北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
■連載コラム(第37回)
『ラーメンの憂鬱』〜丼の中で存在理由を考える(山路力也)
『教養としてのラーメン』〜戦後ラーメン史(11)~濃厚つけ麺と二郎インスパイア、そして食べログの流行~(山本剛志)
□告知/スケジュール
■編集後記
■巻頭コラム
『ラーメンレビューで心がけていること』北島秀一
もともと自分の「レビュー」は個人ホームページに載せる「日記」から始まっている。日記だから、自分の日常や雑感をつらつら書く合間にラーメンを食べに行き、その感想も書くと言う具合だ。だから例えば「本日は寒さが続く中、ほっとするような暖かい一日で、こんな日はラーメン食べに行かなきゃ嘘でしょう云々かんぬん」みたいな文章がずらずらとまずあって、そこからお店の紹介やらラーメンの味の感想などに入っていた。個人ホームページではこれで全く問題はない。
その意識が大きく変わったのは、やはりらーナビの「速報」を書き始めてからであろう。最初は短い文で単純な感想だけだったのが、もともと書くのが好きなのでだんだん馴染んでいた「日記調」にシフトしてくる。すると、これがまあやたらめったらな長文になってしまった。他のメンツと比べても明らかに長すぎるので自分の「速報」をいろいろ見直した結果「この日記調の日常描写がよくない。そもそも読者はラーメンの感想や情報を見に来るのであって、自分の日記を読みに来る訳じゃないんだ」と言う事に気がついた。
個人サイトとらーナビ速報の違いは、個人サイトはあくまで自分が中心だが、らーナビ速報、あと自分は参加していないが「食べログ」「Retty」などの「みんなで作るグルメサイト」の中心は「情報」であって、書き手個人は二の次であるということ。むろん情報発信を重ねる事で読者から信頼してもらい「あの人の書く情報なら間違いない」と追いかけて貰えるようになれば願ったりだが、そうなれたにせよやはり読者の興味は書き手の日常ではなく情報そのものにある。これは、その後様々な情報発信をする上で、自分の一番根幹の意識となった。
レビューそのものの書き方で言うと、最初にそのお店の出自や噂、何故自分がそこのその品を選ぶのかを書き、次に出て来たラーメン自体の情報、感想、造りなどを描写。最後に食後感とか次回はこれを食べてみたいな等の感想で〆る格好だ。このスタイルが自分には合っているし、言いたい事も存分に書ける(あるいは描ける)からだが、反面この方法だとまた文章が長めになる。
あまり細かい具体論は書かず、どちらかと言えば主観を中心にざくっと、でも鋭く表現するブロガさんの文章などは自分には一種憧れでもあり、そのスタイルにシフトしようとした事もあったが、これがまあ我ながら本当にへたくそだった【笑】。
メディアの性格や読者層を想定し、「読者が読みたい情報は何か」を考えない文章はラーメンレビューに限らずつまらない物だし、仮にもプロの書き手としてそこに合わせた内容や表現を考えるのは当たり前の事だが、それ以前の「自分の根本のスタイル」をいじる器用さは自分には無かったと言うこと。「自然体」と「想定読者に合わせる」バランス感覚を養うのが自分の場合はまず第一だったと言えるだろう。(ラーマガ022号より転載)
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は池袋の「石神秀幸厳選極み麺selection」に3月より出店している『新潟ラーメン』で、山路が「濃厚背脂煮干」を、山本が「背脂煮干」を食べて、語ります。