10月に入り、日本列島は二週連続で週初の猛烈な台風に襲われました。
読者のみなさまにはご無事ででいらっしゃいましたでしょうか?被害にあわれた方々には心よりお見舞い申し上げます。
自然災害には比べようもありませんが、世界の金融市場も10月に入り連日の嵐に見舞われた感があります。
例年10月は欧米のミュチュアルファンドの決算期でポジション調整で荒れる月とも言われてきましたが、今年も例外ではなかったようです。
月初に発表された米国9月の雇用統計の予想以上に良い数字に反応して、為替市場、株式市場は好感して始まりましたが、ドル相場、株式市場はそれを頂点にして反転。冷静に反応した債券市場の利回りは下げ始めました。
さらに、開示された9月の米国金融政策決定会合(FOMC)の議事録でドル高のリスクが、またIMFによる世界経済成長見通しの下方修正(米国だけは上 方修正)が指摘されると、ドル相場が反落、商品相場下落(原油の下げがきつい)、米国債利回り低下、そして株式市場は中長期の移動平均を次々に切って下 げ、世界の金融市場に連鎖してきたのはご存じのとおりです。
過去に金融緩和政策が変更された時期には、株式市場は調整してきました。今回は、それに加えて、世界経済の成長鈍化、イスラム国攻撃などの中東問題、ウ クライナ問題等の地政学的リスクが重なりました。さらに、エボラ出血熱の先進国への感染の衝撃といった不安心理が売りを誘ったとされます。売られやすい時 期に複数の要因が重なり相互作用が売り圧力を強くしたようです。
9月の米雇用統計に冷静に反応した米国債市場は、昨年末に量的金融緩和第三弾を段階的に縮小していくことが決まったときに一時は3%をつけ、金融上昇リ スクを織り込みだしました。しかし、その後、利回りは低下を続け、好調な経済指標が発表されても上昇は限定され、逆のケースでは大きく利回りが低下しまし た。
超緩和政策からの正常化を前にして、米債利回りが低下する背景については様々な理由が言われてきました。このコラムでも何度も取り上げたと思います。米 国の低インフレ傾向、年初に積み重なった金利上昇に向けたポジションの調整、年金基金の底堅い買い需要などがありました。
先般の一連のリスク回避ムードの中、米国10年債は2.2%割れまで利回り低下。この水準は、昨年5月に前FRB議長バーナンキ氏が将来の量的緩和縮小 の可能性について言及後、債券利回りが上がりだした2013年6月の水準です。来年央の利上げを織り込んできた2年債も先月の0.5%台から直近0.3% 台に急低下。利上げ遠のくを織り込み出した水準です。
利上げ予想にもかかわらず、利回りが低下してきた米国の長期債の背景で大きいと思うのは、欧州景気の低迷です。
欧州債務危機の後にも、欧州経済の原動力とされてきたドイツの昨今の停滞は、鉱工業生産、景気指数、物価指数にも顕著に表れてきて、デフレやマイナス成 長の可能性が指摘されます。ドイツ国債の利回りは0.8%台まで低下、今後も引き続き低下予想が大半を占めています。ドイツの利回り低下により、資金は米 国債へ向かいやすくなります。
また、ドイツ経済の落ち込みの背景で言われているのが、ロシアへの経済制裁です。ロシアへの輸出減少は勿論、ロシアからの天然ガスの輸入の滞りはドイツのエネルギー政策にとっては痛手です。
一方、量的緩和も視野にいれた政策を模索する欧州中銀はドイツの反対に遭って、前進できないと伝わっています。景気刺激のための財政政策の発動についても、ドイツは財政規範を守るために動こうとしないとされています。
周辺国の弱い経済が問題になった欧州問題は形を変えているようです。欧州の政策面での進展があるかどうかが世界の市場にとって一大ポイント、要注目です。
ところで、ロシア軍がウクライナ国境から撤退を始めた、ウクライナとロシアの大統領が電話会談しているなどの報道がここ数日されていることに、少しばかり希望も感じていますが。
さて、そんな中での為替相場です。ドル・円相場は、先月一瞬タッチした110円台を高値に、国内での円安悪者論、米国のドル高けん制などを受けて、8月 中旬から続いてきた一方通行の上昇相場が調整を迎えています。アベノミクスで円安を推してきた安倍総理までが歯切れの悪い答弁、黒田日銀総裁とのギャップ を見せる場面は失望を与えました。
8月月初から直近までの主要通貨の対円相場では、対米ドルで4%超の+で円安、一方で対ニュージーランド・ドル(-3.9%)、対豪ドル(-2.4%)、対ブラジル・レアル(-1.9%)対ユーロ(-1.65%)など、円高となった通貨が多くありました。
今月末には、日米の金融政策決定会合が開かれます。10月前半大きく調整してきた市場なので、政策決定会合を前に神経質な動きは続くものと思います。ド ル円相場は当面、106円から110円のボックス相場の予想が大半です。円高への反転も一部では言われます。背景には、米国のドル高けん制、日米金利差縮 小、株価下落などによるリスクオフの円買いがあげられますが、個人的には基調としての円安に変化はないと考えます。
現在、日銀が実施している金融政策(1年間で60~70兆円でのマネタリーベース増加)の規模は、国の経済規模(GDP480兆円)に比べて、やはり『異次元』です。
国のエネルギー政策に変化が見られずエネルギー輸入により累積する貿易赤字と相まって、円が弱くなる地盤には今のところ変化がないと思います。
引き続き、不安定な相場が続くことが予想されますが、冷静にチャンスを拾い上げていく姿勢でいきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
*10月15日午後13時執筆
本号の情報は10月14日のニューヨーク市場終値レベルを基本的に引用、記載内容および拙見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
