市場予想はまちまちですが、毎月850億ドルの資産購入が、今月からの50~100億ドル相当縮小されるとの見方がある一方で、来年の1月または3月に 縮小が開始されるとする年越しの見方もあり、今のところ後者がやや多数派です。クリスマス休暇前に加えて、この注目イベントを前に市場が薄くなっている 中、相場は神経質な動きとなっています。
今年11月には、米FRB新議長イエレン氏の議会証言が緩和の長期継続と受け止められて、今年中の縮小はないと見る向きが大勢でしたが、10月や11月 の雇用統計が予想以上に良かったこと、また米議会の予算協議が妥結したことなどが早期の縮小予想につながりました。特に10月の雇用については、米政府機 関がシャットダウンされた影響がみられず、増加したことがポジテイブ・サプライズとして働きました。さらに、11月の失業率が7%まで低下してきたことも 市場のコンセンサスの変化につながりました。
ただ、雇用統計改善の一方で、労働参加率の低下を指摘する向きもあります。最近発表された米国の労働参加率は35年間で最低水準。雇用をあきらめて労働 市場に戻ってきていない人がたくさんいる状態では、本当の意味では雇用は改善されていないという冷静な見方もあります。また、消費者物価の低水準が続いて いることも縮小は来年に持ち越されるという見方を支持しています。
振り返れば、今年の5月23日(日本時間)未明にバーナンキ現FRB議長が年内に量的緩和縮小を開始する可能性について言及して以来、市場の関心事は縮 小の時期に集中してきました。米10年物国債金利は、2%から最高利回り2.994%(9月15日)に上昇。政府機関シャットダウンがあった10月には、 2.5%まで低下したものの、直近は2.85%という高値圏で推移しています。時期はいつにしろ、経済刺激策である量的緩和はいずれは終了するということ が織り込まれています。
今回のFOMC結果発表後の市場の反応に関心が集まっています。もし、縮小開始なら素直に考えればドル買いですが、株式市場が下げで反応すればリスクオ フの円買い、ドル売りの可能性もあります。また、現状維持であれば、ドル売り材料ではありますが、株式上昇→リスクオンの円売りドル買い、ユーロ円などの クロス円上昇の可能性もあるでしょう。円買いドル売りが大勢になった場合、投資家(&投機家)の持ち高が円売りに傾いているためポジション調整で大きく下 押しする可能性も否定できません。少額縮小だけであれば反応は限定的になる可能性が高いでしょう。個人的には、早く少額から縮小を始めてもらった方が落ち 着くと思います。
縮小開始か延期かという問題と別に注目されているのが、「フォワード・ガイダンスの改定」です。フォワード・ガイダンスは中央銀行が将来の政策を変更す る条件や時期の目安などを示すものです。今回の政策委員会で、現状維持が決定された上、フォワード・ガイダンスが強化、例えば、緩和をやめるための失業率 の目安6.5%を5.5%あるいはそれ以下に変更するなどがあった場合、緩和縮小条件のハードルが上がり、更に緩和は続くことになります。これに素直に反 応すれば、まずドル売り、株買い方向になるでしょうが、複雑な反応になるかもしれません。予想はむずかしいです。
為替相場は2国通貨の相対的価格ですので、ドル・円相場を見るには、日本の状況も見ておく必要があります。本日発表された11月貿易収支は輸出がのび市 場予想よりも良かったものの、11月としては最悪の赤字。貿易赤字は17カ月連続です。輸入はドル決済が多いため、円安が進むと貿易赤字額(円ベース)は 増えます。円を調達通貨にして、他の通貨に換えて投資する円キャリートレードも増えているとされています。日本の緩和が長期間に及ぶという期待が背景にあ ります。スピード調整はあるでしょうが、円安基調は続く、と前回変わらず思っています。調整あれば円売りの良い機会かもしれません。
今年最後の拙コラムなので、年初からの通貨パフォーマンスを振り返ってみたいと思います。
主要通貨対米ドル為替相場で、もっとも上昇したのはデンマーク・クローネ(4.4%)次にユーロ(4.39%)、3位がスイス・フラン(3.44%)英国ポンドも0.17%と少なからず上昇。
逆に、下落トップは南ア・ランド(-18.05%)、次に日本円(-15.77%)3位に豪ドル(-14.25%)と続きます。対米ドルで、上昇した通貨よりも下落した通貨の方が多数でした。
下落した通貨の中で、日本の投資家にも人気が高いとされる豪ドルは、資源価格下落が国内経済に悪影響を及ぼし、政策金利が複数回下げられました。中央銀 行総裁は「利下げ余地はまだある」「豪ドル水準は不快なほど高い」と豪ドル高抑制に口先介入を続けています。今週のコメントでは「0.85水準くらいが適 切」と為替相場水準にまで言及しています。直近レートは対米ドル0.89台前半で推移していますが、物価水準から算出する購買力平価と比べ依然20%程度 割高です。資源価格が反転してくれば状況は変わるでしょうが、現状では未だ豪ドルには下落リスクがあると見た方が良いと思っています。
今年は、5月までがアベノミクス期待、異次元緩和などが大きな材料になり、5月中旬からは米緩和縮小時期の模索が相場を動かす主要な材料でした。来年、 日本では消費増税の影響緩和のために更なる緩和予想もあります。米国の緩和の段階的縮小は来年も続きます。引き続き、先進国の大量のマネー量が相場の関心 事となるでしょうが、ターニングポイントはいつかは来ます。相場に乗りながらも、冷静につきあっていきたいものです。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。
今年も拙コラムにおつき合い頂きまして、ありがとうございました。
読者の皆さまには良い新年をお迎えください。
*12月18日13時執筆
本号の情報は12月17日のニューヨーク市場の終値レベルを基本的に引用、記載内容は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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