個別銘柄の週間騰落率を調べますと、日経500種平均株価の採用銘柄で上昇率首位(26.7%の上昇)であったのはアマダ(6113)で、ほぼ6年ぶり の高値を付けました。会社側が「16年3月期までに稼いだ利益は全て株主に配分する」と発表したことが手掛かりとなりました。国内企業の13年度決算発表 では、14年度見通しに関し、保守的な予想が目立ちましたが、ROE(自己資本利益率)を意識し、自社株買いや増配を発表する企業も増えてきました。国内 企業の株主還元に対する意識は明らかに前進しています。
その代表的な業種が総合商社です。大手5社が揃って増配を発表。さらに、三井物産が13年度第3四半期の決算発表時(14年2月)、総額500億円を実 施したのに続き、今回の決算では、三菱商事が総額600億円の自社株買いを発表しました。三井物産も新たな中期経営計画を発表しましたが、連結配当性向を 30%に引き上げるとともに、成長投資と株主還元の両立を目指すとしています。
株主還元の強化には、その原資となるキャッシュフロー(CF)の創出が課題となりますが、同社は通常ビジネスによる営業CFの創出とともに、資産の入れ 替えによりキャッシュを稼ぎ出し、新規事業への投資および株主還元(配当金、自社株買い)によるキャッシュアウトをまかなう方針です。
これまで、資源を中心に大規模な投資を優先してきた総合商社が株主還元を強化し始めたことは画期的と言えます。ここ10年間ほどの株式市場での総合商社株の評価の変遷は、3段階に分かれるものと考えます。
1)2000年代に入り、中国の高成長、資源の「爆食」に伴う原油、鉄鋼原料(鉄鉱石、原料炭)の上昇を背景とする局面です。ここでは、資源の上流権益に強い三菱商事、三井物産を中心に、総じて株価は堅調でした。
2)リーマンショック後、資源市況が停滞するなか、各社が非資源分野の強化、投資拡大に注力した局面です。ここでは、従来から「生活消費関連分野」に強みを持ち、岡藤社長のリーダーシップのもと、非資源分野中心に、急速に収益力を向上させた伊藤忠が評価を高めました。
3)そして今回、資源市況の停滞が続くなかでの、三井物産と三菱商事のキャシュフロー経営の志向および株主還元の強化です。今後はこの2社が相対的に評価を高めるものと見込まれます。
(水島寒月)
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