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近代建築の変遷を見るガラスや金具コレクション「建築標本」に萌えにいく

2017/07/04 21:30 投稿

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建築素材って……萌える。

建築好きで、よく建築巡りに行く私だが、特にディテールが気になることが多い。ガラス、取っ手、木の収まりがどうなっているか。建築自体に興味が薄くても、そういう細かな部分についつい惹かれる人は多いのではないだろうか? 特に建築素材は、これは何なのか、どう使うか、どう生まれたか、うんちくが詰まっているのも、いい。

私を含めた、そんなフェチズムのある人が興奮するしかない展覧会が、東京・京橋のLIXILギャラリーで開催されている。


撮影:白石ちえこ

国会議事堂(1936年建設)の設計に携わり、近代建築を牽引した建築家・武田五一氏(1872〜1938年)は、建築にまつわる材料とデザインを“建築標本”として収集していた。それは自身の多彩な建築作品のためであり、教育と後人の育成に尽力したためでもあった。

この展覧会は、大正から昭和初期にかけて収集された建築標本約100点を紹介しながら、武田氏の建築についてや、明治の幕開けとともに近代化が進んだ日本の建築意匠の変遷についてを浮彫りにするもの。

撮影:白石ちえこ

武田氏は、京都大学工学部建築学科や、京都工芸繊維大学の創設に携わった。多くの建築素材はここに残されており、教育資料として使っていたようだ。石膏、瓦、寺社建築の柱頭、建具、カーテンポール、金具、ガラスなどなど……歴史を感じる豊富な建築素材は、見ているだけでおもしろい。

テラコッタ釉薬見本(伊奈製陶製):伊奈製陶は光沢のないマット釉を主軸に、石面のような多色混交仕上げとクラックの出ない施釉技術を追求した(所蔵/京都大学建築学専攻、撮影:佐治康生)

新しい技術に敏感だった武田氏の、建築に対する好奇心旺盛な目線が感じられるのはもちろん、それぞれの建築素材が普及した経緯や時代背景、建築自体の歴史を知ることができるのが、とても楽しい。例えば、コンクリート造が普及したときに開発された仕上げが、どういうものだったか。板ガラスが大量生産されるようになった1901年当時、どんなガラスが生まれ、どういう使い方をされていたか。

また武田氏は「住宅は休息の場」であり、暖房、換気、採光、衛生面での近代化が急務であるとしたり、住宅の保安には施錠を基本として泥棒対策をするように促し、水栓金具や錠前などをいちはやく導入。そういった住宅設備の変遷もかいま見える。

色彩構成の作品。作者不詳(所蔵/京都工芸繊維大学美術工芸資料館、撮影:佐治康生)

第12回西洋美術振興財団賞「文化振興賞」を受賞したLIXILは、そこで認められた活動である「ものづくり」の伝統を継承すること、生活に新たな気づきの場を提供している。そのひとつの活動がLIXILギャラリーであり、無料で見られるのもうれしいところ。

古くは、タイルやテラコッタなど、やきもの製品の製造によって日本の建築や暮らしに新たな風を運んだLIXILだが、武田氏はタイル使用の先駆者・テラコッタ導入の提唱者であり、京都大学で建築の化粧材としてのタイルやテラコッタを豊富に残している。そういった共通点も、今回の展覧会開催のきっかけとなっているのかもしれない。

建築素材を通して見えてくる、いろいろなものの“歴史”。ものとしての魅力はもちろん、小さな展示のなかに「知らなかった」が詰まっている。

武田五一の建築標本 -近代を語る材料とデザイン-
開催期間:2017年6月8日(木)~8月26日(土)10:00〜18:00
休館日:水曜日
開催場所LIXILギャラリー ギャラリー1(東京都中央区京橋 3-6-18 東京建物京橋ビル LIXIL:GINZA 2F)
入場無料

トップ写真:京都高等工芸学校の図案標本。引手金具フックの見本。明治42年(1909)に高田商会大阪支店より購入(所蔵/京都工芸繊維大学美術工芸資料館、撮影:佐治康生)

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