3月29日(金)に日比谷図書文化館で行われた「かんたん日本神話の落語会-ヤマトタケル-」というイベントに行ってきました。知人からチケットを無料で譲ってもらったものの、年度末ということで超多忙。行くのやめようかな~と思っていたのですが、結局行ってみて大正解でした。

https://www.geikyo.com/schedule/rakugo_detail.php?id=27559

■落語と日本神話講座のセット売り!

一応、落語会ということになっていますが、メインのコンテンツは「日本神話」に関する講義です。講師は、二ツ目の桂竹千代さん。二ツ目というのは落語家の階級です。同じく二ツ目の雷門音助さんが生徒役です。まず桂竹千代さん、次に雷門音助さんが落語を1席ずつ行い、その後に講義が行われる。寄席であったり、声優落語天狗連のイベントだったりは行ったことあるのですが、こうした形式は初めてでした。

今回のテーマは「ヤマトタケルの地名伝説」。ヤマトタケルは「日本書紀」だと日本武尊、「古事記」だと倭建命と記されるのですが、なぜ「日本書紀」と「古事記」で表記が違うのかを語ると、それだけで1時間は必要ということで、次回のテーマのようです。

https://twitter.com/katuratakechiyo/status/1112211038403883008

内容は、ヤマトタケルがどのような人物であったか。その前の段階として、そもそも「神」と「人間」の違いは何かという、生徒役の質問から始まります。講師の答えは「神は死なないけど、人は死ぬ」。神話的には、アマテラスの孫、神武天皇の曽祖父・ニニギが、長寿の神・イワナガヒメをブスだから結婚できないと追い返したことで寿命が生まれた、となります。

さてヤマトタケルですが、一言で説明するならば“ヤバイ奴”です。詳細は省きますが、父・景行天皇から「兄の様子を見てこい!」と言われた結果、解釈違い(どんなだ!?)から兄の手足をもいで、薦(こも)に包んで投げ捨てる(要するに殺害)とか、まあサイコパスなわけです。これには景行天皇もドン引き。近くにいてほしくないから征西、次いで東征を命じます。

そして日本には、ヤマトタケルの東征に由来する地名があるという話になります。地名は1000年単位で残るものなので、どういう場所だったかを知る重要なヒントとなるのです。

■ヤマトタケルの地名伝説

矢を作った場所が「矢作川」で、「三河」の語源の「御河」はヤマトタケルへの尊称だったとか、火攻めにあった場所が「焼津」とか、「走水」は浦賀水道を渡海する時にエピソードが由来とか。そういう話が続きます。

浦賀水道を渡海する際には、ヤマトタケルの妻・オトタチバナヒメが身投げし、海の神の怒りを鎮めるのですが、その後に読まれた歌が「君さらず 袖しが浦に 立つ波の その面影を みるぞ悲しき」。君さらずが「木更津」になり、袖しが浦は「袖ヶ浦」の由来だとされています。また、オトタチバナヒメは浜に打ち上げられた後に生き返ったという伝説もあり、その時に言った「我、蘇(よみがえ)り」が「蘇我」の由来になったとも。

基本、オトタチバナヒメは死んだという設定ですので、足柄の坂で白鹿を倒した後、ヤマトタケルは東を向いて「吾妻はや」と三度嘆く。これが東国をアヅマと呼ぶキッカケになったとか。最後、伊吹山で白猪と戦うのですが、疲れのあまり、足が3つ重なりに折れ曲がったことから「三重」という感じです。

ヤマトタケルは人間ですから、最終的に死を迎えます。死んだ後、白鳥になって故郷に帰ろうとした。これが白鳥伝説です。神と人間の違いは死ぬかどうかだと最初に記しました。しかし、もう1つあります。それは、神は失敗をしないけど、人間は失敗をするというものです。ヤマトタケルは海の神を怒らせた結果、妻を亡くしますし、不遜にも素手で伊吹山の神に挑んで敗れてしまいます。いわゆる「人間らしさ」が強調された英雄、その始まりがヤマトタケルであったという話でした。

■芸人のフィジカル

講義の内容は興味深く「次も行きたい」と思いました。言霊というか、ダジャレというか、そういったものをテーマにしたトークショーとしては、ゴルゴ松本さんの「命の授業」が思い出されるのですが、それに比べると非常にアカデミックな内容だったと感じました。私は歴史好きなので、桂竹千代さんによる講義の方が好みなのですが、その一方でゴルゴ松本さんに比べると、芸人としてのフィジカルに差を感じました。

2月に行われた平成30年度東京法人会連合会青年部会全体連絡会議にて、ゴルゴ松本さんの講演「命の授業」を聞く機会があったのですが、予定の講演時間を過ぎても、とにかく元気にしゃべる。90分ぐらい話していたと思うのですが、一向に話の勢いが衰えないんですよね。対して桂竹千代さん。最初に落語をしたとはいえ、講義の時間は同じく90分程度だったのですが、最後の方になると明らかに疲れが見えました。

芸人を評価する上では、面白いか面白くないかが一番重要だと思うのですが、フィジカル的な要素が分かることも、生で見る醍醐味(だいごみ)の1つなんだなと感じました。

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■特筆すべき案内メール

最後に有料メルマガ評論家らしく、メールマガジンについて言及しましょう。落語会ではアンケート用紙が配られるのですが、そこにはメールアドレスを記入する欄があります。ここに記入してアンケート用紙を回収してもらうと、メールマガジンが届きます。

差出人は「桂竹千代」で、主な内容は独演会や寄席などの案内なのですが、プライベートなメール感が満載で、好感を持てます。さらに「只今170席埋まりました!残るお席は14席。もう少しで満員御礼!」といった具合に、残りの席数を書いてあるのが面白い。

メールマガジンと書きましたが、iPhoneの個人アドレスからBCCで登録したメールアドレスにメールを送っているような気がします。これがいい感じです。もしも違うのであれば、優れた演出です。多くのメールマガジンによるスケジュールのお知らせは、ありきたりなテンプレートに沿って予定を並べているだけのものが多いのですが、読み応えのある内容になっていました。

センスのあるメールマガジンを読むと、うれしい気分になります。