読者のみなさまにはご無事ででいらっしゃいましたでしょうか?被害にあわれた方々には心よりお見舞い申し上げます。
自然災害には比べようもありませんが、世界の金融市場も10月に入り連日の嵐に見舞われた感があります。
例年10月は欧米のミュチュアルファンドの決算期でポジション調整で荒れる月とも言われてきましたが、今年も例外ではなかったようです。
月初に発表された米国9月の雇用統計の予想以上に良い数字に反応して、為替市場、株式市場は好感して始まりましたが、ドル相場、株式市場はそれを頂点にして反転。冷静に反応した債券市場の利回りは下げ始めました。
さらに、開示された9月の米国金融政策決定会合(FOMC)の議事録でドル高のリスクが、またIMFによる世界経済成長見通しの下方修正(米国だけは上 方修正)が指摘されると、ドル相場が反落、商品相場下落(原油の下げがきつい)、米国債利回り低下、そして株式市場は中長期の移動平均を次々に切って下 げ、世界の金融市場に連鎖してきたのはご存じのとおりです。
過去に金融緩和政策が変更された時期には、株式市場は調整してきました。今回は、それに加えて、世界経済の成長鈍化、イスラム国攻撃などの中東問題、ウ クライナ問題等の地政学的リスクが重なりました。さらに、エボラ出血熱の先進国への感染の衝撃といった不安心理が売りを誘ったとされます。売られやすい時 期に複数の要因が重なり相互作用が売り圧力を強くしたようです。
9月の米雇用統計に冷静に反応した米国債市場は、昨年末に量的金融緩和第三弾を段階的に縮小していくことが決まったときに一時は3%をつけ、金融上昇リ スクを織り込みだしました。しかし、その後、利回りは低下を続け、好調な経済指標が発表されても上昇は限定され、逆のケースでは大きく利回りが低下しまし た。
超緩和政策からの正常化を前にして、米債利回りが低下する背景については様々な理由が言われてきました。このコラムでも何度も取り上げたと思います。米 国の低インフレ傾向、年初に積み重なった金利上昇に向けたポジションの調整、年金基金の底堅い買い需要などがありました。
先般の一連のリスク回避ムードの中、米国10年債は2.2%割れまで利回り低下。この水準は、昨年5月に前FRB議長バーナンキ氏が将来の量的緩和縮小 の可能性について言及後、債券利回りが上がりだした2013年6月の水準です。来年央の利上げを織り込んできた2年債も先月の0.5%台から直近0.3% 台に急低下。利上げ遠のくを織り込み出した水準です。
利上げ予想にもかかわらず、利回りが低下してきた米国の長期債の背景で大きいと思うのは、欧州景気の低迷です。
欧州債務危機の後にも、欧州経済の原動力とされてきたドイツの昨今の停滞は、鉱工業生産、景気指数、物価指数にも顕著に表れてきて、デフレやマイナス成 長の可能性が指摘されます。ドイツ国債の利回りは0.8%台まで低下、今後も引き続き低下予想が大半を占めています。ドイツの利回り低下により、資金は米 国債へ向かいやすくなります。
また、ドイツ経済の落ち込みの背景で言われているのが、ロシアへの経済制裁です。ロシアへの輸出減少は勿論、ロシアからの天然ガスの輸入の滞りはドイツのエネルギー政策にとっては痛手です。
一方、量的緩和も視野にいれた政策を模索する欧州中銀はドイツの反対に遭って、前進できないと伝わっています。景気刺激のための財政政策の発動についても、ドイツは財政規範を守るために動こうとしないとされています。
周辺国の弱い経済が問題になった欧州問題は形を変えているようです。欧州の政策面での進展があるかどうかが世界の市場にとって一大ポイント、要注目です。
ところで、ロシア軍がウクライナ国境から撤退を始めた、ウクライナとロシアの大統領が電話会談しているなどの報道がここ数日されていることに、少しばかり希望も感じていますが。
さて、そんな中での為替相場です。ドル・円相場は、先月一瞬タッチした110円台を高値に、国内での円安悪者論、米国のドル高けん制などを受けて、8月 中旬から続いてきた一方通行の上昇相場が調整を迎えています。アベノミクスで円安を推してきた安倍総理までが歯切れの悪い答弁、黒田日銀総裁とのギャップ を見せる場面は失望を与えました。
8月月初から直近までの主要通貨の対円相場では、対米ドルで4%超の+で円安、一方で対ニュージーランド・ドル(-3.9%)、対豪ドル(-2.4%)、対ブラジル・レアル(-1.9%)対ユーロ(-1.65%)など、円高となった通貨が多くありました。
今月末には、日米の金融政策決定会合が開かれます。10月前半大きく調整してきた市場なので、政策決定会合を前に神経質な動きは続くものと思います。ド ル円相場は当面、106円から110円のボックス相場の予想が大半です。円高への反転も一部では言われます。背景には、米国のドル高けん制、日米金利差縮 小、株価下落などによるリスクオフの円買いがあげられますが、個人的には基調としての円安に変化はないと考えます。
現在、日銀が実施している金融政策(1年間で60~70兆円でのマネタリーベース増加)の規模は、国の経済規模(GDP480兆円)に比べて、やはり『異次元』です。
国のエネルギー政策に変化が見られずエネルギー輸入により累積する貿易赤字と相まって、円が弱くなる地盤には今のところ変化がないと思います。
引き続き、不安定な相場が続くことが予想されますが、冷静にチャンスを拾い上げていく姿勢でいきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
*10月15日午後13時執筆
本号の情報は10月14日のニューヨーク市場終値レベルを基本的に引用、記載内容および拙見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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