。朝日新聞でもご紹介いただき、同紙の政治記者として活躍された早野透・桜美林大教授を招いた初日のトークライブは、中継したニコニコ動画を500人近い方々が視聴しました。
リアルでこの人数を集めるとなると、動員やホール確保の手間は本当に大変です。今後は「すずスタ」に来られたリアルのお客様とネット上のユーザーとも対話できる企画もやってみたいと思います。
政治の世界ならではの「O2O」実践へ、先陣を切って試行錯誤するつもりです。
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