先月内閣官房より発表されて、気にはしていたんですけど忙しくてなかなか読むことができなかった「社会保障制度改革国民会議報告書」をようやく読みました。
この会議は昨年成立した「社会保障制度改革推進法」(税と社会保障の一体改革)で決められた、社会保障制度改革の為に有識者が集まって1年間にわたって議論されていた会議です。
会議の会長が私も卒業をした慶應塾長の清家さんでもあったので、その発表内容には期待していたのですが、残念ながら内容そのものは「がっかり」と言ってよい内容でした。
報告書の副題も「確かな社会保障を将来世代に伝えるための道筋」と銘打たれているのですが、完全に踏み込み不足の感があります。
私の期待していた年金・医療・介護の3分野でも「改革」というには程遠く対処療法的な議論に終始している印象です。
それでも報告書の内容で多少評価できる内容とすれば
・少子化対策が社会保障の4分野の一つとして大きく認められることになった
という点でしょうか。
今後の社会保障制度の維持を図っていくためには、女性の社会参画及び根本的な少子化対策が必要なことは間違いが無く、これが大きく捉えなおされたことは一つの大きな成果であると評価できます。
しかし、その他の内容は無難で当たり障りが無く、具体論に欠けていて、なんだかもう少し踏み込んだ議論をしてほしいものだと思います。
今回の内閣官房主催の国民会議よりもよっぽど素晴らしい結論を提出している会議体がありました。
それは河野太郎を中心とした超党派で開催されていた
「国会版社会保障制度改革国民会議」
です。
こちらは、社会保障問題に関心のある国会議員が方が有識者との議論を重ねよっぽど具体的で、実行力のある提言を作成しています。(報告書の内容も10倍ぐらい内容が濃い気がします)
例えば社会保障体制の一つをとっても
「現在の厚労省の所掌範囲は過度に広範囲に及んでおり、事実上、一人の大臣では対応が困難な状況となっている。このため、先ずは、厚労省から旧労働省関連 部局を切り離し、社会保障省(仮称)として再編すべきである。その上で、省内の縦割りを是正するため、例えば、医政局と老健局の統合、社会援護局の一部と 年金局の統合による生活支援局(仮称)の設置などを行うべきである。更に、我が国の裁量的経費の約半分が社会保障支出であることも踏まえると、社会保障制 度の企画立案には財政的視野を含め高度・総合的能力が不可欠であり、社会保障の在り方に関する企画立案機能を厚労省から抜出し、内閣府に社会保障制度の企 画立案を担当する部局を新たに設けるべきである。」
など、役所(厚労省)主体の会議体では絶対に発想として出てこないような根本的な議論からスタートしています。
また、私のFP実務でも良く感じている「所得」(若年層よりも高齢者の方が豊かな生活をしている現状)に関する概念も
「現在、社会保障制度における「所得」概念はバラバラの状況にある。例えば、医療においては、国保の場合、収入から公的年金等控除や専従者控除、さらには 住民税の基礎控除などが差し引かれて課税標準となるが、組合健保や協会けんぽでは「収入」そのものが課税標準となっている。このことは、年金においても同 様であり、こうした「所得」概念の差異は、国民の間の不公平感を助長するのみならず、制度内、制度間の改革を困難にする要因ともなっており、できる限り是 正していく必要がある。また、「高所得者」、「低所得者」を議論する際の所得概念についても、不動産所得や金融所得を含めた総所得、包括所得の概念の導入 を図っていく必要がある。」
と一概に「収入」だけで社会保障制度について検討することに疑問を呈しています。
より踏み込めば「資産」(ストック)についても議論をしてほしいものです。
結論としては、
政府主導の「社会保障制度改革」にはあまり期待が持てない。
「国会版社会保障制度改革国民会議」は内容が素晴らしいので多くの方に読んで議論してほしい
という事です。
株式会社マネーライフプランニング
代表取締役 小屋 洋一
http://www.mlplanning.co.jp/
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
この会議は昨年成立した「社会保障制度改革推進法」(税と社会保障の一体改革)で決められた、社会保障制度改革の為に有識者が集まって1年間にわたって議論されていた会議です。
会議の会長が私も卒業をした慶應塾長の清家さんでもあったので、その発表内容には期待していたのですが、残念ながら内容そのものは「がっかり」と言ってよい内容でした。
報告書の副題も「確かな社会保障を将来世代に伝えるための道筋」と銘打たれているのですが、完全に踏み込み不足の感があります。
私の期待していた年金・医療・介護の3分野でも「改革」というには程遠く対処療法的な議論に終始している印象です。
それでも報告書の内容で多少評価できる内容とすれば
・少子化対策が社会保障の4分野の一つとして大きく認められることになった
という点でしょうか。
今後の社会保障制度の維持を図っていくためには、女性の社会参画及び根本的な少子化対策が必要なことは間違いが無く、これが大きく捉えなおされたことは一つの大きな成果であると評価できます。
しかし、その他の内容は無難で当たり障りが無く、具体論に欠けていて、なんだかもう少し踏み込んだ議論をしてほしいものだと思います。
今回の内閣官房主催の国民会議よりもよっぽど素晴らしい結論を提出している会議体がありました。
それは河野太郎を中心とした超党派で開催されていた
「国会版社会保障制度改革国民会議」
です。
こちらは、社会保障問題に関心のある国会議員が方が有識者との議論を重ねよっぽど具体的で、実行力のある提言を作成しています。(報告書の内容も10倍ぐらい内容が濃い気がします)
例えば社会保障体制の一つをとっても
「現在の厚労省の所掌範囲は過度に広範囲に及んでおり、事実上、一人の大臣では対応が困難な状況となっている。このため、先ずは、厚労省から旧労働省関連 部局を切り離し、社会保障省(仮称)として再編すべきである。その上で、省内の縦割りを是正するため、例えば、医政局と老健局の統合、社会援護局の一部と 年金局の統合による生活支援局(仮称)の設置などを行うべきである。更に、我が国の裁量的経費の約半分が社会保障支出であることも踏まえると、社会保障制 度の企画立案には財政的視野を含め高度・総合的能力が不可欠であり、社会保障の在り方に関する企画立案機能を厚労省から抜出し、内閣府に社会保障制度の企 画立案を担当する部局を新たに設けるべきである。」
など、役所(厚労省)主体の会議体では絶対に発想として出てこないような根本的な議論からスタートしています。
また、私のFP実務でも良く感じている「所得」(若年層よりも高齢者の方が豊かな生活をしている現状)に関する概念も
「現在、社会保障制度における「所得」概念はバラバラの状況にある。例えば、医療においては、国保の場合、収入から公的年金等控除や専従者控除、さらには 住民税の基礎控除などが差し引かれて課税標準となるが、組合健保や協会けんぽでは「収入」そのものが課税標準となっている。このことは、年金においても同 様であり、こうした「所得」概念の差異は、国民の間の不公平感を助長するのみならず、制度内、制度間の改革を困難にする要因ともなっており、できる限り是 正していく必要がある。また、「高所得者」、「低所得者」を議論する際の所得概念についても、不動産所得や金融所得を含めた総所得、包括所得の概念の導入 を図っていく必要がある。」
と一概に「収入」だけで社会保障制度について検討することに疑問を呈しています。
より踏み込めば「資産」(ストック)についても議論をしてほしいものです。
結論としては、
政府主導の「社会保障制度改革」にはあまり期待が持てない。
「国会版社会保障制度改革国民会議」は内容が素晴らしいので多くの方に読んで議論してほしい
という事です。
株式会社マネーライフプランニング
代表取締役 小屋 洋一
http://www.mlplanning.co.jp/
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
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