北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
【北島秀一】
ラーメン八卦@札幌「豚スープ」
九十九とんこつラーメン 恵比寿本店@恵比寿「元祖◯究チーズラーメン」
■クロスコラム
■告知/スケジュール
□編集後記
■巻頭コラム
「『青葉』の価値は?」北島秀一
中野の「青葉」。言わずと知れた96年組の一軒であり、このコラムをご覧の皆様で関東在住の方ならほぼ全員が食べているのではとも思える超有名店だ。この「青葉」が何故そこまで有名かと言うと、これまた言わずと知れた「ダブルスープ」の技法による。従来、多くのお店は全てのスープ素材を同じ寸胴で炊いていたが、「青葉」では動物系と魚介系を別寸胴で炊き、それぞれベストの火加減と時間でエキスを抽出。特に最初のウチはそのダブルスープを丼にそれぞれ注いでブレンドし、鮮烈な印象を作り上げていた。
ただ、個人的にはこの「ダブルスープ」に勝るとも劣らない「青葉」の功績がもう一つあると思う。それは「つけ麺の中興の祖」であると言う事だ。「青葉」は開店と同時か、非常に早い時期からつけ麺をラインナップに加えていたが、これは当時としてはかなり珍しかった。つけ麺は東池袋大勝軒及びその出身店である「ごとう」や「サニー」、あるいは丸長系などでは提供されていたが、それ以外ではまだまだマイナーなメニューだったのだ。ちなみに「べんてん」@高田馬場の創業は1995年末である。また、余談ながら2000年頃にTV「どっちの料理ショー」でつけ麺が取り上げられた事があったが、その時のサブタイトルは「鴨せいろvs中華つけ麺」。要するに「青葉」創業から4年経ったこの時期ですら、「中華」をつけて「ラーメンのアレンジなんですよ」と説明をしないと全国的には判って貰えない状況だった訳だ。
が、「青葉」がつけ麺を導入した事で、状況は徐々に変わり始める。ダブルスープと言うより、白濁した濃厚動物系+魚介+醤油と言う黄金の組み合わせは大人気を呼び、いわゆる「青葉インスパイア」と言われる大量のフォロワーを生み出した。そのフォロワーの多くが「青葉」に倣ってつけ麺をラインナップするようになったのだ。そしてその流れの中、「青葉インスパイア」は果てしない濃度競争の末、現在の王道スタイルのつけ麺に至っている。各店共に独自性があり、直接意識はしていないにせよ、「六厘舎」や「つじ田」、「TETSU」なども歴史の中では「青葉」からの流れに端を発していると言ってよい。
今やつけ麺は幅広く広まり、新店で採用しないお店の方がむしろ珍しいくらいになった。「青葉」の芳賀店主がどの程度東池袋大勝軒を意識して「つけ麺」をメニューに加えたかは伺った事はないが、奇しくも「青葉」創業の地である中野は、山岸マスターが始めてつけ麺を考案した中野大勝軒のある場所だ。そう言う意味では「つけ麺は中野に起こり中野で再ブレイクした」とも言える。現在の「青葉」のポジションは当然当時とは全く異なっているが、もし「青葉」のつけ麺を食べる機会があれば「歴史」に少し思いをはせるのも一興かも知れない。
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は今月7日、西葛西にオープンした新店『スパイス・ラー麺 卍力(まんりき)』の「スパイス・ラー麺」を三人が食べて、語ります。
「スパイス・ラー麺」780円