こんにちは、株式会社ZUUの冨田和成です。
既に経済や資産運用に高い関心をお持ちの億近読者の皆様には既知のことかもしれませんが、現在世界中でミャンマー投資への注目が集まっています。しかし、残念ながらミャンマー関連の情報は少なく、また投資可能銘柄のまとめなども余り多くは出回っておりません。
そこで、今回はシンガポールのビジネススクールへの留学時代や、野村バンコクへの赴任時に仕入れたミャンマー関連の情報をもとに、注目集めるミャンマー投資について、
・ミャンマーの概要とその経済的ポテンシャル
・ミャンマーに投資する海外勢の動向、
・国内外の関連銘柄についてのまとめ
上記のまとめをお届けします。
1.現在のミャンマーの状況と概要
もともとミャンマーは豊富な天然資源や人的資源に恵まれ、東南アジアでも最も裕福な国の一つであったと言われています。しかし、第二次大戦後、1948年にイギリスから独立した後の国家・経済運営が上手く行かず、経済的な成長を遂げられずにいました。
また、軍事政権が長く続き、民主化の遅れなどから欧米からの経済制裁を受けてしまったことも大きなマイナスとなります。
しかし、近年、ミャンマーの民主化が進みだし、欧米からの経済制裁も大きく緩和されたことにより、今後の成長への期待が集まっています。
まず、現在のミャンマーの政治動向ですが、2013年3月30日でテイン・セイン政権は発足から2年が経ちました。新政権の動きとして、仏教徒とイスラム教徒の国民和解、および国の民主化に力を入れています。
また経済動向としては、現政権は欧米諸国や周辺諸国との関係強化を進め、国際社会への復帰を進めようとしています。2013年12月には東南アジア競技 大会(SEA Games)が開催予定であり、また、2014年にはASEANの議長国に就任することも決まっています。
2.ミャンマー投資の魅力、その成長ポテンシャル
現在、ミャンマーには以下のような経済的な魅力=成長のポテンシャルがあると言われています。
1)中国・インド・タイなどと国境を接し、「アジア経済回廊」と呼ばれる交通の要衝に位置する。国土は日本の約1.8倍で豊富な天然資源。
2)人口は約6400万人とほぼタイに匹敵し、増加を続ける生産年齢人口によるGDPを押し上げ。
3)人口ボーナスの恩恵と1人当たりGDPの水準から予測される今後の経済発展と消費拡大のポテンシャル。
4)平均年齢も若く、安く質の高い労働力が豊富なことから生産拠点として魅力的。
5)民主化による、欧米中などからの経済措置の緩和による海外マネーの流出期待。
3.進む各国のミャンマー投資と日本企業の動向
ミャンマーへの投資ですが、欧米からは経済制裁が続いたこともあり、中国を初めとするアジア各国が先んじています。
特に、中国の動きは活発であり、中国はミャンマーに対して3つの戦略的な利益の確保を狙っていると言われています。1つ目はエネルギーの調達と安全保障、2つ目はインドへのアクセス、3つ目は国境貿易と国境地域の治安です。
2010年頃までミャンマーへの直接投資の累計額はタイが1位だったのですが、2011年1月末時点の中国からミャンマーへの直接投資の累計額は96億 ドル(約8130億円)で、国・地域別でタイを抜き首位となりました。ミャンマーは中国からインド洋に抜ける軍事的な要所でもあり、中国企業のミャンマー 進出には国家的な意図もあるのではと言われています。
なお、現在日系企業も奮戦しており、首都ネピドーには丸紅、三菱商事など大手7社が拠点を据え、IT、ゼネコン、金融業界も相次いで進出しています。他 に、ヤンゴン市北部近郊のミンガラドン工業団地では婦人服製造のハニーズなどが操業し、王子ホールディングスなども段ボール工場の建設準備を進めていま す。また、スズキは2013年中に小型トラックの生産を開始予定となっています。
4.ミャンマーが抱える課題
以上のように、投資対象として魅力が多いミャンマーですが、いくつかの課題も存在します。
まずは、インフラ面での整備の遅れが目立ちます。2009年のIEA調査では電気普及率はアジアで最低であると報告されました。
他にも都市、港湾等の整備も不十分であり、2005年の数値ですが、国内の道路舗装率も12%と決して高くはありません(日本は2007年の発表で80%)。
また残念ながら新政権も安定しているとは言えず、政治的な不安もつきまといます。現在ミャンマーには130を超える少数民族が存在し、武装勢力による反政府運動も長年に渡って行われてきました。
