野田稔・伊藤真の「社会人材学舎」

野田稔と伊藤真の「社会人材学舎」VOL.4 NO.1

2014/05/05 06:00 投稿

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野田稔・伊藤真の「社会人材学舎」VOL.4 NO.1

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コンテンツ

今週のキーワード
「企業変革力」

対談VOL.4
藤沢久美氏 vs. 野田稔

やり続けるから、やるべきことがわかる
自分を導くにも、世界をけん引するにも
これから必要なのはDO型のリーダーシップ

第1回 ダボス会議でわかる、日本が今、置かれている立場

NPOは社会を変えるか?
第13回  仙台の明日を模索するMAKOTOをご存じだろうか?
     一般社団法人MAKOTO

企業探訪:理想のワークプレイスを求めて
第3回 SCSK株式会社
その1: 過去に例を見ない、働きやすさ改革の始まり

粋に生きる
5月の主任:「植田直樹・松尾芳憲」 酒ありき肴 与一
第1回 専門学校の同級生が始めた、こだわりの居酒屋

誌上講座
テーマ3  パワーラーニングメソッド
伊藤 真
第4回: 本質をつかむ思考法を身につける

Change the Life“挑戦の軌跡”
クールジャパンで新たなビジネススキームを!
第1回 「スーラジ ザ・ライジングスター」を生んだビジネスマン
            博報堂・宇都宮毅

連載コラム
より良く生きる術
釈 正輪
第13回 宿命を背負い、使命を抱き、誓願する



今週のキーワード

「企業変革力」

 企業変革の方法論は多々紹介されているが、そのベースになるのは、ハーバード・ビジネススクールのジョン・コッター教授が著した、『企業変革力(Leading Change)』(日経BP社)であろう。

 同署には、変革を推進するための普遍的な8段階プロセスが登場する。それは以下のようなものだ。

第1段階:危機意識を高める
第2段階:変革推進のための連帯チームを作る
第3段階:ビジョンと戦略を生み出す
第4段階:そのビジョンを広く周りに知らし、人を巻き込む
第5段階:広範囲の人にエンパワーメントして、変革を進める
第6段階:短期的成果を実現する(勢いをつける)
第7段階:成果を統合し、さらなる変革を推進する
第8段階:新しい方法を企業文化として定着させる

  ただし、準備段階とでもいえるものが必要だ。それは、そもそも危機感を持った「変革のリーダー」が出現するという段階だ。この人物が登場しないことには話が先に進まない。その人物に、皆さんもなってみてはどうだろうか。




対談VOL.4
藤沢久美氏 vs. 野田稔

やり続けるから、やるべきことがわかる
自分を導くにも、世界をけん引するにも
これから必要なのはDO型のリーダーシップ

本誌の特集は、(社)社会人材学舎の代表理事である野田稔、伊藤真をホストとし、毎回多彩なゲストをお招きしてお送りする対談をベースに展開していきます。ゲストとの対談に加え、その方の生き様や、その方が率いる企業の理念などに関する記事を交え、原則として4回(すなわち一月)に分けてご紹介していきます。

今月のゲストは、シンクタンク・ソフィアバンクの藤沢久美代表です。
藤沢さんは、大学を卒業後、国内外の投資運用会社を経て、1996年、日本初の投資信託評価会社を起業、3年後、その会社をスタンダード&プアーズ社に売却し、2000年にシンクタンク・ソフィアバンクの設立に参画。2013年に代表に就任しました。文部科学省参与、金融庁、経済産業省、総務省、国土交通省、内閣府など各省の審議会や委員など、公職を数多く歴任し、法政大学大学院で客員教授も務めています。
ネットラジオ『藤沢久美の社長Talk』など、長年、日本の中小企業経営者を数多くインタビューしていることも有名です。
この対談では、そんな藤沢久美さんの想い、葛藤、義憤に迫ります。

