今回はその続き。
韓国の金融サービス業は、その成り立ちから日本の金融サービスのビジネスモデルを模倣しているところが多く、現状においても日本の金融リテールが置かれている状況とそっくりだというのが全体的な印象です。
例えば、生命保険などもあくまで俗説ではありますが、戦後に戦争で夫を亡くした「未亡人」を多く採用し、GNPと呼ばれる(義理・人情・プレゼント)戦 略で女性が営業職の仕事を担うことで大きく発展してきた様子などは、正に日本をモデルとしたものだと韓国の保険営業の方が発言されていましたので、おそら くそれほど大きく間違ってはいないのでしょう。
他にも、証券業界は(相変わらず)手数料稼ぎの「回転売買」を勧めるしかなく、顧客の利益というものを考えるというレベルにまで達していないという自己評価でした。
この話は、CFPというFP(ファイナンシャルプランナー)の資格の話をしていた時に出てきたお話で、韓国のFP業界では「証券業者」の人でFP資格を取得するということは現在のところなかなか考えづらい状況だという話でした。
つまり、FPとは長期的に顧客の利益になるような行動を考え、促す必要があるのですが、韓国の証券業界では短期的かつ顧客の利益よりも自社の手数料を優先しているためにFPという概念とあまりなじまないと考えられているそうです。
日本の証券業界も行動としては似たようなものですが、それでも(本当は)顧客のためにはFPという概念が必要であるというところまでは否定されているわけでもないので、少しましという程度でしょうか。
さて、先ほどのGAのお話に戻ります。GAは保険も証券も独立したエージェントが金融商品を扱うという、韓国では比較的新しい概念や制度なのですが、現場の人々にお話を伺っているとそこで販売される商品はやはり「保険商品」が大半とのこと。
先週お話をしたIFAという企業でもその売り上げは「保険:証券」で「9:1」程度の比率だというお話でした。
これは長期的な顧客の資産形成という観点から言うと、「保険」よりも「証券」の方が効率的で、手数料も少ないケースが多いのですが
1.顧客が「証券」商品よりも「保険」商品を選ぶ傾向がある
これまでの「証券」業界が先述のような顧客軽視な営業を続けてきた結果「証券」商品そのものに信頼感がないということだと思います。
このような状況も日本と似ているところがあります。
2.GAの手数料が「保険」商品の方が高い
これも日本の状況と瓜二つですが、金融商品としてみた場合には「保険」商品の方が「証券」商品よりもエージェントに対する手数料が高いケースが圧倒的に多いです。
これは逆の視点から言えば「保険」の方が消費(購入)者側にとっては不利なのですが、1の理由などもあり、消費者は「保険」を選んでしまうという結果にもなります。
このような独立系のエージェントが抱える課題(顧客との利益相反関係を含む)や金融業界全体の課題(顧客に信用されるレベルに達していない)というところは日本の金融リテールが長年の間抱えている課題でもありますので、日本も韓国も何とか改善していってほしいものです。
ちなみに、これは余談になりますが、私が従前からメルマガでしつこく書いていた「Fee」と「commission」の話題については、韓国では概念論 としては理解されるものの、実際の現場ベースでは「Fee」というそのものがまだまだ普及しておらず、日本以上に「commission」で動いている状 態でした。
こちらは、過去の米国、英国のレポートを見ていただきたいのですが、その意味で日韓両国とも金融リテールに関しては欧米に大きく後れを取っているという現状が明らかになった視察でした。
株式会社マネーライフプランニング
代表取締役 小屋 洋一
http://www.mlplanning.co.jp/
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