日本のゴールデンウィークも過ぎ、五月も半ばになりました。ニューヨーク株が最高値更新など海外市場の好調さの一方で、日本では株式市場もドル円相場も狭いボックスレンジ内での動きが続いています。
月初恒例で注目される米国の雇用統計。4月の数字は、事前予想よりも非農業部門雇用者数が増加、失業率も低下していたにもかかわらず、ドル円相場は103円をかすっただけでその後は102円台へ戻され、一時101円台半ばへの反落もありました。
予想以上の米国雇用統計に反応しなかったのは、雇用が増えた理由がパート雇用増加によるものであること、また、失業率が低くなったのは就職をあきらめて 求職していない人が増えた労働参加率の低下等が指摘されます。数字は良くても内容が良くないからという指摘です。「ウクライナ情勢懸念」は、相場が下がる ときの常套句になっていますが、何か違和感があります。
さて、5月月初の対米ドルパフォーマンスでは、上昇した通貨の特徴が新興国通貨でした。
南アフリカランド(2%上昇)メキシコペソ、豪ドル、ブラジルレアル等は1%程度の上昇でした。
逆に下落した通貨は主に欧州通貨でした。欧州中銀が6月に量的緩和に動くと予想されることによるユーロ下落が中心になりました。日本円は4月末と直近の終値ベースが、ほぼ同じでした。
ドル円相場のこう着が続いている背景に米金利の低下を指摘する声があります。
米債市場は昨年末、量的緩和QE3縮小が決定されました。その後、2014年中の早期利上げの思惑も出て、10年債が一時3%を超えました。しかし、そ の後、寒波による経済への影響による米経済の減速や地政学リスク(主にウクライナ情勢)を理由に長期債を中心に利回りは低下、2.57%をつける場面もあ りました。米国の経済指標が良し悪しにかかわらず買いが入る米国長期債。
米国の長期債利回り低下の背景として挙げられる要因の一つには米国の低インフレがあります。昨日発表された4月の輸入物価指数は事前予想(前月比)+0.3%に対して-0.4%でした。消費者物価は直近1.5%と過去10年間平均2.5%を下回る水準です。
一方で、需給面から米国債市場の強さ(利回り低下)を指摘する見方もあります。昨年の今頃、前FRB議長が量的緩和3弾を徐々に減らしていくと発言しま した。当時の10年債は2%を切るレベル。その後、利回りは徐々に上昇。米国債の買い解消が進み、売り持ちが増えていた為に、その調整が今年に入ってから 増えているという見方があります。
更に、もう一つの需給面での背景として指摘されているのが、米国の企業年金制度の一部改正により(保険料の引き上げ)、年金基金による債券買いです。 10年債が約0.4%低下した間、30年債利回りは昨年末の最高利回りから約0.5%低下しているのは、機関投資家の持ち切りの買いが継続的に入っている という見方があるようです。
米債利回りとドル円相場、はたまた日本株との相関関係はしばしば指摘されます。
先週、2.57%をつけた10年債も今週になって2.6%台に戻してきました。利回りが下打ちした感は未だありませんが、やや変化の兆しも見られるように思います。
日本の経常収支黒字の縮小、貿易赤字の拡大や大量のマネーサプライによる円安要因が常態化してサプライズではなくなってしまい、米国経済の好調さ、とい う材料も疑問符も浮かぶ昨今。ドル円相場のボックス内推移は仕方ないかと諦めつつも、ボックス放れのタイミングを注意深く忍耐強く見こうと思います。
最後に、5月初旬に動いた通貨の中で注目しているのは豪ドルです。経済指標の好転、利下げ期待の後退から上昇が目立ちます。今年1月につけた安値88円 台から4月後半には96円台をつけました。その後、下げる場面もありましたが、直近96円に迫るレベルに戻してきました。中国の金融市場改革の話から、ハ ンセン指数が反発していることも影響しているかもしれません。豪ドルの他にも南アフリカランドやブラジルレアルが静かに上昇しているのを見ると、世界的に はリスク許容度がやや上向きになっている可能性を感じます。
6月に発表される日本の成長戦略案、今後の日銀の動きなどの日本サイドの材料、欧州サイドの材料には中銀の量的緩和の実施がありますが、やはり市場に大きな影響を与えるのは米国経済の動向だと考えます。その意味でも、米国債券市場の動向には注目していく必要があります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
*5月14日13時執筆
本号の情報は5月13日のニューヨーク市場終値レベルを基本的に引用、記載内容は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
