今週から師走相場に入りました。11月のドル・円相場は長い間のもち合いを経て、5か月ぶりに月足を大きな陽線引けとなりました。そして、昨日12月3日には今年5月以来の103円台を示現しました。
ドル・円相場が三桁の水準に戻ってきた要因はいくつかありますが、どちらかというと相場の機が熟した感もあります。日柄、でしょうか。
主な要因を整理してみると、
○日本の貿易収支の恒常的な赤字状態でドル需要が高いこと
○米国の量的緩和「縮小近し」の期待に対して日本は異次元の量的緩和を長く続ける可能性があること
○消費増税にからんで、日銀の更なる緩和政策への期待(⇒可能性は疑問ですが)
○日本の脱デフレ傾向
○個人・法人ともに日本からの海外投資が増えつつあること
等々、円サイドに多くの要因があるように思います。
これらの要因は以前からあったわけですが、11月中旬から株式相場が回復して、いわゆる「リスク・オン」(リスク許容度の高まり)状態が円を売りやすい背景となっているかもしれません。
異次元の緩和政策が不変である限り、基本的には円安基調が続くと見ておいて良いと思いますが、もちろん相場は森羅万象、なんでもありです。様々な事象で 大きく振れることがあります。中でも、米国の状況は大きく影響します。米国の経済指標、量的緩和縮小のタイミングへの憶測、年明けると始まる財政協議の続 きがどうなるか?年末年始、注目材料は多々あります。
米国経済に関して、10月におきた米国の政府機関シャットダウンによる影響を心配する声がありましたが、感謝祭やクリスマス商戦、自動車販売などに見られる個人消費の順調さも伝えられます。また住宅市況の回復を示す指標も出てきています。
一方で、昨日から今日にかけて伝えられたボルカ―ルール適用(金融機関による投機的動きを封じる規制)に関する報道は、ポジション調整の要因として働き 高値圏にいたドル円の利食い理由になりました。相場が良いときほど影響が大きいので、予期せぬ材料にも対応できるように投資資金の管理しておきたいもので す。
さて、ドル・円相場を見る限りドル高という印象を持ちやすいのですが、ドルの強弱を示すドル指数(主要貿易相手国に対する指数)は決して全面高という水 準ではありません。57.6%の比重をしめるユーロ、3番目に比重が高い英ポンドが対ドルで高く推移しているので、むしろ、ここ数年の中ではドル安の水準 かもしれません。ポンドとユーロが高い背景はなんでしょうか?
【ポンド高】
11月初旬から昨日までの通貨パフォーマンスを見ると、対ドルで殆どの主要通貨が下落しているのに対して、英ポンドが、ユーロ、スイス・フランといった 欧州通貨を押さえて2.2%の上昇でトップとなっています。英ポンドは英国経済の回復を背景に買われてきました。特に英国では、住宅バブルを懸念した英国 中銀が住宅市場の抑制策を発表しています。これは金融引き締め策ではないとされ、利上げが近いわけではなさそうです。住宅市場の過熱を抑制するために、銀 行の住宅ローンに関する幾つかの緩和措置を廃止するとのことです。今週、金融政策委員会が開催されますが、政策金利はしばらく変わらないという予測が大勢 です。
【底堅いユーロ】
ユーロも底堅い動きを見せています。昨日は5年ぶりに140円台をつけました。高いです。欧州旅行に行ったら、買い物は高くて控えるでしょう。利下げや マイナス金利適用の可能性も憶測されるユーロですが、売られそうで売られないユーロ。背景は、市中へのマネー供給量が少なくなっているからだと思います。 欧州中央銀行が供給する過剰流動性が昨年初めのピークから比べて約4分の1程度に減っています。マネー供給量の減少は通貨高につながります。日本と逆で す。
今号最後に、市場介入が警戒される豪ドルについてまとめてみます。
利下げが遠のいたことで買い戻される場面もあった豪ドルですが、上値が重い展開が続いています。本日発表された経済指標、7月~9月の経済成長率は予想 を下回り対主要通貨で全面安になりました。豪ドルの最近の弱さは、中央銀行総裁の「豪ドル水準は不快なほど高い」「介入もある」というコメントへの警戒が 響いていると思われます。豪中銀はかつてリーマンショック後の豪ドル安を支えるため豪ドル買い介入をした経緯がありますが、今回は逆の介入があるか?! 今のところ、中銀総裁の口先介入に終始していますが、市場介入の可能性を考えると豪ドル買いのリスク回避はしばらく続きそうです。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。
*12月4日13時執筆 本号の情報は12月3日のニューヨーク市場の終値レベルを基本的に引用、記載内容は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
