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為替市場動向~人民元ショック、余波続く?~

2015/08/21 12:01 投稿

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日本のお盆ウィークに、中国人民銀行が3日連日行った人民元切り下げは、真夏の市場を人民元ショックで震わせました。
 当面の通貨切り下げは完了したと見られていますが、原油を代表する資源価格の下落、新興国通貨、特に資源国通貨の下げ止まりません。今日は、ベトナムが自国通貨であるドーンを切り下げました。


 中国人民銀行は、11日朝に人民元基準値を約1.9%切り下げ調整を発表。当日午後には、「必要な調整はした」、との当局発言も伝わったものの、翌日12日にも1.6%の基準値切り下げを行ったため、市場では中国政府の政策について様々が思惑が交錯しました。
 通貨安戦争へ参戦か? かなり悪化した経済状況改善のための輸出振興目的か?等々の憶測が入り乱れ、不安感から世界的なリスクオフ心理が働いたのはご存知の通りです。人民元は、一時上海市場で5%以上下落する場面がありました。


 市場が混乱したのは、通貨切り下げだけではありませんでした。
 2日目に基準値を下げた後に、市場で人民銀行が人民元買い介入を実施したと思ったら、その翌日13日には基準値を1%強切り下げる等、いつもながら、中国当局の動きが読みづらいことでした。


 14日になって、基準値は小幅に元高に修正されたことで、一通りの修正は完了したとの見方が広がってはいます。
 今回の措置は基準値の算定方式を市場実勢レートに合わせるための一回限りの措置であると中国当局は見解を示しています。経済下支えのために金融緩和を実 施している中国ですので、為替レートを市場実勢に合わせていくのであれば、単純に考えれば、元安方向に動くことになります。

 株式市場などの金融市場だけでなく、実体経済が国の経済成長目標である7%達成が無理ということであれば、金融緩和、財政政策に加えて、通貨安も政策ツールに加えてくる可能性もあるかもしれません。


 一方で、今回の為替政策変更を管理フロート制から自由化への一歩と見る向きもあります。
 国の威信をかけて、人民元の国際化を目指してきた中国でしたが、8月初旬にIMFの特別引き出し権SDRの通貨バスケットへの採用決定が来年以降に延長された経緯があります。
 国際通貨として評価されるために、市場実勢レートに近づける自由化を急いだのだとすれば、単なる輸出振興のためだけの通貨安政策ではないとも解釈できます。


 また、通貨安政策は、諸刃の剣ですので、資本流出、中国企業のドル債務の返済負担増加などのデメリットも懸念されます。

 中国については情報不足もあり、今後どのように政策運営していくのか注意していかなくてはならないと思います。


 8月月初からの対ドルでの通貨パフォーマンスをチェックすると、殆どの新興国通貨が売られています。
 ロシア・ルーブルやマレーシア・リンギットは6%以上下落、トルコ・リラは4%以上下落しています。

 一方、人民元ショックでドイツ株式市場は大きく下げましたが、ユーロはリスクオフ対象通貨として若干上昇しました。
 中国は、ドイツの輸出にとっては大得意ですので、影響は大きいものと推察します。

 ただ、通貨ユーロは、量的緩和で超低金利状態ですので、リスク許容度が高い状態ではキャリー取引として、ユーロ売り、より金利の高い通貨買いが行われま すが、リスク許容度が低下するとキャリートレードの手仕舞いが行われます。かつては、円がその役目を担っていましたが、最近はユーロで見られるようになり ました。


 さて、9月の声が聞こえてくると、米国が利上げを実施するかに注目が集まります。

 まずまず合格圏の雇用状況、好調な住宅市場の一方で、インフレ指標など他の指標は良かったりイマイチだったりです。

 本日19日に、前回の政策決定会合FOMCの議事録が公表されます。市場の注目ではありますが、3週間後に公開される資料では全容は分からないという情報もありますので、これで判断するのは難しいかもしれません。

 今後の金融政策の選択肢を広げるために金利を正常化するという意味での、調整的な利上げはあっても不思議ではないと思いますが、利上げがその後継続するのかについては、現時点で疑問を持っている向きが市場には多いように思います。


 今年の夏の好まざる重大イベントは、人民元切り下げでした。
 余波は未だ続きそうです。


 残暑の中ではありますが、トラブルの中のチャンス探しも含めて、冷静に対応していきたいところです。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。


*8月19日14時執筆
 本号の情報8月18日の米国市場始値水準を主に引用しています。
 なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。


式町 みどり拝


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)

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