2014年も後半に入ってきました。重要イベントや経済指標の見極めを理由に、相場は動かない理由をさがしているかのようです。とりわけ、ドル円相場の動かなさが目立ちます。

 2014年前半のドル円相場は、昨年末の動きを受けて105円31銭という高値に始まり、年初来安値100円76銭、直近の7月8日ニューヨーク終値は 101円57銭です。このところの動きは200日移動平均101円84銭を挟み、上下往ったり来たり。イベント結果にも反応薄の限定的な動きが続いていま す。

 年初来、各月の値幅の平均は2円50銭弱ですが、6月の高安の差は1円56銭しかなく、取引高も減少しました。80年代以来の「動かなさ」。超安定相場です。
 昨年のドル円相場はそれまでの円高状態からデフレ脱却期待により大きく水準が修正されました。為替水準の見方の一つに購買力平価があります。OECDの 年次予測使用購買力平価(インフレ格差から物価を均衡させる為替相場水準)でのドル円相場は103円45銭。日本も米国も消費者物価目標を2%としてい て、現在近づきつつあります。両国の物価動向が大きく変わらない限り、現在の為替相場は物価で比較する限りでは均衡水準に近いところにあるとも言えます。

 こう着しているのは、毎度このコラムで取り上げている米国債市場も同様です。
 年初は、量的緩和終了後の利上げを見込んで(どちらかと言うと見込み過ぎて)10年物国債利回りで3%台をヒットする場面もありましたが、その後は2.44%を最低水準に2.5%から2.6%前半を中心に推移しています。
 先週発表された6月の米国雇用統計は数値的にも質的にも良好さを示し、10年物利回りも一時2.6%半ばまで上昇したものの、上昇したところでは買い手が増え、再び2.5%半ばに低下しました。長期債の供給が少なくなっているので需要は良好です。

 長期債の利回りが低下する一方、2年債は着々と来年半ばとも予想される米国FRBによる利上げを織り込むが如く、雇用統計発表後に0.4%台から 0.5%台に乗せてきました。因みに2年債利回りは、年初から春にかけて、0.3%台をうろうろしていましたので、長短金利は別々の動きをしています。

 米国長短金利差が縮小してきている背景には、長期債の需給面がタイトで買われやすい背景も言われますが、来年中盤に利上げがあったとしても継続するのではなく、中期的には金利は大きく上がらないだろうという予測が増えているというようにも見受けられます。

 米国の金融政策を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)の6月議事録が日本時間10日未明に開示されます。注目されるのは、量的緩和第三弾の終了後の出 口をどのような工程で行うのかということですが、現在第三弾として行われている資産買入れ額は毎月減額され秋口にはなくなる予定とされています。それまで は具体的な工程を示すようなものは示されないのではないかと推測されます。
 歴史的な金融政策である量的緩和政策を大きな影響なく終了させるための具体的で実務的なプロセスを整えつつあるのが現状だと思いますので、出口戦略が見えてくるのは9月のFOMC以降ではないかと推察されます。

 さて、年初来の主要通貨での対ドル為替相場で最も上昇したのは、ニュージーランド・ドルの7%。次いで、ブラジル・レアル6.7%、豪ドル5.4%がベスト3。年初105円台から始まった円は3.7%上昇しました。
 逆に下落トップは先週利下げしたスウエーデン・クローネのマイナス5.8%、続いてノルウエイ・クローネ(マイナス1.9%)といった北欧通貨、続いて 金鉱山ストが続く南アフリカランドのマイナス1.78%でした。金鉱山ストに関連すると、金価格の底入れと上昇が目立ちますね。

 上昇トップのニュージーランド・ドルは今年2度の利上げを実施。超低金利が続く日米欧と比べて、金利面(10年債4.5%水準)でも先高観があり、通貨 も引き続き堅調に推移すると思っています。もう一つのオセアニア通貨である豪ドルは、一時期の豪ドル高けん制と利下げ期待後退で上昇しましたが、最近の中 央銀行総裁コメント(豪ドル高けん制)で反落する場面がありました。対米ドルで底堅い推移ではありますが、当局からの通貨高けん制発言には神経質になりそ うです。過熱したらご注意。安くなったところを拾うのが賢明でしょう。

 ところで、人民元相場が当局の政策を反映して水準を切り下げたことも今年前半のトピックの一つでした。最近になって、米国の財務長官(ルー氏)の発言 (人民元は高くなるべき)をきっかけに対ドル6.26台から6.19台の人民元高に戻しています。米中関係も含めて、今後の動きに要注目です。

 長くこう着した後は、動き出すと大きいと経験則では言われます。低い変動率を利用したオプション取引も増えて、ますます動かないドル円相場ではあります。
 では、次の動きはどちらかと問われれば、個人的にはドル高円安の可能性が未だに高いと思っています。これまでに言われてきたように日米の出口戦略のタイ ミングのずれ、日本の貿易赤字の恒久化、増加する海外投資などを背景に、米国金融政策の動向次第ではありますが、秋風が吹くころにはボックス相場を脱して いくのではないかと考えています。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 台風8号による被害を受けた皆さまには心よりお見舞い申し上げます。今後の進路が気になります。皆さまにはどうぞお気をつけてお過ごしください。

*7月9日16時執筆
 本号の情報は7月8日のニューヨーク市場終値レベルを基本的に引用、記載内容は参考情報として記しています。

式町 みどり拝

(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)