例えば、1949年にミャンマーの少数民族カレン族が蜂起を起こしてから、60年以上も内戦が続いています(これは世界で最も長い民族紛争になります)
ただ上記のうち、インフラ整備の遅れは今後のインフラ需要が大きいということでもあり、新たなビジネスチャンスとも取れるかもしれませんね。
5.ミャンマー進出に力を入れている企業(ミャンマー関連銘柄)
最後に、ミャンマーへの進出や投資に力を入れているミャンマー関連銘柄のまとめをお届けします。
まず、海外企業としては、ホテル運営/高速道路運営/セメント生産/インフラ運営 不動産会社/食品メーカーなどの分野が注目です。
参考銘柄として2つあげさせて頂きます(カッコ内はブルームバーグコード)
1)ラチャブリ・エレクトリシティ(RATCH)
タイの大手発電会社。水資源の豊富な隣国ラオスに水力発電所を建設し、経済発展とともに慢性的な電力不足に悩むタイに電力を供給。ミャンマーで発電所建設を視野に入れている。
2)ヨマ・ストラテジックHD(YOMA)
ミャンマーおよび中国において不動産開発、土地売却管理、土地や建物に関連したサービス、民間住宅不動産販売に従事するほか、農業、車のディーラーをてがけている。持ち株会社をシンガポール証券取引所に上場している。
また、その他の海外系のミャンマー関連銘柄には以下のようなものがあります。
・セントラルプラザホテル(CENTL:TB)
ホテル運営/タイ企業/タイ上場
・バンコク・エキスプレスウェイ(BECL:TB)
高速道路運営/タイ企業/タイ上場
・サイアム・セント・ピーシーエル(SCC:TB)
セメント生産/タイ企業/タイ上場
・イタリアン・タイ デベロップメント(ITD:TB)
インフラ建設/タイ企業/タイ上場
・バンコク・ドゥシット・メディカル・サービス(BGH)
病院経営/タイ企業/タイ上場
次に、関連する日本株のまとめをお届けします。
◯空輸関連
・ANAホールディングス(9202)
国内線首位、国際線2位、アジア軸に拡大。エアアジア合弁や関空拠点のピーチで格安航空参入。
◯取引所開設支援
・大和証券グループ本社(8601)
総合証券2位。12年4月に傘下2証券会社を統合。海外拠点の業務見直し。大幅に人員削減。
・日本取引所グループ(8697)
東京証券取引所、大阪証券取引所が2013年1月に統合し誕生。海外取引所との提携を積極化。
◯農業関連
・クボタ(6326)
農業機械、鋳鉄管とも国内トップ。建機、エンジンにも地盤。環境プラントは民需、海外を強化。
◯インフラ、プラント、商社関連
・千代田化工建設(6366)
総合エンジン大手、三菱商事系。天然ガス液化施設(LNGプラント)では日揮と世界首位を争う。
・電源開発(9513)
2004年に政府が民営化で株放出、電力卸が主。電源は石炭火力と水力中心、大間原発の建設再開。
・日立製作所(6501)
総合電機・重電首位で事業広範囲。総合路線見直し、インフラ系重視の戦略に。海外事業を拡大。
・伊藤忠商事(8001)
総合商社大手。非財閥系の雄。衣料や中国ビジネス強い。傘下にファミリーマート等の有力企業多数。
・三井物産(8031)
三菱商事と並ぶ総合商社の雄。鉄鉱石、原油の生産権益量は商社首位。インフラ等にも強み。
・丸紅(8002)
業界5位の総合商社。紙パルプ、穀物取扱高で首位。プラントや電力等でも強み。
◯生産拠点としてミャンマーを活用
・ファーストリテイリング(9983)
世界4位のSPA大手。「ユニクロ」を世界展開。「ジーユー」「セオリー」も運営する。
・旭化成(3407)
1922年創業の総合化学企業。化成品や繊維、住宅、建材、電子部材、医薬・医療など多様な事業分野を持つ。
・ハニーズ(2792)
10~30代向けレディスカジュアル・服飾雑貨の製造小売り。SC中心に展開。中国出店を強化している。
・味の素(2802)
調味料国内最大手。アミノ酸技術で医薬、飼料等多角化。海外で家庭用食品拡大。M&Aに意欲的。
・伊藤園(2593)
茶葉製品・緑茶飲料最大手。傘下にタリーズコーヒーを持つ。
・いすゞ自動車(7202)
国内トラック製造販売大手。海外販売に強み。
以上、ミャンマー投資の概要についてお伝えました。
お役にたった所があれば幸いです。引き続き宜しくお願い致します。
冨田和成
株式会社ZUU 代表取締役社長兼CEO
冨田和成プロフィール
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
