今月、ドル円相場を大きく動かした材料の大半は日本発でしたが、先週末には海外の注目材料として、欧州中銀ドラギ総裁による量的緩和についての積極的な発言、また、中国の突然の利下げもありました。どちら様も緩和、緩和で、お金じゃぶじゃぶ作戦を繰り広げています。
一方、量的緩和第三弾を停止した米国は、来年の利上げ期待はあるものの、米国債市場を見ると10年物利回りは金利が継続的に上昇していく要素を織り込んでいないように見えます。利回り2.4%(10年物)の壁は厚いようで、2.2%~2.4%のレンジが中心です。
2年物金利は0.5%台と、2年以内の利上げを織り込んではいますが、そのペースはスローであり、継続的ではないだろうという見方を背景としているのでしょう。
前代未聞の超量的緩和からの出口への道は、相当の慎重さを持って行われる難しい判断になるだろうと推察します。
25日に発表された米国の第3四半期GDPの改定値は+3.9%成長と速報値が上方修正されました。しかし、債券市場はむしろ予想外に悪かった個人消費 や景況感の数字の方に反応して利回りは低下しました。米国経済の好調な数字は想定内というコンセンサスもあるかもしれませんが、なにより米債市場の関心事 はインフレ指標にあるように思います。
とりわけ原油価格下落が続けば、FRBが目指しているインフレ目標2%は達成できないと言われています。
原油相場を左右するOPEC総会が27日開催されますが、減産合意には達しないだろうという見方が多いと伝わっています。資源国通貨にも影響を与える原油相場。直近では75ドルを割り込み、73ドル台をつけています。相場推移に注目しておく必要があります。
ユーロ圏の国債市場も利回り低下も目立ちます。0.8%台で推移していたドイツ10年物国債は直近0.74%まで低下。さらに、利回り低下は、ドイツ以 外の周辺国で目立ちます。スペイン国債は2%割れ、イタリア国債も2.1%台と、ユーロ債務危機の際には大きく売り込まれて利回りが急騰した問題国の国債 も軒並み利回り低下です。
このところ、ユーロ安効果によると言われるドイツの経済指標の好転も見られていますが、金利急低下を見る限り、ユーロ相場の頭の重さは続くだろうという見方は変えていません。
11月に入ってからの主要通貨の対米ドル相場で、最も下落したのは日本円の-4.8%、次いで韓国ウオン-3.6%、そして豪ドルの3%です。逆に上昇した通貨は南・アランド、ニュージーランド・ドル、加ドルでしたが、いずれも1%にも満たない上昇率でした。
豪ドルの対米ドル相場は、2010年以来の安値0.83台。中央銀行総裁による豪ドル高を抑制する意図の発言に反応しています。中国の利下げによる景気刺激にも反応薄といったところです。しばらく下値模索が続くと思っています。
最後に、120円に迫ったドル円相場です。日本の12月の総選挙という材料は、自公が過半数を割り込まない限り大きな影響にはならないように思います。 このところ、ドル円は猛スピードが動きましたので、しばらく調整する可能性が高いと思いますが、今後も円安は進むだろうと考えています。
増税延期による財政基盤を懸念する日本国債売りは、多く見られていません。日銀の保有額が多いことも影響しているでしょう。とは言え、財政健全化への道が遠くなっていく事実は、長いスパンで通貨安の底流になります。いわゆる「悪い円安」要因です。
異次元緩和は当初2年で2%達成でしたが、今回の増税延期でさらに長期化が予想されます。もう止められないところに来た、ということでしょうか。
このように日本サイドの材料を見ると、円安要因が事欠かないのですが、為替相場は他国通貨との相対的な関係です。海外要因の中で、最も見ておくべきなの は、やはり米国経済と言えるでしょう。「米国経済は好調」の盲信で、しっぺ返しを受けるリスクも考えておく必要があります。
年末も近づき、日本の師走選挙、米国の感謝祭の後クリスマス商戦の行方など注目材料はありますが、例年、この季節にはマーケットは徐々に薄くなっていきます。
今年をハッピーに締めくくるためにも、慎重に資金管理していきたいところです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
*11月26日13時執筆
本号の情報は11月25日のニューヨーク市場終値レベルを基本的に引用、記載内容および拙見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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