9月月初、104円台で始まった相場は、第二次安倍内閣の人事で厚労大臣に塩崎氏が入閣したことで、公的年金資金が積極的な運用に変わるという期待が高 まり、一気に105円台に上昇。その後も、日銀の更なる緩和期待、日本企業による外国企業の大型買収、輸出代金のドル決済資金調達などが相場を押し上げた 背景と言われます。日銀が新たな緩和策を発表したわけではありませんが、例えば、マイナス金利で短期国債を買い入れている事実は緩和策と解釈され、円安要 因に結びつきました。
又、それ以上に、米ドルが世界の主要通貨に対して全面高であることが、ドル円相場の下支えになっています。米国の金融政策の正常化が経済状況次第で早まる可能性があるというFRBのメッセージを受け取った格好です。
新興国を含めた主な通貨の9月対米ドルの為替相場パフォーマンスを見ると、上昇したのは中国元(0.07%)のみでした。特に、新興国通貨の下落が目立ちます。
下落トップは、ブラジル・レアルのマイナス8.6%でした。
今週末に、大統領選挙を控えたブラジルでは現職のルセフ大統領の優勢が伝えられています。ルセフ氏が大統領に就任してから、経済が低下していることから 続投予想は通貨、株式へのマイナス要因となっています。一方、対抗馬はシルバ氏で経済刺激策を訴えています。二人とも、なんと女性候補です。
対ドルで、次に下落幅が大きかった通貨はオセアニア通貨です。ニュージーランド・ドルはマイナス6.6%。豪ドルはマイナス6.3%でした。特に、今年 前半は上昇基調が続いたニュージーランド・ドルは、利上げを一旦停止したことで高値から反落しました。さらに、これまでも自国通貨が高すぎるとのコメント を出してきた通貨当局が、コメントだけでなく8月には自国通貨売りをしていたことが分かり、売りに拍車がかかりました。対日本円で、ニュージーランド・ド ルは1.64%の下落となりました。
好金利と言われる比較的高い金利の通貨売りは、リスクオフ(世界的に危機リスクが高まり投資家がリスクをとりにくい時期)に、よく起こりますが、今回はドルへの回帰傾向に加えて各国の通貨高修正意欲が裏にあるようです。
さて、冒頭にも書きましたように、ドル円相場は8月中旬までの101円~102円レンジから一気に直近110円まで上昇してきましたが、108円~109円をつけるようになってから日本経済への悪影響を懸念する声も聞かれるようになってきました。
円安は日本の株高に寄与してきましたが、ドル円相場と日経平均株価の相関度は、ここへ来てやや低下しつつあります。昨年末には、0.5以上の相関度が あったのですが、直近では0.24程度です。ドルベースでの日経平均の推移は今や上昇基調ではなく横ばい推移です。ドル円相場の上昇スピードが速すぎるこ とへの懸念の声が一部政財界から聞かれる程度ですが、今後ネガテイブ面を指摘する声が高くなれば、株価への影響も変わってくるでしょう。
とは言え、ドル円上昇の背景となっている主な要因、日米の今後想定しうる金融政策の方向性の違い、日本の国際収支の構造変化、日本企業の外国への進出が 続いていることなどが潜在的にあり、相場水準を調整しながらも基調は変わらないものと思っています。特に米国が量的緩和第三弾を終了する10月以降は日米 の違いは更に大きくなるでしょう。
これまでの上昇スピードの速さを考えると、しばらくは、106円~111円あたりのレンジ形成で時間調整する可能性は高いでしょうが、方向性として上値を試す動きは続くものと思います。
10月初旬の注目としては、2日の欧州中銀理事会、3日の米国の9月分雇用統計発表、6&7日の日銀政策決定会合、10月8日(日本時間9日)には米国FRBの9月の政策決定回答(FOMC)の議事録公開があります。
FRBの理事もあちこちの講演会でコメントするようですので、そのたびに大なり小なりの反応はあるしょうが、この中でFOMCの9月の議事録は最注目ではないかと思っています。今後、発表される米国の経済指標にも注目しておく必要があります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
*10月1日午後13時執筆
本号の情報は9月30日のニューヨーク市場終値レベルを基本的に引用、記載内容および拙見解は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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