ユーロ安が進んでいます。周知のように、欧州中銀による国債大量購入が発表されました。ドイツの反対や法的な基準もクリアして、本年3月から開始される ことになった量的緩和政策の内容は予想を上回る額に加えて、期限をオープンにしてインフレ目標(2%)を達成するまで続けるとされ、この決定は株式市場で も好感されました。
通貨ユーロは、決定直前の1.16米ドル台前半から下落、今週初26日には1.11割れまでありましたが、このレベルでは下落スピードの調整が入り、直 近では1ユーロ=1.13米ドル台後半まで買い戻されています。ただ、量的緩和という材料のみならず、ユーロを対米ドルでパリティ、1ユーロ=1米ドルま で下落させそうな材料も目立ちます。
ユーロ売りは、欧州中銀政策決定会合が予定されていた22日の前週から拍車がかかっていました。1月15日、日本時間18時半に突然飛び出したスイス中 銀の発表は、市場を一時パニックにさせました。急激なスイスフラン買い、ユーロ売りの突風に見舞われました。一瞬、目を疑うような急激な動きでした。1 ユーロ、1.20スイスフランから一瞬0.85台までの下落が瞬時に起こったのですから、最近にない恐ろしい動きでした。発表直後の動きには、ほぼ取引不 可能な状態でした。
ご存じのように、スイス中央銀行は、2011年にスイスフラン高防衛のために、対ユーロ1.20下限を死守するための無制限の外貨買い政策導入を発表しました。以来、ユーロ買い役を保ってきました。それを、まさか、突然、ギブアップ宣言をするとは!
市場では、ほぼノーマークだったため、そのショックは大きいものがありました。影響は、市場でのユーロ売りスイスフラン買いの他、円買いにも及びまし た。また、証拠金取引会社の経営悪化や投資家の損失も報じられていますが、影響の全容については未だ不透明な部分が多くあり、新年早々のスイスショックは 今後のユーロ相場に影響大と思われますし、ドル円相場の上値を抑える方向で影響を及ぼす可能性もあります。
欧州では、もともと低金利を保持するスイスフラン建て債券発行や借入も多いため、このところの急激なスイスフラン高によって債務が膨らむ可能性もあると思われ、ユーロ安の要因の一つとなり得ます。
スイス中央銀行は、その後スイス・フラン売り介入は行っているようで相場は1ユーロ=1スイス・フランを挟んだレンジで落ち着きつつありますが、ユーロ相場を見る上でも円相場を見る上でも、今後もスイス・フラン相場動向に注意しておく必要があります。
年初来の対ドルの主要通貨相場の上昇トップは、なんといってもスイス・フランの10.1%です。一方、下落トップはロシア・ルーブルの-10.05%。 対ドル下落通貨は、欧州通貨とオセアニア通貨、突然の利下げをしたカナダ・ドルが占め、上昇したのは、ブラジル・レアル(+3.2%)インド・ルピー (2.6%)、日本円(1.6%)がありましたが、基本的にはドル高が進みました。
1月は、追加金融緩和を決定した国が多くありました。
カナダ、インド、デンマーク、スイス、ユーロ圏、シンガポール、、、世界各国がじゃんじゃんお札をすろうとしている中、緩和から中立へと動くタイミング が注目されている米国では、金融政策決定会合FOMCが行わています。結果発表は日本時間29日未明が予定されています。前回の声明文の中で、利上げ時期 を「忍耐強く」探るとありました。その文言に変化があるかどうかが今回の見どころでしょう。今回の会合では大きな変化を示すような表明はないというのが大 方のコンセンサスです。
また、最近の市場予想では、利上げ決定時期は今年6月頃が中心ですが、後半にずれ込むという見方も多くあります。2年物国債金利は、利上げ機運が盛り上 がったときの、0.7%台から直近は0.5%台まで低下しています。世界的な金利低下、米国内の低インフレ状態も背景に、米国債10年物の利回りは、 1.7~1.8%台で動いていて、債券市場を見る限り利上げという言葉とは縁遠いようにも見えます。
狭いレンジでの動きになっているドル・円相場。日米の金融政策の方向性の違いは、ドル円相場の下値を支えている要因の一つではありますが、一方で原油安 による輸入決済額の減少で貿易収支の累積赤字は縮小傾向にあり、昨年秋のドル・円相場暴騰を支えた要因は緩和されてきています。また、ドル高が米国企業の 決算に影を落とし始めていることも、今後ドルの上値を抑える要因の一つになりそうです。世界の多くの国が追加の金融緩和に動いてきたことも、一時的に円相 場の全面安に歯止めをかけるでしょう。
上記したスイス中銀ショックの余波、ユーロや他通貨の絡みのクロスカレンシー取引による波乱の可能性もあります。しばらく115円から120円、あるい は、もう少し狭い116円~119円レンジ内での上下に終始し、パワー蓄積を経ながら、今後の方向性を探っていくように思います。
中期的には、円安が進む可能性はまだあるでしょう。しばらくは、外貨投資の機会を探る時期になるかもしれません。じっくり構えていきたいものです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
*1月28日15時執筆
本号の情報は1月27日のニューヨーク市場終値レベルを基本的に引用、記載内容および拙見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
通貨ユーロは、決定直前の1.16米ドル台前半から下落、今週初26日には1.11割れまでありましたが、このレベルでは下落スピードの調整が入り、直 近では1ユーロ=1.13米ドル台後半まで買い戻されています。ただ、量的緩和という材料のみならず、ユーロを対米ドルでパリティ、1ユーロ=1米ドルま で下落させそうな材料も目立ちます。
ユーロ売りは、欧州中銀政策決定会合が予定されていた22日の前週から拍車がかかっていました。1月15日、日本時間18時半に突然飛び出したスイス中 銀の発表は、市場を一時パニックにさせました。急激なスイスフラン買い、ユーロ売りの突風に見舞われました。一瞬、目を疑うような急激な動きでした。1 ユーロ、1.20スイスフランから一瞬0.85台までの下落が瞬時に起こったのですから、最近にない恐ろしい動きでした。発表直後の動きには、ほぼ取引不 可能な状態でした。
ご存じのように、スイス中央銀行は、2011年にスイスフラン高防衛のために、対ユーロ1.20下限を死守するための無制限の外貨買い政策導入を発表しました。以来、ユーロ買い役を保ってきました。それを、まさか、突然、ギブアップ宣言をするとは!
