こんにちは。株式会社ZUUの冨田和成です。
本日は日本復活の切り札になりえる、1500兆円もの個人金融資産の話題について触れてみたいと思います。
【日本の財政はギリシャよりも深刻か?】
日本とギリシャの対GDP比債務残高を比較すると、破綻寸前でユーロから救済措置を受け続けているギリシャより、日本の方が深刻なことはご存知の方も多 いと思います。それに加えて、日本の経常収支は長くプラスを維持していましたが、昨年11月から3ヶ月連続で赤字に転落しました(海外子会社からの配当金 が国内に還流した影響などもあり2月・3月は黒字に戻っています)。ここだけを切り取って聞くと、「非常に不味いじゃないか」と思う人も多いかもしれませ ん。しかし、日本がそう簡単には破綻しない明確な理由が存在します。
それは、日本が世界第二位の個人金融資産1500兆円を保有する国であるということです。この1500兆円という莫大な個人金融資産が、日本の債務を支えています。
(※余談ですが、最悪の場合大量に保有している米国債を売却すればいいという理論もあります。また2010年11月に日本の米国債保有高は初めて1兆ドルを突破しています)
【日本の個人金融資産は世界第2位】
私も最初に知ったときは驚きましたが、日本の個人金融資産は1500兆円“も”あるのです。
それにも関わらず、現状は、この資金が有効に活用されていないのは明白でしょう。日本の貯蓄率が世界で見ても圧倒的に高いのは有名な話です。家計の金融資産における預金の割合は、米国が14.5%なのに対し、日本が55.3%となります。
以下に、この現状は非効率な個人金融資産の活用状況についての考察をしていきます。
【いかにして“貯蓄から投資へ”の掛け声は消え去ったか?】
振り返ると、小泉政権時に竹中平蔵氏の掛け声の下、政府は“貯蓄から投資へ”を謳い、世界の株高も背景に2005年の日経平均株価は約4割も上昇しました。
円安(当時ドル円は120円台)も連動し、“大”投資信託ブームが日本に到来します。証券会社はもちろんのこと、銀行の窓口でも投資信託を売ることが銀行員の主要業務となりました。まら、ちょうどこの頃、ゆうちょでも投資信託の販売が始まります。
当時、国債投信のグロソブ(グローバルソブリンオープン)が5兆円超、ピクテのグロイン(グローバルインカムファンド)や野村アセットマネジメントのマイストーリーが2兆円超を集める等、投資信託の大ヒット商品が連発します。
世界中の投資信託運用会社の最大手顧客は日本の証券会社や銀行となりました。なお、これは今も基本的には同じです。
これらの商品の投資先は海外の株式や債券であり、日本国民の本格的な海外投資が始まります。
しかし、小泉-竹中体制が終了し、さらに2008年にはサブプライムローンバブルが弾け、深刻な金融危機が起こります。
その後、政権交代も起りましたが、大震災もありました。このような中で、“貯蓄から投資へ”という合唱は、やがて囀りに変わっていきます。最終的には全く聞こえなくなりました。
それは、別の大きな問題、「財政赤字の深刻化」と「日本国債のデフォルト(日本の財政破綻)リスクの上昇」がより深刻化したためでもあります。
この仕組みについて以下に説明致します。
日本の金融機関(特に銀行)は、預かった顧客の資産の多くを日本国債で運用しています。企業への融資金額が減少し、国債への投資が年々増加しています。 つまり、日本国債の需給を主に支えているのは、間接的に日本国民の資産(特に銀行預金)ということになるのです。もし海外投資の積極化、又は、海外移住が 増加すると、国内資金が海外流出し国債を支えるパイが減少するということに繋がります。そしてその事は財政破綻へのリスクを一層高めることに繋がります。
それゆえに、政府主導による投資推奨の声は掻き消され、逆に、海外資産への課税等がより厳格化されました。
(※武富士事件(海外での資産贈与)納税者勝訴を契機に、海外資産への規制は更に強化されると噂されています。)
アベノミクスで再度“貯蓄から投資へ”が加速することを期待したいと思います。
【ストック⇒フロー⇒ストックの資金循環は日本以外の先進国では当たり前】
