Hector87 のコメント

経営についての批判一本に絞れば批判はそこまで大きくならなかったと思います。その部分については私も大いに納得しています。
これは戦略的にも戦術的にも失敗です。

問題は、経営の話と経済の話をごちゃ混ぜにしたことです。
残念ながら、経営と経済は別に語られなければならない事象です。ここでいう経済は、企業や家計等のミクロではなく国単位のマクロ経済です。

労働時間の話に対するツッコミ(生産性は単位時間あたり創出したの付加価値の量なので時間の長さだけでは意味がない)とはともかく、日本人の給料は高いという話(中間層の否定)、そして日本人はケインジアンが多いという誤った分析(むしろ新古典派的な人が多い)、この2点はマクロ経済の視点で見ると明確に誤りでありました。
最新の情報では、スティグリッツやクルーグマンなどによって、和田さんのおっしゃる新古典派経済学的な意見はほぼ完全に否定されております。

経営者は経営については詳しいのですが、マクロ経済についてはズブの素人がほとんどです。(これはクルーグマンも指摘している)
なまじお金が絡むので同じように見え、経営の視点でマクロ経済を語ってしまうのです。(見方によっては傲慢な思考)

経営の思考では、モノ(サービスも含む)を売って稼ぐことが重要ですのでつい、マクロ経済でも同じことを言いがちです。
ですが、マクロ経済では、モノを売ってそれで終わりではありません。モノが売れるということは必ず反対でお金を出して買っている人がいるということです。
当り前に見えますが、経営の視点では買った人のその後や財布の中身までは考えません。

マクロ経済の視点では、売った人と買った人がいて、差し引きすると0になるという見方をします。
金融資産も同じです。世界中の金融資産と金融負債を差し引きすると必ず0になります。会計的に言うと、国や世界全体をバランスシートで考えるようなものです。輸出入も同じです。
ですので、稼ぐ=支払うが同時に成立します。これがマクロ経済の世界観です。

そう考えると、労働者は同時に消費者、つまりお客さんでもあるのです。
なので、よく言われるGDPというのは、支出(消費や投資)と所得(分配)と付加価値(生産)は同じもの(GDP三面等価の原則という)であり、そこで発生したお金の取引量を図っている指標なのです。
稼いだ額でも間違いではありませんが、同時に支払った額でもあるのです。(経済成長とは、国全体のお金の移動量の増加なのです)

ですので、日本人の給料が高過ぎるから下げろというのは、GDPを減らせと言っているのと同等なのです。
何故なら給料を貰う側は同時に消費をする、いうなれば市場であり、その市場を縮小せよと言っているわけです。
今の日本がデフレ不況なのは、平均給与が下がり市場が縮小してより消費を抑制しているから(合成の誤謬)です。(人口減で経済成長している国があるので人口減は理由になりません)
ちなみに、日本の高度経済成長は、人口ボーナスの恩恵というよりも分厚い中間層の豊かな市場(需要)と需要に応じる生産性の向上(供給)によって達成された部分が大部分を占めます。池田勇人の所得倍増計画は正しかったわけです。

マクロ経済は経済の大枠であり、地政学のように大きな視点を求められるのが似ていると思います。
マクロ経済の本質をより詳しく知りたいのであれば、廣宮孝信氏の「国債を刷れ!」を読むことをおすすめします。考え方さえ柔軟で真にリアリストであれば、入門書として最適です。
そのあとはスティグリッツやクルーグマン、今注目のピケティでもいいと思います。

長々と失礼いたしました。

No.1 118ヶ月前

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