野田稔・伊藤真の「社会人材学舎」

野田稔と伊藤真の『社会人材学舎』VOL.1 NO.4

2014/02/24 06:00 投稿

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野田稔・伊藤真の『社会人材学舎』VOL.1 NO.4

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コンテンツ



今週のキーワード

「終身雇用」

対談VOL.1 井上高志氏 vs. 野田稔
世の中は不公平! その非対称性に気づき、自分事化したときに
最初の一歩が踏み出せる

第4回   躊躇したらやる! 三日坊主でもいいからやる!

粋に生きる
2月の主任:「立川志の春」
第4回 二つ目、志の春は、多方面に自分らしさ全開!

誌上講座
テーマ1 これからの日本と我々のなすべきこと
第4回 主力事業、茹でガエル、豊かさという3つの病気

連載コラム
より良く生きる術
釈 正輪
第4回 自分のために行う布施こそが、相手のためになる

Change the Life“挑戦の軌跡”
情報管理のエキスパートが取り組む草の根運動
第4回 民主主義を深めるために、果たして自分は何ができるか

NPOは社会を変えるか?
第4回 東京コミュニティー財団の活動実績



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今週のキーワード
「終身雇用」

“フレキシキュリティ”という言葉が流行ったことがある。2004~05年ころに北欧やオランダで流行った言葉だが、フレキシブル=柔軟という言葉とセキュリティ=安全という言葉の造語である。

これは、雇用について語った言葉であるから、柔軟で、かつ安全で安定した雇用を担保するといった意味になる。難しい概念のように思われる。

雇用の安全・保証というと、解雇をしないこと、その会社の中で雇い続けることと解釈されがちだが、これはそういう意味ではない。
むしろ、雇用の保証(セキュリティ)を労働市場の柔軟性(フレキシビリティ)によって達成しようとする考え方だ。

1社による終身雇用から、社会による終身雇用へと考え方を変えようということなのだ。この言葉は誤用されることも少なくないが、私たちの考えるフレキシキュリティとは、自分の意志で、自分を最も生かし切れる場で活躍することが出来る社会を指す。そのためには、そうした個々人の意志を尊重できるようなインフラやツールが社会に必要になる。

勇気を持って飛び出せるだけの道具立てや道しるべ、社会インフラとしてのセーフティネット。そして、飛び出すことを応援する文化、さらに最も重要なのが、次の仕事に就くための再教育の場である。

ある会社で必要なくなった技術やノウハウが、世界中ですでに用済みになっているということはまずあり得ない。ある場所では高い価値を発揮するであろうし、それこそリーダーシップや企画立案力、コミュニケーション能力など、汎用性のあるノウハウも少なくない。再教育で、持てる能力をさらにブラシュアップすることも可能だろう。

会社の中ではなく社会の中の適材適所を実現する。それが、これから私たちが考えるべき、“終身雇用”のあるべき姿ではないだろうか。


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対談VOL.1
井上高志氏 vs. 野田稔

世の中は不公平!
その非対称性に気づき、自分事化したときに
最初の一歩が踏み出せる

本誌の特集は、(社)社会人材学舎の代表理事である野田稔、伊藤真をホストとし、毎回多彩なゲストをお招きしてお送りする対談をベースに展開していきます。ゲストとの対談に加え、その方の生き様や、その方が率いる企業の理念などに関する記事を交え、原則として4回(すなわち一月)に分けてご紹介していきます。
第1回のゲストは、株式会社ネクストの代表取締役社長である井上高志氏です。
「ネクスト?」と思われる人もいるかもしれませんが、不動産・住宅情報サイト「HOME’S」と言えば、多くの人が頷くことでしょう。
今週は第4回です。目的を持って、その目的に向かって一歩踏み出すためのノウハウがテーマです。

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第4回 躊躇したらやる! 三日坊主でもいいからやる!


