北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
■連載コラム(第5回)
『ラーメンの憂鬱』〜ラーメン屋は料理人なのか?(山路力也)
『教養としてのラーメン』〜札幌ラーメンは何故味噌ラーメンになったのか(山本剛志)
□告知/スケジュール
■編集後記
■巻頭コラム
『「ミシュラン東京2015」にラーメン店22軒が掲載』
12月5日に発売された「ミシュランガイド東京2015」の話題が続いている。何といってもその話題の中心は「ビブグルマン(5000円以下でリーズナブルに楽しめる店)」で和食ジャンルが拡充され、ラーメン店22軒が掲載された事である。ネットには数々の記事が投稿され、山路さんもYahoo!ニュース個人に「なぜミシュランは東京のラーメンを選んだのか?」を掲載し、多くのアクセスを集めている。私も少し違う視点で、今回のミシュランの件について考えてみたい。
2007年に東京版が創刊された「ミシュランガイド」だが、これまで東京版にラーメン専門店が掲載されることはなかった。一方で地域特別版(「福岡・佐賀」「北海道」「広島」)でラーメン店が掲載された他、香港版で「MIST」、ニューヨーク版で「一風堂」が掲載された事は知られている所である。では、今回「ミシュラン東京2015」に掲載された22軒について考えてみたい。
掲載店のラインアップは山路さんも指摘している通り、「清湯醤油」をメインにしたラーメン店が明らかに多い。つけ麺をメインにした「BASSOドリルマン」のネクストブランドである、「しながわ」が掲載された事が特徴的である。ミシュラン審査員が「東京で食べるべきラーメン」として最初に絞り込んだのか、様々なラーメンを食べた結果これに絞り込むようになったのか。私は前者であったのではないかと思える。審査員の人数や他の料理も食べ歩いている事も考えると、東京の様々なラーメンを食べたとは思い難い。
また、歴史ある店をもっと理解してもらいたいとも思う。22軒のうち最も歴史を持つ店は「青葉」「多賀野」の1996年開店、つまり「96年組」である。また、2013年開店の店が8軒、2014年開店の店が3軒で、この2年で開店した店が半分を占めている事は驚きである。新店は新鮮に映るが、一方で経営基盤は盤石ではない。東京の激しいラーメン争いの中、掲載店が閉店してしまう懸念もある。
今回、東京版でラーメン店が掲載されたのは何故だろう。日本にラーメン好きは多く、彼らに対する「ミシュラン本」の売上アップを狙ったものと考える事もできるが、ラーメン本が1,000円未満で購入でき、ネット情報が多く見つかる今、22軒のラーメン情報の為に3,240円の本は高い。フレンチやイタリアンなど、普段からミシュランに掲載されるような店で食べるような人に関心を呼ぶ記事になるとも思いづらい。最大の理由は「ミシュランへの注目を集める」事だったのではないかと思える。実際「ミシュラン東京」がこれだけ話題になったのは創刊以来ではなかろうか。
単品での提供を基本とする東京のラーメン店が「ビブグルマン」を越え、星を獲得する事はミシュランの基準から考えると難しい。「話題づくりの為にラーメンが使われちゃったかな」とも思えるが、話題にされるだけのラーメンのコンテンツ力は誇りに思う。それだけに、「ミシュラン東京2016」では、ミシュラン調査員に「世界一のラーメン都市"東京"」の実像をもう少し深く捉えていただければと願っている。
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は10月10日、牛込柳町にオープンした『中華そば葉山』の「中華そば」を山路と山本が食べて、語ります。
「中華そば」680円