既に経済や資産運用に高い関心をお持ちの億近読者の皆様には既知のことかもしれませんが、現在世界中でミャンマー投資への注目が集まっています。しかし、残念ながらミャンマー関連の情報は少なく、また投資可能銘柄のまとめなども余り多くは出回っておりません。
そこで、今回はシンガポールのビジネススクールへの留学時代や、野村バンコクへの赴任時に仕入れたミャンマー関連の情報をもとに、注目集めるミャンマー投資について、
・ミャンマーの概要とその経済的ポテンシャル
・ミャンマーに投資する海外勢の動向、
・国内外の関連銘柄についてのまとめ
上記のまとめをお届けします。
1.現在のミャンマーの状況と概要
もともとミャンマーは豊富な天然資源や人的資源に恵まれ、東南アジアでも最も裕福な国の一つであったと言われています。しかし、第二次大戦後、1948年にイギリスから独立した後の国家・経済運営が上手く行かず、経済的な成長を遂げられずにいました。
また、軍事政権が長く続き、民主化の遅れなどから欧米からの経済制裁を受けてしまったことも大きなマイナスとなります。
しかし、近年、ミャンマーの民主化が進みだし、欧米からの経済制裁も大きく緩和されたことにより、今後の成長への期待が集まっています。
まず、現在のミャンマーの政治動向ですが、2013年3月30日でテイン・セイン政権は発足から2年が経ちました。新政権の動きとして、仏教徒とイスラム教徒の国民和解、および国の民主化に力を入れています。
また経済動向としては、現政権は欧米諸国や周辺諸国との関係強化を進め、国際社会への復帰を進めようとしています。2013年12月には東南アジア競技 大会(SEA Games)が開催予定であり、また、2014年にはASEANの議長国に就任することも決まっています。
2.ミャンマー投資の魅力、その成長ポテンシャル
現在、ミャンマーには以下のような経済的な魅力=成長のポテンシャルがあると言われています。
1)中国・インド・タイなどと国境を接し、「アジア経済回廊」と呼ばれる交通の要衝に位置する。国土は日本の約1.8倍で豊富な天然資源。
2)人口は約6400万人とほぼタイに匹敵し、増加を続ける生産年齢人口によるGDPを押し上げ。
3)人口ボーナスの恩恵と1人当たりGDPの水準から予測される今後の経済発展と消費拡大のポテンシャル。
4)平均年齢も若く、安く質の高い労働力が豊富なことから生産拠点として魅力的。
5)民主化による、欧米中などからの経済措置の緩和による海外マネーの流出期待。
3.進む各国のミャンマー投資と日本企業の動向
ミャンマーへの投資ですが、欧米からは経済制裁が続いたこともあり、中国を初めとするアジア各国が先んじています。
特に、中国の動きは活発であり、中国はミャンマーに対して3つの戦略的な利益の確保を狙っていると言われています。1つ目はエネルギーの調達と安全保障、2つ目はインドへのアクセス、3つ目は国境貿易と国境地域の治安です。
2010年頃までミャンマーへの直接投資の累計額はタイが1位だったのですが、2011年1月末時点の中国からミャンマーへの直接投資の累計額は96億 ドル(約8130億円)で、国・地域別でタイを抜き首位となりました。ミャンマーは中国からインド洋に抜ける軍事的な要所でもあり、中国企業のミャンマー 進出には国家的な意図もあるのではと言われています。
なお、現在日系企業も奮戦しており、首都ネピドーには丸紅、三菱商事など大手7社が拠点を据え、IT、ゼネコン、金融業界も相次いで進出しています。他 に、ヤンゴン市北部近郊のミンガラドン工業団地では婦人服製造のハニーズなどが操業し、王子ホールディングスなども段ボール工場の建設準備を進めていま す。また、スズキは2013年中に小型トラックの生産を開始予定となっています。
4.ミャンマーが抱える課題
以上のように、投資対象として魅力が多いミャンマーですが、いくつかの課題も存在します。
まずは、インフラ面での整備の遅れが目立ちます。2009年のIEA調査では電気普及率はアジアで最低であると報告されました。
他にも都市、港湾等の整備も不十分であり、2005年の数値ですが、国内の道路舗装率も12%と決して高くはありません(日本は2007年の発表で80%)。
また残念ながら新政権も安定しているとは言えず、政治的な不安もつきまといます。現在ミャンマーには130を超える少数民族が存在し、武装勢力による反政府運動も長年に渡って行われてきました。
例えば、1949年にミャンマーの少数民族カレン族が蜂起を起こしてから、60年以上も内戦が続いています(これは世界で最も長い民族紛争になります)
