口に入れたときのハイな気分、収集欲をかき立てるパッケージ、なんだったらメッセージ性。連載「スナック・タイム」では、文筆家・甲斐みのりさんが、男の空腹を満たすためだけではない「嗜好品」としての食べものを紹介。第6回は、「DOMINIQUE ANSEL BAKERY」のアップルマシュマロ。

4歳になる小さな友だちと遊んでいると、ハッと思い出したように唐突に、プリンセスの絵が描かれたピンク色のバッグから何やら取り出し、小さな手のひらにちょこんとのせて私の目の前に差し出してきた。

「食べる?」

それは一つずつ袋に入ったマシュマロ。目にしただけで口の中が、ふっくらもぎゅもぎゅ、くすぐったい。小さな友だちは、チョコレートやいちごジャムが中央に入ったマショマロが大好物で、大切にとっておいて、ごはんのあとに食べようと思っていたらしい。

「ありがとう。でもね、私はいいから、一人で食べて」。
そう言うとキョトンとした顔で、「どうして? マショマロ嫌い?」と聞き返された。
「マショマロ好きだよ、雲みたいだもんね。でも、今はお腹いっぱいなの。また今度一緒に食べようね」。

すると彼女は、一度で口の中に放り込める繭ほど小さなマシュマロを、いかにも大事そうに指先でつまみ、りすのように小刻みに口を動かして、はむはむと噛み出した。子どもなりに食感を楽しんでいるのだ。あまりに愛らしい姿を目を細めて見つめた。

赤いりんごは、キャラメルソースの「蜜」入り

一見しただけでは置物に見間違える、つやつやの赤いりんご。ホワイトチョコレートの膜の中に、なめらかなキャラメルソース入りマシュマロが閉じ込められていると知って感嘆した。

なんとも手がかかっているこのお菓子が手に入るのは、ニューヨーク発のペイストリーショップ「ドミニクアンセルベーカリー」の銀座店。風船の中にシフォンケーキを閉じ込めた「空飛ぶケーキ」や、メロンパン、クリームパン、あんパンを組み合わせ、表面を歌舞伎の隈取りで飾った「ミスターカブキ」など、チャーミングなお菓子やパンが並んでいる。

わっと歓声が上がるから、人が大勢集まる場所への手土産にいい。マシュマロ好きのあの子にも差し出したい。

[ドミニクアンセルベーカリー]

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