何をやりたいかはわからなくとも、行動指針を決めることはできる

井上:掘り下げて自己理解をしたうえで、自分がどうありたいのかを深く思索する。それでも、結局、就活で失敗して、恋人に振られたあの時に、私が決められたことは、「5年で独立しよう」とか、「一生かかって一大事業を成し遂げよう」などといった、何となくの期間設定とある程度のベクトル感だけで、中身は何も決まりませんでした。
 だから、若い方々に、「自分のやりたいこと、Willを明確にしろ」と言っても、それは簡単にできることではないと思います。
 ただ、たとえば私は、その時点で二つのことを自分に課すと決めました。一つは、とにかく「アンテナを大きく広げよう」、そして、「躊躇したらやると決めよう」という二つです。
 それまでは険しき道と易き道があれば、迷わず易き道を選んでいました。躊躇したら立ち止まって様子見を決め込んでいました。だから、そうした自分とは決別して、今までとは真逆の動きをしようと決めたのです。
 それまでは一切、転げながら、傷つきながら、泣きながら、汗を流しながら……というのをやってこなかったので、これからはそんな生き方をしようと思ったわけです。その中で出会ったのが例のご夫婦だったのです。アンテナが伸びていたときだったわけですね。
野田:なるほど、あのご夫婦の一件でアンテナを伸ばし始めたのではなく、すでにアンテナは張っていたわけですね。だから、そこで強く引っ掛かった……。
井上:そうです。だからタイミングが違っていれば、その場限りの感傷で終わっていたのかもしれません。
野田:私たちは来年、30代前後のビジネスパーソンの方々を対象にして、而立塾という塾を開講する予定です。而立は、孔子の言葉で「三十にして立つ」です。残念ながら、30歳にして自立している人はそれほど多くはない。そういう人たちに言うべきは、まずは「アンテナを広げよ」「まずはやってみろ」なのですね。その自らに対する戒め、決意の実行は、決してたやすくはなかったのではないですか?
井上:そうですね。簡単ではありませんでした。最初は葛藤の連続です。


有言実行で自分を鼓舞し続けるのがキャプテンシーかもしれない

野田:そんな時に、仲間はいましたか?
井上:仲間……ですか。同期かな。同期が300人採用されたのですが、何と、当時600人の会社が300人を採用したのですよ。その途端にバブルが崩壊して、会社がいきなり潰れそうだから皆出向!となって、時期をずらして250人が転籍させられたのです。だから、同じ境遇の人間、同じく辛い経験をした同期があっちこっちにいたわけです。不平不満を言って辞めようとしているやつもいました。黙々と与えられた仕事をこなしているだけのやつもいました。その時は、私はもうアンテナが開いていて、かつ5年後には独立すると公言していた状態だったので、ちょっと彼らに対して上から目線でした。「なに、会社にぶらさがっているの?」とか、「世の中のせいにしたって、会社のせいにしたって、仕方ないのだから、与えられた環境でせいいっぱいやるしかないじゃない」などと偉そうなことを言っていましたね。
野田:一種のキャプテンシーですね。キャプテンは誰よりも辛い練習をしているのに、それでも一番声を出すわけです。そんなキャプテンからよく励まされたという話を聞きます。なぜキャプテンはそんなことができるのか。多分、有言ですね。井上さんの場合も、井上さんを励ましたのは自分自身かもしれない。キャプテンと同じで、孤独なのだけど、そんな自分を有言実行によって鼓舞し続けたのかもしれないですね。「人のせいにしたってしかたがない。全部自分が悪いんだ」と言ってしまったから仕方がない。有言は大事ですね。しかも青臭くてもいいから、格好いいことを言うに限りますね。
井上:確かにそれは、行動を促しますね。
野田:周りが注視していますからね。


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格好のいいことを熱く語り、三日坊主でもいいから一歩踏み出す