ドル・円相場が三桁の水準に戻ってきた要因はいくつかありますが、どちらかというと相場の機が熟した感もあります。日柄、でしょうか。
主な要因を整理してみると、
○日本の貿易収支の恒常的な赤字状態でドル需要が高いこと
○米国の量的緩和「縮小近し」の期待に対して日本は異次元の量的緩和を長く続ける可能性があること
○消費増税にからんで、日銀の更なる緩和政策への期待(⇒可能性は疑問ですが)
○日本の脱デフレ傾向
○個人・法人ともに日本からの海外投資が増えつつあること
等々、円サイドに多くの要因があるように思います。
これらの要因は以前からあったわけですが、11月中旬から株式相場が回復して、いわゆる「リスク・オン」(リスク許容度の高まり)状態が円を売りやすい背景となっているかもしれません。
異次元の緩和政策が不変である限り、基本的には円安基調が続くと見ておいて良いと思いますが、もちろん相場は森羅万象、なんでもありです。様々な事象で 大きく振れることがあります。中でも、米国の状況は大きく影響します。米国の経済指標、量的緩和縮小のタイミングへの憶測、年明けると始まる財政協議の続 きがどうなるか?年末年始、注目材料は多々あります。
米国経済に関して、10月におきた米国の政府機関シャットダウンによる影響を心配する声がありましたが、感謝祭やクリスマス商戦、自動車販売などに見られる個人消費の順調さも伝えられます。また住宅市況の回復を示す指標も出てきています。
一方で、昨日から今日にかけて伝えられたボルカ―ルール適用(金融機関による投機的動きを封じる規制)に関する報道は、ポジション調整の要因として働き 高値圏にいたドル円の利食い理由になりました。相場が良いときほど影響が大きいので、予期せぬ材料にも対応できるように投資資金の管理しておきたいもので す。
さて、ドル・円相場を見る限りドル高という印象を持ちやすいのですが、ドルの強弱を示すドル指数(主要貿易相手国に対する指数)は決して全面高という水 準ではありません。57.6%の比重をしめるユーロ、3番目に比重が高い英ポンドが対ドルで高く推移しているので、むしろ、ここ数年の中ではドル安の水準 かもしれません。ポンドとユーロが高い背景はなんでしょうか?
【ポンド高】
11月初旬から昨日までの通貨パフォーマンスを見ると、対ドルで殆どの主要通貨が下落しているのに対して、英ポンドが、ユーロ、スイス・フランといった 欧州通貨を押さえて2.2%の上昇でトップとなっています。英ポンドは英国経済の回復を背景に買われてきました。特に英国では、住宅バブルを懸念した英国 中銀が住宅市場の抑制策を発表しています。これは金融引き締め策ではないとされ、利上げが近いわけではなさそうです。住宅市場の過熱を抑制するために、銀 行の住宅ローンに関する幾つかの緩和措置を廃止するとのことです。今週、金融政策委員会が開催されますが、政策金利はしばらく変わらないという予測が大勢 です。
【底堅いユーロ】
ユーロも底堅い動きを見せています。昨日は5年ぶりに140円台をつけました。高いです。欧州旅行に行ったら、買い物は高くて控えるでしょう。利下げや マイナス金利適用の可能性も憶測されるユーロですが、売られそうで売られないユーロ。背景は、市中へのマネー供給量が少なくなっているからだと思います。 欧州中央銀行が供給する過剰流動性が昨年初めのピークから比べて約4分の1程度に減っています。マネー供給量の減少は通貨高につながります。日本と逆で す。
今号最後に、市場介入が警戒される豪ドルについてまとめてみます。
利下げが遠のいたことで買い戻される場面もあった豪ドルですが、上値が重い展開が続いています。本日発表された経済指標、7月~9月の経済成長率は予想 を下回り対主要通貨で全面安になりました。豪ドルの最近の弱さは、中央銀行総裁の「豪ドル水準は不快なほど高い」「介入もある」というコメントへの警戒が 響いていると思われます。豪中銀はかつてリーマンショック後の豪ドル安を支えるため豪ドル買い介入をした経緯がありますが、今回は逆の介入があるか?! 今のところ、中銀総裁の口先介入に終始していますが、市場介入の可能性を考えると豪ドル買いのリスク回避はしばらく続きそうです。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。
*12月4日13時執筆 本号の情報は12月3日のニューヨーク市場の終値レベルを基本的に引用、記載内容は参考情報として記しています。
式町 みどり拝
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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