欧州中銀による量的緩和が3月に実施されて以来、ドイツ国債10年物利回りは一本調子で低下。4月20日には史上最低水準の0.073%をつけ、マイナ ス金利までつけるか?と思わせました。その後、底ばいが続いてから、利回り急反発。日本がGW連休に入った28日から始まり、5月に入ると更に利回りは上 げ足を速め、12日には一時0.7%台をつけました。
ドイツ債券市場の急落(利回り上昇)は、米国債市場にも及び、米国債10年物も1.9%台から12日には2.3%台まで上昇。その猛スピードぶりに、量的緩和によって生じた債券バブルの破裂の序章か?と懸念しました。
ドイツ金利急騰(国債売り)、ユーロ買い戻し、と相関して原油価格も反発は、ファンド筋の一連のポジションの巻き戻しとも言われています。また、5月7日の英国総選挙を前にして採られたポンド売りユーロ買いも多少影響したかもしれません。
欧州中銀が、デフレからの回復を目指して量的緩和を発表したのが今年1月。発表直前ユーロは1.16米ドルでしたが、下落を続け、3月に政策が実施され た直後に1.04台をつけ、その後1.04から1.08の範囲で動いていました。記録的な売りポジションの累積、ユーロ圏の経済指標が好転してきたことも ユーロ反転に繋がったとされます。
デフレ長期化を予想して、対ドルでの等価1.00割れを目論んでいたポジションが、スクイーズを余儀なくされて万歳した格好です。一方通行相場の変調 は、じわじわ来た後、音を立てて爆発、となりました。相場では、「いつ止めるのか?」が難しく悩ましく重要なポイントです。
ただ、これが本格的にユーロ回復相場の始まりなのか? 未だ判断がつき難いところです。当面は、乱高下を繰り返して、次のトレンドに入るのではないかと考えています。
ユーロ圏経済指標が好転してきた背景には、年初からのユーロ安の恩恵もあったはずで、数か月のみの経済指標により中央銀行が量的緩和政策を早期終了させる可能性は低いと思います。また、不透明なギリシャ情勢も安心できません。
(ちなみに、13日午後、情報ベンダーであるブルームバーグ報道では、ユーロ諸国がギリシャ離脱に備えたユーロ圏防衛策のプラン策定に入ったとも伝えられています。)
一方、年初からの多くの主要経済指標が予想を下回った米国ですが、注目された4月の雇用統計は予想近くで通過し、市場への影響はほぼありませんでした。
FRBの利上げ6月説は少数派ですが、金融政策を一度正常化に戻したいという意思には変わりないと思います。将来、対応を必要とする事象が起こった場合に、緩和カードを出すためには、戻しておく必要があるでしょう。
1~3月期は、悪天候の要因が冴えない経済指標の背景と言われてきました。今後発表になる春以降の米国の経済指標を見る必要があります。春以降も芳しくないとなると、考え方を修正しなくてはなりません。
ユーロの反発、債券市場の下落で、年初から続いたドル独歩高が一旦ピークアウトしている中、レンジ内での動きに終始しているのが日本円です。
連休前に、株下落でドル円が一時118円台に下落した場面がありました。118円前半を切ると下落トレンドになる可能性がありましたが、118円台半ば には大きな買い注文が並び、その後119円台から120円へと反発。上値も限定されてる一方、下値も底堅い、こう着状態が続きます。
このところの貿易収支の黒字への転換、連休前に市場が(勝手に)期待した日銀による金融緩和第三弾も実施なかったこともあり、円安要因は減りつつありま すが、ドル円相場が意外と底堅いのは、未だ消せない米国の利上げ期待に加えて、日本からの対外投資という需給要因が大きいように思います。
昨年のように、停滞相場の後は、エネルギーがたまって大きく動くのか?
強い方向性が出ていない現状ではありますが、変化はじわじわ静かにやってくるので、どちらに動いてもチャンスを生かせるように、気を抜かず見ていく必要がありそうです。
来月6月半期決算を控え、ファンドのポジション清算や、欧米金融機関の決算対策による動きも出てきます。ギリシャの問題も6月末までに重要な場面を迎えます。
今年7月21日はファンド投資規制であるボルカールールの遵守期限とされ、リスクポジションの調整も想定されます。複合的な要因が重なって、直接関係ない市場まで影響される可能性もあります。注意も必要です。が、チャンスを拾えるチャンスかもしれません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
*5月13日午後2時執筆
本号の情報5月12日の米国市場終値水準を主に引用しています。
なお、記載内容および筆者見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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