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第1回 ダボス会議でわかる、日本が今、置かれている立場

ダボス会議で日本が評価されたのは
日本がまだ小僧扱いだったから

野田 今年のダボス会議の話を聞かせてもらえますか。何か特徴がありましたか。

ダボス会議とは、世界経済フォーラムが毎年1月にスイスの保養地、ダボスで開催する年次総会のこと。各国の競争力を指数化して公表している。世界を代表する政治家や実業家が一堂に会する会議のため、毎年注目を集める。藤沢さんは2007年に世界経済フォーラムの「ヤング・グローバル・リーダー」に選出され、以来、同会議に参加している。

藤沢 今年は、大きなテーマはイノベーションだったのですけど、最大のトピックは、日本ですね。安倍総理が、開会式の基調講演をなさったのですが、それだけではなくて、今年は完全に日本イヤーでした。
 安倍総理だけでなく、その他に大臣が5人参加して、しかも日銀総裁が初めて参加された。だから、初日から最終日まで日本からの発信のオンパレードだったのです。ここまで日本がフォーカスされた年は、今まで44年の歴史の中で初めて。実際、世界から注目されていましたし、これは大変なトピックでした。
野田 なぜそこまで注目されていたのですか?
藤沢 その理由は、昨年のダボス会議にあります。アベノミクスです。このワードが初めてダボス会議で世界に向けて発信されて、第一の矢と第二の矢という、世界中が怖くて打てなかった矢を2本、放ったことに注目が集まりました。だから今年は3本目の矢はどうなったのか、あるいはどうなるのかというところに注目が集まっていました。ただ、蓋を開けてみると、もちろんその部分も注目されていたのですが、何よりも日中関係に対する興味が高かったですね。
野田 安倍総理の講演はどんな評価でしたか。
藤沢 非常に評価が高かったです。ただ、高かった理由がユニークなのです。内容はどうかというと、3本目の矢の内容が中心でした。ダボス会議での発信というのは普通、世界にどう貢献するかという点が評価されるのですが、安倍総理は日本国内での政策の話が多かった。しかし、海外からの参加者の評価がとても高く、その理由を聞いてみて、納得しました。
 安倍総理は英語でスピーチをされた。「日本のトップで、英語でスピーチをした人を見たことがない」というわけです。その1点で、グローバルにやっていくという覚悟を感じたというのですね。しかも、安倍総理は非常に自信に満ち溢れていました。その様子を見て、「本当にやるんだな」という評価も得られた。その2点なのですね。
野田 とっても微妙ですね。それまで出来の悪かった子が、テストで50点取ったというので、大人たちに拍手されたという感じがちょっとします。
藤沢 これは私もショックだったのですが、日本にいると日本は先進国の立派な一員と思っていますが、ダボス会議のような先進国のリーダーが集まる場所に身を置くと、日本は必ずしも世界において一流の先進国として見られていないのだということを痛感します。たとえば、今年はイギリスのキャメロン首相が国内の政策を中心に語り、あまり評価されませんでした。数年前、ロシアのメドヴェージェフ首相も国内の政策を列挙したことで、評価されませんでした。ところが日本は評価される。つまり、欧米から日本はまだ世界を率いるリーダーとして認められていないということなのだと実感しました。
野田 なるほど、そういうことなのですね。
藤沢 そこはすごく残念な気がしましたけど、今回の総理のスピーチによって、日本のポジションが1段階上がったと思います。
 そこはすごく実感しましたね。今まで日本の総理が来ても、日本語でしゃべって、紙を見ながら質問に答えていたわけです。今回は違った。自信たっぷりに英語でスピーチをして、質問にも答えて、基調講演以外の場でも、メディアを集めて直接語るなど、積極的に皆さんとコミュニケーションを取られて、どんな質問にも自分で答えていた。日本は変わったというメッセージが伝わったと思います。

