フリーランサーズ・マガジン「石のスープ」

島田健弘【特別寄稿】「情報発信者として『価値判断をしない』ことの是非」

2013/07/14 07:00 投稿

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石のスープ
定期号[2013年7月14日号/通巻No.83]

今号の執筆担当:島田健弘さん 

 自衛隊員が「昨日(13日)からメルトダウンしている」

 2011年3月15日、こんなショッキングな見出しが付けられた記事が、一部のネットメディアで報じられた。

[アワープラネットTV]
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/879

 これは、フリーライターの島田健弘さんが情報提供した内容を、白石草さんなどが報じたものだった。島田さんから受けたメールを、そのまま別のメーリングリストなどに転送した人もいて、そこから拡散していった経緯もあったようだ。
 当時は東京電力・福島第一原発の水素爆発の直後であり、メディアから流れてくる情報は混乱していた。それを発表する政府自体が相当に混乱しており、「原発は安全」と言い続けてきた政府への不信感もあって、爆発事故を危険視する人達の間で拡散していくと同時に、その伝聞情報に対する批判も少なくなかった。
 その島田さんに、当時の情報について振り返って投稿してもらった。以下、島田さんの投稿記事です。




 
■自衛官とのメールの顛末

 2011年3月14日、筆者は知人の自衛官から次のようなメールをもらった。
「逃げろ。出来るなら今すぐに。」
 これは筆者が知人にメールをしたことからはじまった。時系列で整理すると次のようなやり取りだった。

【2011年3月14日 20時10分】

筆者 :救助活動中か。原発はどうなってる?

自衛官:逃げろ。出来るなら今すぐに。
【2011年3月14日 22時28分】

自衛官:嫁さんだけでも西日本に避難させとけ。逃げ遅れた被災者は悲惨だぞ。
【2011年3月15日 01時30分】

筆者 :メルトダウンするってこと? スマン。もう少しくわしくきけるか? いま被災地?

自衛官:メルトダウンは昨日からしてる。化学防護の部隊が踏み留まって頑張ってるが、爆発を遅らせることしかできないらしい。もう現場の一人は死んでるという噂。被災地は酷い。死体だらけで酷い匂いだ。2日寝てないのでもう眠らせてくれ。とっとと避難しとけ

 なぜ、この知人にメールをしたのかというと、14日の昼過ぎにある経済評論家A氏から避難を進める連絡を受けたからだった。

「落ち着いて聞いてください。もうメルトダウンは起きています。私の言うことを信じてくれるなら、すぐに東京を離れたほうがいい。チェルノブイリ事故での被害は半径約550キロに及んだので、最低でも新大阪まで避難してください。私たちはもう九州に避難しています」

 メモもとらず、2年以上前の記憶なので、詳細な表現ではないが、大凡このようなことを言われた。原発が危ないとは思っていても、そこまで深刻だとは思わず、この日も都内を取材して回っていた。電話を受けたのは新宿だった。月曜日だったにも関わらず人通りがまばらで、家電量販店では電池、充電器類が軒並み姿を消していて、震災の影響を実感していたところだった。
 ただ、それでも簡単に信じられるものではなかった。家族とも話す必要があると思い、取材を切り上げて帰宅した。帰宅後、A氏と共通の知り合いである経済評論家B氏に、判断を求めた。

「現場がどうなっているかわからないので、彼の意見だけで判断するのは難しい。でも、まずはヨウ素対策をしたほうがいいのは事実なので、ワカメとかヨウ素成分のあるものを摂取するように心がけたほうがいい」

 現場という言葉を聞いて、自衛官の彼ならもしかしたら災害救助活動で出動しているかも、と思いメールしたというのがこの顛末だ。
 

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