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和田誠さんインタビュー「猫表紙のヒミツ」

2015/10/26 18:00 投稿

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「週刊文春」の猫の表紙でとくに思い出深いのは、
 続編
を描いたものですね

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和田さんの仕事場にて

「週刊文春」の表紙には、犬や鳥も結構描きますし、新年号では干支の動物もよく描きます。だけど動物の中で、今までに一番多く描いたのは、やっぱり猫かな。猫は干支や星座にもなっていないというハンデがあるのに(笑)。長年一緒に生活しているからでしょうね。
「そろそろ文春の表紙に猫を描きたいな」なんて周期があるわけではありません。うちの猫がいいポーズしてくれて、おもしろい写真が撮れたとか、旅先や散歩の途中で可愛い猫に出会ったとか、そういうきっかけがあって描いているといった感じです。
「週刊文春」だけでなく、本の装丁や、ちょっとした挿絵にも猫を描くことは多いです。僕がデザインした「村上春樹翻訳ライブラリー」のマークも猫の形になっていますし、谷崎潤一郎やチャンドラーなど、作家が猫を抱いている姿を描くというパターンも結構あります。

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 平成27年10月29日秋の特大号

 今週(10月29日秋の特大号)の表紙に描いたのは、うちの猫のチーが、お気に入りのベッドで寝ているところです。このベッドは、数年前にかみさん(平野レミさん)が、クリスマスプレゼントとして買ってあげたもので、チーは毎日ここで寝ています。寒い日なんかは「僕の布団に入ってきてくれたらいいな」と思うんですけど、来てくれない。自分のベッドで寝るのが好きみたいです。
 猫の寝ている姿はかわいいですね。旅行鞄の中で寝ているとか、思いがけないところで寝ているのも、またかわいい。伸びをしている姿もかわいいし、前足でフミフミしているのもかわいい。うちのチーは、ベッドの上を前足でフミフミして、ちょうどいい凹みを作って、寝床を整えてから寝るんです。
 寝ているときは、絵の資料にする写真が撮りやすいから、「週刊文春」の表紙も猫が寝ている姿が多いですね。起きている猫は動き回って、カメラを構えるとどっか行っちゃいますから。


<よその家の猫>

鏡を見ている猫

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平成9年10月30日号

 この絵は、知人からもらった写真をもとに描きました。猫が鏡で自分の顔を見ていた姿がかわいかったので、その家の奥さんが撮影したとのことです。
 ほかに、テレビに映っている鳥をじっと見ている猫の写真を送ってもらって描いたこともあります。「表紙に描いてくれ」ってわけじゃないと思うんですけど、猫のかわいい写真をいただくことは結構ありますね。

ドージー

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昭和54年9月6日号

 この猫はドージーちゃんといいます。僕がまだ新婚時代に、ヨーロッパに旅行に行く知人から預かった猫です。まだ小さくて、あまりにもかわいかったから、返したくなくなって、「もう飼い主が帰ってこなきゃいいな」なんて、かみさんと話していました(笑)。


<和田さん家の歴代猫>

一代目 桃代

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平成12年4月27日号

 旅から帰ってきた飼い主が、ドージーちゃんを引き取って行ってしまって、なんだか寂しくなっちゃって……。そんなとき、友人が子猫を何匹か連れてうちにきました。その中の1匹をもらったのが、一代目の猫の桃代です。
 しばらく経ってうちに長男が生まれて、桃代が赤ちゃんを引っ掻いたりすると危ないということになり、桃代はイラストレーターの田村セツコさんの家で預かってもらうことになりました。
 1年くらい経ったころ、かみさんと渋谷を歩いていたら、桃代そっくりの猫が遠くに現れた。まさかと思ってついて行くと、田村セツコさんのマンションにたどり着いたんです。すごく不思議な話なんだけどね。
 桃代は長い間、田村セツコさんのお世話になって、あの世にいきました。この絵は、田村セツコさんの家のベランダにいる桃代を描いたものです。

二代目 シジミ

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(左)平成元年3月9日号 (右)平成15年5月29日号

  長男が小学校5年生のとき、公園に捨てられた数匹の子猫を見つけて、友だちと手分けして拾って帰ろうということになった。それで、女の子に「和田君はこの子持って帰りなさい」と一番汚い目ヤニだらけの子猫を渡されて、抱いて戻ってきたんです。まだ生まれたばかりで本当に小さくてね。その子猫が丸くなって寝ている姿を見た、かみさんの料理仲間の女性が「シジミみたい」と言った。それでシジミって名前になっちゃったんです。もしも「アサリみたい」と言っていたらアサリという名前になっていたかもしれませんね(笑)。
 そのうちかみさんは、シジミのことをなぜか「フジミ」と呼び始めて、次に「フジサキさん」になっちゃった(笑)。
 シジミとは16年間一緒に暮らしました。布団に入ってくる猫で、とてもかわいかった。エッチングでシジミを描いて、『ねこのシジミ』(ほるぷ出版)という絵本も作りました。アップのほうの表紙は、死ぬ直前に撮った写真をもとに描いたものです。なんだか立派な顔をしているな、と思ってね。

