北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
□告知/スケジュール
■編集後記
■巻頭コラム
「煮干し全盛に物申す」北島秀一
ここ数年で、ラーメン界でもっとも注目を浴びている素材と言えばやはり煮干だろう。ラーメンのトレンドで言うなら鶏ガラへの注目度も増してはいるが、これはもともとラーメンでは主軸の位置にあった素材が再評価された印象が強い。が、煮干は「春木屋」「共楽」などの老舗や「勝丸」「たけにぼ」「まんぼう亭」など幾つかの古豪は別にして、広く注目され、それをメインにしたラーメンが登場し始めたのは「伊藤」@王子以降だと認識している。苦みやエグ味をも旨味としてぶつけてくる「伊藤」の衝撃は「ニボニボ」と言う言葉を生み出し、その後様々な表現の煮干ラーメンが誕生する素地となった。
が、ここに来て、個人的には煮干ラーメンにはやや食傷気味だ。今でも、新たに出てくる煮干を軸としたラーメンは多いし、そのほとんどが間違い無く美味い。タレの種類、合わせるダシ素材、濃度、脂の組み合わせなど、非常に幅広い表現がなされていると思う。
にも関わらず、どうも最近「煮干味」に対する自分の興味が薄れて来ている。自分なりに分析すると、「煮干ラーメンは、味の入り口は様々でも、出口部分で全て煮干味になってしまう」からではないかと思う。濃厚であろうが、調味料が異なろうが、油で風味が変わっていようが、最終的な味の印象は結局「煮干」一辺倒だ。個人的には、これは煮干だけではなく鰹節でも同じに感じる。魚ダシの特徴なのだろうか。
これが動物系素材、例えば豚骨だと、逆に味の入り口はほぼ全てあの「豚骨風味」なのに、味の出口、最終的な印象は実にバラバラな事に気づく。いわゆる九州風のピュアな豚骨スープだけでも店によって濃度や脂、骨髄などの風味の印象は千差万別だし、それこそ魚介豚骨なども後味の印象は異なってくる。同じように鶏ガラスープもやはり「味の出口」は様々。醤油の種類や風味の違いがより分かりやすいのは、やはり魚清湯より動物清湯のように思う。
最終的な印象が画一的になるので、どうも煮干ラーメンの食後感にはサプライズが少ない。間違い無く美味しいんだが、個人的に煮干メインのラーメンで心底驚いたのは「伊藤」「圓」「凪 煮干王」くらいか。
あと、「一つの味がウケると同じコンセプトの商品があふれかえる」問題もあると思うが、ここでは敢えて触れない。あくまで味として、どうも煮干(魚)には最終的なサプライズが少ないのではないか、と締めくくっておく。【ラーマガ003号より転載】
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は水道橋に開店した「満州ニラら~めんの店 さかえや」の 「満州ニラらーめん」を、山路と山本が食べて、語ります。
満州ニラら〜めんの店 さかえや@水道橋