相場が激しく動いた皐月から水無月へと月変わりとなりました。
 日本の株価指数は、月初から23日高値までの上昇を消し、月足は昨年8月以来久しぶりの陰線で引け、黒田バズーカ発砲時の水準まで往って来いとなり、その後も株価はブレの大きな動きが続いています。

 一方、為替相場も5月22日につけた高値103円74銭から反落が続き、6月3日には米経済指標に反応して、一時98円台をつけました。ローソク足で見 る限り5月のドル・円相場は97円42銭始値の100円47銭終値の陽線引け。昨年10月からの8月連続の月足陽線引けは過去最長記録達成。記録更新は続 くか!?今後の注目になるでしょう。

 5月にドル・円相場が上昇した主な背景は、ドル高です。
 5月中の、対米ドルでの各通貨パフォーマンスをチェックすると、主要通貨は全て下落。トップは11%下落の南アフリカ・ランド、2位が7.7%の豪ド ル、3位は7.2%のニュージーランド・ドルと高金利で好まれていたランドやオセアニア通貨でした。また、新興国通貨では人民元以外、全て下落。その傾向 は以前から出ていて、ドル円やユーロ円相場が5月22日に年初来の高値をつけたのに対して、例えば、豪ドル円相場は4月10日に105円台の年初来高値を すでにつけていました。全般的に、4月中に対円最高値をつけた通貨が多かったのです。

 ドル高の背景には、米国の量的緩和QE3が、これまで市場が想定していたよりも早期に縮小していくのではないかという見方があります。「出口戦略」に市 場が怯えているかのように、良い経済指標が出ると株式が売られる、というパターンが続いています。過去の金融緩和政策変更時の混乱経験を踏まえ、当局は小 出しに市場の反応を試しているのでしょう。出口に怯える相場。そろそろ金融呼吸器を外して、業績で勝負しろよ!と言いたくなりますが、未だ時期尚早なので しょうか。

 ところで、米国債券相場は、ほぼ量的緩和縮小を織り込みつつあります。事前予想よりも悪い経済指標が出ても、利回りは大きく崩れません。米国債10年物 は5月月初の1.63%水準から5月28日には終値ベースの最高利回り2.165%をつけ、直近でも2.15%と、2%台が定着。利回り曲線も期間が長く なるにつれて立つ傾向(金利が将来高くなる)があります。

 一方、日本国債10年物は、黒田バズーカ以来0.6%台水準での推移でしたが、5月10日に0.8%に利回り急騰、23日には1%目前の0.996%を つけ、日銀オペ増額などの話から、その後は落ち着いてはきましたが、0.8%台での推移です。世界的に、主要国の長期債利回りは上昇していますが、日本国 債の場合、3年で2%の物価上昇を目標にしている国の10年債が1%未満という状況はなんとしても不自然です。

 期待インフレ率は長い債券利回りに影響、また、インフレ格差は為替相場に影響を与えます。最近の日米の期待インフレ率を5年物の債券(名目利回りと物価 連動債利回りのブレークイーブン)で比較しますと、(5月31日現在で)日本が1.61%に上昇してきたのに対して米国は年初の2.07%から1.9%ま で下落して、(リーマンショック直後の)2009年の1.84%に近づいてきました。米国の場合、ドル高によるデフレ効果がありそうです。以前にも記した と思いますが、日米の実質金利差の拡大が続けば、ドル円相場を支えていくと思います。

 さて、冒頭でもお伝えしましたが、ドル円相場は記録的な上昇を続けてきましたが、今後も記録更新は達成できるでしょうか。
 そもそも、ドル円相場上昇を支えてきたのは何だったのか?
 まず、安倍政権が異次元の金融政策でマネー量を倍にする、つまり、円の価値を薄める政策をとったこと。政策実施前から、貿易収支の赤字化という体質変化 があったので素地はあり、タイミングもあったのでしょうし、その後も資源輸入によるドル決済が増加してドル買い実需増加があります。また、物価上昇目標 2%を掲げたので、米国とのインフレ格差の縮小により購買力平価でも円安方向に是正される。そして、最近では、米国が予想より早く量的緩和を縮小する思惑 がドル高につながっている。

 このように、ドル高の要因をあげるとキリがないほどですが、
「そんなの、みんな知ってるよ」と言われそうです。
 たしかに、ドル高を語る要素は多いのです。しかし、非の打ちどころがないような美男美女が失敗すると、普通の人以上のサプライズがあったり、理由がよく分からないことや思ってもみなかったことで、相場は大きく動きます。
 背景をならべると、ドル円相場の基調はドル高、は理解しやすいです。ただ、ここまで記録的にエネルギーを費やしてきた相場です。日柄整理の理由は、きっ かけ次第で何でもありかもしれません。相場の遠い目標は120円もありとは思っていますが、エネルギーチャージも、そろそろ必要かもしれません。ポジショ ンに少し余裕も持っておきたいと思います。

 「異次元相場」のエネルギーに、Sell in MayやThis time is differentは危ない、という格言を忘れそうになりましたが、基本は活きていることを再認識した5月でした。

 今月もいろいろありそうですが、心の平衡と常識、そして資金管理に余裕を持って対応していきたいものです。

最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。

*6月4日13時執筆。本号の情報は6月4日のニューヨーク市場の終値レベルを基本的に引用、記載内容は参考情報として記しています。
**安倍総理の第3の矢の発表講演と同時に書きましたが、材料視していません。

式町 みどり拝

(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)