月初恒例で注目される米国の雇用統計。4月の数字は、事前予想よりも非農業部門雇用者数が増加、失業率も低下していたにもかかわらず、ドル円相場は103円をかすっただけでその後は102円台へ戻され、一時101円台半ばへの反落もありました。
予想以上の米国雇用統計に反応しなかったのは、雇用が増えた理由がパート雇用増加によるものであること、また、失業率が低くなったのは就職をあきらめて 求職していない人が増えた労働参加率の低下等が指摘されます。数字は良くても内容が良くないからという指摘です。「ウクライナ情勢懸念」は、相場が下がる ときの常套句になっていますが、何か違和感があります。
さて、5月月初の対米ドルパフォーマンスでは、上昇した通貨の特徴が新興国通貨でした。
南アフリカランド(2%上昇)メキシコペソ、豪ドル、ブラジルレアル等は1%程度の上昇でした。
逆に下落した通貨は主に欧州通貨でした。欧州中銀が6月に量的緩和に動くと予想されることによるユーロ下落が中心になりました。日本円は4月末と直近の終値ベースが、ほぼ同じでした。
ドル円相場のこう着が続いている背景に米金利の低下を指摘する声があります。
米債市場は昨年末、量的緩和QE3縮小が決定されました。その後、2014年中の早期利上げの思惑も出て、10年債が一時3%を超えました。しかし、そ の後、寒波による経済への影響による米経済の減速や地政学リスク(主にウクライナ情勢)を理由に長期債を中心に利回りは低下、2.57%をつける場面もあ りました。米国の経済指標が良し悪しにかかわらず買いが入る米国長期債。
米国の長期債利回り低下の背景として挙げられる要因の一つには米国の低インフレがあります。昨日発表された4月の輸入物価指数は事前予想(前月比)+0.3%に対して-0.4%でした。消費者物価は直近1.5%と過去10年間平均2.5%を下回る水準です。
一方で、需給面から米国債市場の強さ(利回り低下)を指摘する見方もあります。昨年の今頃、前FRB議長が量的緩和3弾を徐々に減らしていくと発言しま した。当時の10年債は2%を切るレベル。その後、利回りは徐々に上昇。米国債の買い解消が進み、売り持ちが増えていた為に、その調整が今年に入ってから 増えているという見方があります。
更に、もう一つの需給面での背景として指摘されているのが、米国の企業年金制度の一部改正により(保険料の引き上げ)、年金基金による債券買いです。 10年債が約0.4%低下した間、30年債利回りは昨年末の最高利回りから約0.5%低下しているのは、機関投資家の持ち切りの買いが継続的に入っている という見方があるようです。
米債利回りとドル円相場、はたまた日本株との相関関係はしばしば指摘されます。
先週、2.57%をつけた10年債も今週になって2.6%台に戻してきました。利回りが下打ちした感は未だありませんが、やや変化の兆しも見られるように思います。
日本の経常収支黒字の縮小、貿易赤字の拡大や大量のマネーサプライによる円安要因が常態化してサプライズではなくなってしまい、米国経済の好調さ、とい う材料も疑問符も浮かぶ昨今。ドル円相場のボックス内推移は仕方ないかと諦めつつも、ボックス放れのタイミングを注意深く忍耐強く見こうと思います。
最後に、5月初旬に動いた通貨の中で注目しているのは豪ドルです。経済指標の好転、利下げ期待の後退から上昇が目立ちます。今年1月につけた安値88円 台から4月後半には96円台をつけました。その後、下げる場面もありましたが、直近96円に迫るレベルに戻してきました。中国の金融市場改革の話から、ハ ンセン指数が反発していることも影響しているかもしれません。豪ドルの他にも南アフリカランドやブラジルレアルが静かに上昇しているのを見ると、世界的に はリスク許容度がやや上向きになっている可能性を感じます。
6月に発表される日本の成長戦略案、今後の日銀の動きなどの日本サイドの材料、欧州サイドの材料には中銀の量的緩和の実施がありますが、やはり市場に大きな影響を与えるのは米国経済の動向だと考えます。その意味でも、米国債券市場の動向には注目していく必要があります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
*5月14日13時執筆
本号の情報は5月13日のニューヨーク市場終値レベルを基本的に引用、記載内容は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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