市場では、ほぼノーマークだったため、そのショックは大きいものがありました。影響は、市場でのユーロ売りスイスフラン買いの他、円買いにも及びまし た。また、証拠金取引会社の経営悪化や投資家の損失も報じられていますが、影響の全容については未だ不透明な部分が多くあり、新年早々のスイスショックは 今後のユーロ相場に影響大と思われますし、ドル円相場の上値を抑える方向で影響を及ぼす可能性もあります。
欧州では、もともと低金利を保持するスイスフラン建て債券発行や借入も多いため、このところの急激なスイスフラン高によって債務が膨らむ可能性もあると思われ、ユーロ安の要因の一つとなり得ます。
スイス中央銀行は、その後スイス・フラン売り介入は行っているようで相場は1ユーロ=1スイス・フランを挟んだレンジで落ち着きつつありますが、ユーロ相場を見る上でも円相場を見る上でも、今後もスイス・フラン相場動向に注意しておく必要があります。
年初来の対ドルの主要通貨相場の上昇トップは、なんといってもスイス・フランの10.1%です。一方、下落トップはロシア・ルーブルの-10.05%。 対ドル下落通貨は、欧州通貨とオセアニア通貨、突然の利下げをしたカナダ・ドルが占め、上昇したのは、ブラジル・レアル(+3.2%)インド・ルピー (2.6%)、日本円(1.6%)がありましたが、基本的にはドル高が進みました。
1月は、追加金融緩和を決定した国が多くありました。
カナダ、インド、デンマーク、スイス、ユーロ圏、シンガポール、、、世界各国がじゃんじゃんお札をすろうとしている中、緩和から中立へと動くタイミング が注目されている米国では、金融政策決定会合FOMCが行わています。結果発表は日本時間29日未明が予定されています。前回の声明文の中で、利上げ時期 を「忍耐強く」探るとありました。その文言に変化があるかどうかが今回の見どころでしょう。今回の会合では大きな変化を示すような表明はないというのが大 方のコンセンサスです。
また、最近の市場予想では、利上げ決定時期は今年6月頃が中心ですが、後半にずれ込むという見方も多くあります。2年物国債金利は、利上げ機運が盛り上 がったときの、0.7%台から直近は0.5%台まで低下しています。世界的な金利低下、米国内の低インフレ状態も背景に、米国債10年物の利回りは、 1.7~1.8%台で動いていて、債券市場を見る限り利上げという言葉とは縁遠いようにも見えます。
狭いレンジでの動きになっているドル・円相場。日米の金融政策の方向性の違いは、ドル円相場の下値を支えている要因の一つではありますが、一方で原油安 による輸入決済額の減少で貿易収支の累積赤字は縮小傾向にあり、昨年秋のドル・円相場暴騰を支えた要因は緩和されてきています。また、ドル高が米国企業の 決算に影を落とし始めていることも、今後ドルの上値を抑える要因の一つになりそうです。世界の多くの国が追加の金融緩和に動いてきたことも、一時的に円相 場の全面安に歯止めをかけるでしょう。
上記したスイス中銀ショックの余波、ユーロや他通貨の絡みのクロスカレンシー取引による波乱の可能性もあります。しばらく115円から120円、あるい は、もう少し狭い116円~119円レンジ内での上下に終始し、パワー蓄積を経ながら、今後の方向性を探っていくように思います。
中期的には、円安が進む可能性はまだあるでしょう。しばらくは、外貨投資の機会を探る時期になるかもしれません。じっくり構えていきたいものです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
*1月28日15時執筆
本号の情報は1月27日のニューヨーク市場終値レベルを基本的に引用、記載内容および拙見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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