これは私が看護師として研修を受けていた病院での話です。そこの病院では、夜、基本的には病室の扉を開けていて、見回りが済んだ病室から扉を閉めていくという方法で、見回りが済んだかどうか管理をしていました。

 ある夜、私が見回りの当番になり、病室がある2階の端から病室を確認していったのですが、3階に上がると全ての扉が閉まっていました。私はてっきり、先輩が先に済ませてくれたものだと思い、全ての階の見回りが終わったあと、先輩にお礼を言いました。すると先輩が言うのです。「私じゃないよ。あぁアナタ、気に入られたわね。」私はどういうことかわかりませんでした。

 昔、その病院には一人の痴呆のお婆ちゃんがいて、その人は習慣で毎日病室の扉を閉めて回っていたそうです。ちょっとボケちゃってたんですけど、扉を閉めることだけは日課でやり続けていて、そのお婆ちゃんの病室が3階にあって、亡くなった今でもその習慣を続けているんだそうです。