皮肉にも坂道を転がり始めた今、
日本は先進国に認められ始めた

野田 不思議なのは、日本が上り調子であった時ではなく、世界から嫌がられ、怖がられていたときの日本ではなく、かなり坂道を転がり落ち始めた今、やっとそんなふうに評価され始めたということですね。
 私は今から5年くらい前から人口問題が最大の問題だと言い続けていたのに、誰も聞いてくれなかった。やっとここにきて、皆が気づき始めた。要するに我々はもうダメなのかもしれないというときに認められたというのはとっても皮肉な気がしますね。逆に言うと、飛ぶ鳥を落とす勢いだったときは、日本はどう思われていたのですかね。
藤沢 その時は多分、今の日本が新興国を見ている目と同じ目で見られていたのだと思いますね。「なんだか若いのが頑張り始めたね」という感じだと思います。だけど、日本も今は成熟国になって、ヨーロッパをはじめとする世界の成熟国が抱えているのと同じ問題を抱える中でチャレンジをしているという意味で、ずいぶん見方が違ってきたのだと思います。
 これが人間だと、自分が年を取っていって、若者が年を取っていっても、常に年齢差は変わらないのですが、国々の場合は年齢差は縮まっていくのだと思います。だから、自分たちに近くなってきた中で頑張っているという感じなのではないでしょうか。
野田 国というのは、長い歴史の中で世界のひのき舞台に立つこともあるけど、それを続けることは非常に困難ですよね。たとえばポルトガルとかスペインは、今は黄昏てしまっているけど、昔は銀貿易で世界の富の3分の1をかき集めていたときもあったわけです。私が特に興味を持っているのはアルゼンチンです。アルゼンチンは第一次世界大戦と第二次世界大戦の間は、世界第5位の経済大国だった。その後、デフォルトをして……。
藤沢 そうですね。二度も三度もデフォルトをしていますね。
野田 ひのき舞台に立ち続けるためには、大きく産業構造を転換しなければいけないのだと思います。しかもそれに合わせて社会構造も転換しなければいけないというダブル構造転換をしないと、多分、いい時期は永続できない。見回してみると結局、それが何らかの形でうまくいっているのはアメリカなのかなと思います。
藤沢 そうですね。加えてよければ、イギリスとかヨーロッパの国々もそうだと思います。
野田 確かに、たとえばオランダは復権しました。その間は長かった。ハンザ同盟から今日に至るまで、300年くらいぼーっとしていたのかなと思いますけどね(笑)。
 そういう大きな視点で日本を考えたときに、おっしゃるようにもしかしたら我々はやっと次のフェーズに移れるように見られているのかもしれないですね。
藤沢 今回のダボス会議で、まさにそれを感じました。1ステージ上がった……というか、違うステージに来たという感じはしましたね。安倍総理だけではなくて、財界の人たちも今年はずいぶん変わりました。日本の財界の人はこれまで登壇しても、英語で流暢に話をされる人はごく一部でしたが、今年は登壇したLIXILの藤森義明CEOや武田薬品工業の長谷川閑史社長が、コロンビア大学のスティングリッツ教授に対して、英語で強く反論する一幕もあって、そんな場面は今まで見たことがなかったので、皆とっても驚いていました。日本は修羅場を経験した。辛いことも含めてずいぶん経験も積んで、いよいよ次のステージで、その経験をベースにチャレンジに入ったという感じがすごくしました。
野田 すごいですね。何だかわくわくします。
藤沢 これまで先進国といわれる国々は、「俺たちはこれまでいろいろな経験を積んできたけど、お前たちはまだまだ子どもでしょう」という目で、日本も見ていたのですけど、今、私がアテレコをするとしたら、「君たちも我々と同じような経験もだいぶ積んできたようだね。まあ、我々が躊躇して実践できなかったことも、勇気を出してやり始めているようだね」という感じでしょうか。こちらの言うことに、少し耳を傾けてくれる感じがしました。と言っても、日本の地位はまだまだそれほど高いものではありません。
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