ただ上記のうち、インフラ整備の遅れは今後のインフラ需要が大きいということでもあり、新たなビジネスチャンスとも取れるかもしれませんね。
5.ミャンマー進出に力を入れている企業(ミャンマー関連銘柄)
最後に、ミャンマーへの進出や投資に力を入れているミャンマー関連銘柄のまとめをお届けします。
まず、海外企業としては、ホテル運営/高速道路運営/セメント生産/インフラ運営 不動産会社/食品メーカーなどの分野が注目です。
参考銘柄として2つあげさせて頂きます(カッコ内はブルームバーグコード)
1)ラチャブリ・エレクトリシティ(RATCH)
タイの大手発電会社。水資源の豊富な隣国ラオスに水力発電所を建設し、経済発展とともに慢性的な電力不足に悩むタイに電力を供給。ミャンマーで発電所建設を視野に入れている。
2)ヨマ・ストラテジックHD(YOMA)
ミャンマーおよび中国において不動産開発、土地売却管理、土地や建物に関連したサービス、民間住宅不動産販売に従事するほか、農業、車のディーラーをてがけている。持ち株会社をシンガポール証券取引所に上場している。
また、その他の海外系のミャンマー関連銘柄には以下のようなものがあります。
・セントラルプラザホテル(CENTL:TB)
ホテル運営/タイ企業/タイ上場
・バンコク・エキスプレスウェイ(BECL:TB)
高速道路運営/タイ企業/タイ上場
・サイアム・セント・ピーシーエル(SCC:TB)
セメント生産/タイ企業/タイ上場
・イタリアン・タイ デベロップメント(ITD:TB)
インフラ建設/タイ企業/タイ上場
・バンコク・ドゥシット・メディカル・サービス(BGH)
病院経営/タイ企業/タイ上場
次に、関連する日本株のまとめをお届けします。
◯空輸関連
・ANAホールディングス(9202)
国内線首位、国際線2位、アジア軸に拡大。エアアジア合弁や関空拠点のピーチで格安航空参入。
◯取引所開設支援
・大和証券グループ本社(8601)
総合証券2位。12年4月に傘下2証券会社を統合。海外拠点の業務見直し。大幅に人員削減。
・日本取引所グループ(8697)
東京証券取引所、大阪証券取引所が2013年1月に統合し誕生。海外取引所との提携を積極化。
◯農業関連
・クボタ(6326)
農業機械、鋳鉄管とも国内トップ。建機、エンジンにも地盤。環境プラントは民需、海外を強化。
◯インフラ、プラント、商社関連
・千代田化工建設(6366)
総合エンジン大手、三菱商事系。天然ガス液化施設(LNGプラント)では日揮と世界首位を争う。
・電源開発(9513)
2004年に政府が民営化で株放出、電力卸が主。電源は石炭火力と水力中心、大間原発の建設再開。
・日立製作所(6501)
総合電機・重電首位で事業広範囲。総合路線見直し、インフラ系重視の戦略に。海外事業を拡大。
・伊藤忠商事(8001)
総合商社大手。非財閥系の雄。衣料や中国ビジネス強い。傘下にファミリーマート等の有力企業多数。
・三井物産(8031)
三菱商事と並ぶ総合商社の雄。鉄鉱石、原油の生産権益量は商社首位。インフラ等にも強み。
・丸紅(8002)
業界5位の総合商社。紙パルプ、穀物取扱高で首位。プラントや電力等でも強み。
◯生産拠点としてミャンマーを活用
・ファーストリテイリング(9983)
世界4位のSPA大手。「ユニクロ」を世界展開。「ジーユー」「セオリー」も運営する。
・旭化成(3407)
1922年創業の総合化学企業。化成品や繊維、住宅、建材、電子部材、医薬・医療など多様な事業分野を持つ。
・ハニーズ(2792)
10~30代向けレディスカジュアル・服飾雑貨の製造小売り。SC中心に展開。中国出店を強化している。
・味の素(2802)
調味料国内最大手。アミノ酸技術で医薬、飼料等多角化。海外で家庭用食品拡大。M&Aに意欲的。
・伊藤園(2593)
茶葉製品・緑茶飲料最大手。傘下にタリーズコーヒーを持つ。
・いすゞ自動車(7202)
国内トラック製造販売大手。海外販売に強み。
以上、ミャンマー投資の概要についてお伝えました。
お役にたった所があれば幸いです。引き続き宜しくお願い致します。
冨田和成
株式会社ZUU 代表取締役社長兼CEO
冨田和成プロフィール
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
コメント
コメントはまだありません
コメントを書き込むにはログインしてください。