北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
■連載コラム(第25回)
『ラーメンの憂鬱』〜ラーメンに必要な美意識(山路力也)
『教養としてのラーメン』〜「全国ラーメン党」とその時代(山本剛志)
□告知スケジュール
■編集後記
■巻頭コラム
「そもそも中華麺って美味いの?」北島秀一
「稲庭麺」が首都圏のラーメン店で積極的に取り入れられるようになったのは二年ほど前からだろうか。私の記憶の範囲では、一番最初にこれを取り入れたのは「七彩」ではないかと思うが、その後麺に敏感なお店がこぞって限定などに採用している。
この稲庭中華そば、ご存じの通り、秋田県の稲庭うどんの名店「佐藤養悦本舗」が製造している物で、技術的な事は判らないが随所に稲庭うどんの技法が取り入れられていると言う。実際に食べてみても、非常に滑りが良いが単なる「つるつる」ではなく、滑らかさも兼ね備え、小麦の風味や甘味も充分感じられる。特に清湯系との相性は抜群の非常にすぐれた麺だと思う。
個人的には、「うどんや蕎麦に比べ、かん水を使った中華麺の味は、実は日本人の好みから外れるんじゃないだろうか」との思いがずっとある。だからこそ動物系や油脂を強めたパンチのあるスープで麺の味を強引に包み込んで喰わせるんじゃなだろうか。うどんならダシ醤油だけとか、蕎麦なら水蕎麦のような食べ方もあるのに、ラーメンでそれが出来る麺はほとんど無いじゃないか。長い事そう考えている。
ただ、その状況は大きく変わっているとの認識ももちろんある。大きな転機は言うまでもなく「支那そばや」の登場で、それによって「小麦粉も含めて麺にこだわる」と言うスタンスが一部の作り手に叩き込まれた事だ。また、それとは別方向のアプローチとして、つけ麺の人気によって麺自体に注目が集まったのも見逃せない。「支那そばや」の佐野店主、「東池袋大勝軒」の山岸店主がどちらも自家製麺を行っていたのも見逃せないポイントだろう。
その「シンプルな食べ方に耐える美味い麺」の、現在における一つの到達点が、この稲庭麺なのかなと思ったりもする。まだやった事はないが、おそらくは「かまたま」や「醤油と大根おろしだけ」のような食べ方でも存分に楽しめそうな麺。このような麺が、更にいろいろ登場してくれないかなと非常に期待している。【ラーマガ019号より転載】
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は今年2月、阪東橋にオープンした「寿々㐂家 曙町店」の「ラーメン」を、山路と山本が食べて、語ります。
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