三代目 チー

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平成20年6月12日号

 今週号(10月29日秋の特大号)の表紙にも描いた、うちの三代目の猫です。最初は「チビ」って呼んでいたんですが、二代目のシジミも「シーちゃん」と呼んでいたから、チビの呼び名も「チーちゃん」になりました。でもかみさんは、「ヤマちゃん」と呼び始めて、今は「ヤマモトさん」とか「ヤマザキさん」って呼んでいます。なぜだか知らないけど(笑)。
 もともとノラだったチーがうちに来たときは、まだ1歳くらいの子猫でした。チーがドアの隙間から覗いている姿を表紙に描いたころは、まだ小さくて痩せていますね。だんだん大きくなって巨大猫に成長していく変遷が、文春の表紙でわかります。我が家の歴代猫の中では、チーを一番多く描いているかな。
 チーはよく庭に出て、鳥やヤモリを獲って持ってきます。もうひとつの特技は、日本語が結構わかること。新聞や雑誌にパンダの赤ちゃんの写真なんかが載っていて、僕とかみさんが「かわいいね」なんて話していると、遠くで遊んでいたチーが自分のことを言われたのかと思って、トットットッと寄ってくる(笑)。あと「牛乳」もわかります。ニャーニャー鳴くので「牛乳?」って訊くと、「そうだ」って感じに「ニャン」と答えるんです。


<続編を描いたシリーズ>

花田さんの猫

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(左)平成2年3月15日号(右)平成2年5月31日号

「週刊文春」の表紙の中で、とくに思い出深いのは、続編を描いたものですね。同じ絵を二回描いているから印象が強くなっている……という可能性もあります(笑)。
 当時「週刊文春」の編集長だった花田紀凱さんのかわいがっていた猫が死んでしまった。花田さんはすごく悲しがって、愛猫の写真にバラを添えた追悼の写真を撮って僕に見せたんです。それで「じゃあ、その写真をそのまま表紙に描きましょう」となりました。
 この表紙の号が出たら、一般の読者から「自分の家の猫が、たまたま表紙と同じポーズで寝ていたから撮影しました」という手紙と写真が編集部に届いたんです。その写真が面白かったので、そのまままた表紙に描いてしまった、というわけです。

NYの壁画猫

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(左)平成14年5月2日・9日GW特大号(右)平成14年10月3日号

  ニューヨークに行ったとき、ビルの壁に大きな猫の絵が描いてあったんです。面白いから写真を撮っていたら、通りがかりの人が「これは日本人が描いたんだよ」って教えてくれました。日本に帰って「週刊文春」の表紙にその猫のビルを描いたんですが、校正刷りが出たときに「勝手に描いちゃったけど、著作権とかで問題になったら困るな」と気がついた。
 それでニューヨーク在住のジャーナリストの人に頼んで、作者を探してもらったんだけれど、どうしてもわからない。諦めていたら、その号の雑誌が出る直前に、銀座の伊東屋のギャラリーから「ニューヨークの猫」という個展のお知らせハガキが届いたんです。
 その案内のハガキの絵と、タッチが似ていると思って調べたら、やっぱり壁画の猫を描いた方と同一人物でした。その画家の久下貴史さんに、「もう表紙に描いちゃったんですけど……」と伝えたところ、「嬉しい」と言ってくれました。
 できた雑誌をニューヨークに送ったら、彼の猫が僕の描いた表紙を眺めている写真を送ってくれたので、それをもう一回描きました。

猫カフェのレオンくん

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(左)平成24年8月30日号(右)平成24年10月4日号

「CREA CAT」という雑誌の企画で、清水ミチコさんと猫について対談したんですが、そのときの取材場所が猫カフェだったんです。
 この猫は、そのときお店にいたマンチカンのレオンくん。短い足で立つ姿がかわいかったから描きました。発売後、お店の人がレオンくんと表紙が並んでいる写真を送ってくれたので、その写真を見てもう一度描きました。


<想像で描いた猫>

黒猫

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昭和53年6月22日号

  この黒猫は、まったくの想像で描いたものです。バックの壁紙も、真っ白だと寂しいので、自分でパターンをデザインして、何も見ないで描きました。
 この号が出たころ、読者から「どうしてうちの猫を知っているんですか?」って電話がかかってきたんです。九州だったか、どこか遠くにお住まいの方でしたが、「絶対にうちの猫だ」って思い込んでいるようでしたね。返事がうまくできなくてちょっと困りましたけど(笑)。

子猫と蝶

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平成27年4月2日春の特大号

  表紙に何を描くかを考えるとき、歳時記を見て、季語をヒントにすることもたまにあります。このときは、春の季語として「子猫」と「蝶」があったので、それを組み合わせて描いてみました。蝶はあまりいいかげんなものは描けないので、昆虫図鑑を見て調べましたが、子猫は資料を見ないで、想像だけで描きました。

interview & text by Yoshiko Usui

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