石のスープ
定期号[2013年3月11日号/通巻No.110]

今号の執筆担当:渡部真



■『震災以降』巻頭言より 

 震災からちょうど1年になる2012年3月、渋井哲也氏、村上和巳氏、そして私の3人が中心となり、それまで1年間取材した成果を報告をすべく『風化する光と影』(マイウェイ出版)を上梓した。本書は、その続編である。

 2011年3月11日14時46分頃、東北・三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の巨大地震が発生した。宮城県栗原市では震度7を記録し、東北・関東などでは軒並み震度6以上を観測。強震度の余震は数か月も続いた。太平洋沿岸部は地震の影響で、波高十数m、最大遡上高40.1mという大津波が発生。北は北海道から南は千葉県まで沿岸にあった集落を呑み込み、とくに岩手、宮城、福島の3県は甚大な被害となった。翌12日には、すでに津波で浸水し全電源を喪失していた東京電力・福島第一原子力発電所で、1号機の水素爆発が発生。14日までに4つの原子炉が同時に危機的な状況になり、続々とメルトダウンを起こすという世界的にも類を見ない原子力災害を引き起こした。2014年現在、死者1万5884人、行方不明者2633人、建物被害は全半壊家屋40万375軒(焼失含む)。最大40万人と言われる避難者だったが、今なお全国で26万7419人が避難生活を送っている。

 これが東日本大震災を大まかに伝える概要だ。
 本書が伝えるのは、この大災害のごく一部でしかない。3年間、そこで暮らす人々に話を聞き、個々の視点で見続けてきた記者達による“震災以降”の取材報告を、一冊にしたものである。

2014年3月11日  渡部 真

 僕が暮れに入院してしまったため、3月上旬出版予定だった『風化する光と影』の続編本が、4月上旬の発行となりました。そして今朝、上記の巻頭言を書き上げたところです。
 
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 今年は、東北には行かずに東京で仕事をして過ごしています。
 上の写真は、2月23日、宮城県石巻市で取材した際に撮影した写真です。前作『風化する光と影』の裏表紙で瓦礫の中で子ども達が佇んでいた渡波小学校のグラウンドと校舎です。一時期、校舎はマンモス避難所となって1000人以上の避難者を受け入れていたため、子ども達は学校が使えず、別の学校の空き教室を間借りし、その後、内陸に仮設校舎を建てて授業を再開しました。3年が経った今年、ようやく改装工事が終わり、この4月、校舎に再び子ども達が戻ってきます。
 震災のとき、当時小学6年生あるいは中学3年生、高校3年生だった子ども達は卒業を控えていながら、厳しい震災を体験しました。土曜日だったこともあり、卒業式だった学校も少なくありませんでした。
 それから3年、もう間もなく、小学6年生はに高校生に、中学3年生は大学生に、高校3年生は就活に、あるいは中学・高校・短大・専門学校を経て社会人に……3年間とはそういう時間です。