井上:自分を鼓舞するのに加え、もう一つのメリットは、仲間が増えるということです。仲間や支援者です。悶々として、「あいつは何を考えているのかわからない」といわれる存在よりも、「あいつ、出来もしないのに、ずっと言い続けているよな」という人間のほうが、仲間や支援者が現れる確率ははるかに高いと思います。
多かれ少なかれ、「紹介したい人間がいる」「応援したい」といった人たちが現れるものです。それも、自己満足が目的の人間ではなく、義憤や利他など、格好のいいことを言っている人に支援者や応援団は現れるものです。
野田:なるほど、確かに、そういう人にはいわば、私設応援団ができますね。熱いからなのですね。エネルギーを感じるわけです。私が審査員をしていた、リクルートのアントレという雑誌でのニュービジネスコンテスト、「ジャパドリ(ジャパニーズドリームの意)大賞」に井上さんが応募されたときに、ビジネスモデルは完璧だったのだけど、危惧する声はありました。「そんなことをしたら、不動業界がだまっていない」といった意見です。でも、そこで出た反論が、「だからこそ、我々が応援しなければならないんじゃないの?」というものでした。ドンキホーテになるか、革新者になるか、そうした格好良さに、私たちは憧れるわけです。
井上:ありがとうございます。
 それともう一つ、私の母親は、「何事も経験よ」と言った後に、必ず、「三日坊主でもいいから」と付け加えてくれたのです。つまり、とりあえずやってごらん。一歩、踏み出してみなさいということです。それこそ格好よく宣言してやり始めたものの、すぐにダメになってしまっても、「てへへ」と言って撤収できる。そんな最後のエクスキューズが残されているのですね。それでいいから、やってみようと、もしモヤモヤして躊躇している人がいるのであれば、背中を押したいですね。
野田:それは大きな助言ですね。


理解させ、納得させて、共感させる。それが伝えるということ

野田:井上さんは、これまでに、人生目標のどのくらいを達成してきた感じがありますか?
井上:そうですね。今、私は45歳ですが、まだ2~3%ではないでしょうか。
野田:そんなに少ないのですか?
井上:なにせ、「世界を平和にします」とまで言ってしまっていますから。まだまだ何もやっていないに等しいですよね。今後は、特に社会的弱者、就職困難者に手を差し伸べる世の中を作ることに尽力したいと思っています。さらに、高齢化社会に忘れてはいけない介護の問題ですよね。一言で言ってしまえば、しっかりとお互いがお互いを支え合える社会にしていきたいのです。
野田:なるほど、大きな夢ですからね。私の夢は、今まさに立ち上げた「知命塾がなくなる世の中を作ること」なんです。皆がそれこそ自立して、一つの企業、組織ではなく社会全体の中で、自らの適材適所を見つけられる世の中を作ることです。そのためにはまずハローワークを潰す。あんないい加減なものはいらない。さらに、世の中の多くの金儲け主義一辺倒のアウトプレースメント会社を潰します。そして、社会インフラとして最善の職が見つけられて、そのために必要な再教育も受けられる。そして誰もが自分の能力を最大限発揮し続けられる社会にすること。
井上:いいですね。とにかく、言い続けて、やり続けるしかないですね。言わなければ始まらない。やらなければどこにもいけませんから。
野田:そして説き続ける。最近、考え直したことがあるのです。「伝える」という言葉の意味には3段階あるなということなのです。
 最初は理解させる。これはつまり情報を伝えるということですね。いわば、情報を理屈でわからせる。でも多分、理解させても行動にはつながらない。
 次の段階が納得させる。得を納めると書く。つまり、これを行うと何がいいか、どういいかが実感できるということだと思うのです。まずは損得でいい。ただ、これだけだと個人の行動にしかならない。
 だから最後に共感させる。わかりやすく言えば、自分もいいとわかっているから、「お前もやれよ」と人に広めていく段階ですね。ここまで行って、初めて伝わったといえる。そこまで持っていきたい。その前段階として、これを行うとこういいんだというのを、語るだけでなく、見せていきたいと思いますね。

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