ただ、ここまで読まれて、何か違和感を感じられている方も多いでしょう。なぜなら、この問題を根本的に解決するには、国全体の資産が増加する必要がある からです。そうでなければ、国民の資産を食い潰しながら延命治療をしているのと何ら変わりがないことになってしまいます。
経済の世界では、日本や米英等の先進国は“ストック”の国、経済成長豊かな国は“フロー”の国と呼ばれています。ロスチャイルドやロックフェラーなどが 凄いのは、豊富なストックをフローに分散投資することで、資産を有効活用し、長年そのストックを増やし続けてきたことです。その結果、英米に資金を還流さ せ、税収に貢献するという正のサイクルが出来ています。世界でも最大規模の政府系ファンドを持つシンガポールやUAEなども、財閥と国という差はあれど、 根本的な仕組みは一緒同じです。
これこそストック資金の好循環であり、早くから内需経済に危機感を強めた日本以外の先進国が自然に行ってきたことでもあります。
【日本の課題の解決に向けて】
もちろん、この資金循環を日本で行うには課題もあります。それは、ほとんどの日本人が金融教育というものを真っ当に受けた経験がないことです。
一方、米国では小学校から「マネー教育」が始まるのは有名な話でしょう。これは、米国だけの話ではありません。
また、身近な所では、シンガポールやマレーシアもマネー教育に力を入れている国として有名です。
現状の日本だと、金融リテラシーが十分に身に付いているとは言えないため、ただ単に投資するのであれば資産を想定以上に削ってしまう可能性もあります。また、長文化するのでここでは掘り下げませんが、金融機関の人間の金融リテラシーも十分でないという現状があります。
こういった根本的な問題を解決するために、日本人全体の金融リテラシーを引き上げる必要があるのではないでしょうか。また一方で、金融機関の手数料重視体質も併せて見直される必要もあるでしょう。
我々ZUUも、この問題解決の一助となるよう全力を尽くしています。
冨田和成
株式会社ZUU 代表取締役社長兼CEO
冨田和成プロフィール
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関し
ては御自身の責任と判断で願います。)
本日は日本復活の切り札になりえる、1500兆円もの個人金融資産の話題について触れてみたいと思います。
【日本の財政はギリシャよりも深刻か?】
日本とギリシャの対GDP比債務残高を比較すると、破綻寸前でユーロから救済措置を受け続けているギリシャより、日本の方が深刻なことはご存知の方も多 いと思います。それに加えて、日本の経常収支は長くプラスを維持していましたが、昨年11月から3ヶ月連続で赤字に転落しました(海外子会社からの配当金 が国内に還流した影響などもあり2月・3月は黒字に戻っています)。ここだけを切り取って聞くと、「非常に不味いじゃないか」と思う人も多いかもしれませ ん。しかし、日本がそう簡単には破綻しない明確な理由が存在します。
それは、日本が世界第二位の個人金融資産1500兆円を保有する国であるということです。この1500兆円という莫大な個人金融資産が、日本の債務を支えています。
(※余談ですが、最悪の場合大量に保有している米国債を売却すればいいという理論もあります。また2010年11月に日本の米国債保有高は初めて1兆ドルを突破しています)
【日本の個人金融資産は世界第2位】
私も最初に知ったときは驚きましたが、日本の個人金融資産は1500兆円“も”あるのです。
それにも関わらず、現状は、この資金が有効に活用されていないのは明白でしょう。日本の貯蓄率が世界で見ても圧倒的に高いのは有名な話です。家計の金融資産における預金の割合は、米国が14.5%なのに対し、日本が55.3%となります。
以下に、この現状は非効率な個人金融資産の活用状況についての考察をしていきます。
【いかにして“貯蓄から投資へ”の掛け声は消え去ったか?】
振り返ると、小泉政権時に竹中平蔵氏の掛け声の下、政府は“貯蓄から投資へ”を謳い、世界の株高も背景に2005年の日経平均株価は約4割も上昇しました。
円安(当時ドル円は120円台)も連動し、“大”投資信託ブームが日本に到来します。証券会社はもちろんのこと、銀行の窓口でも投資信託を売ることが銀行員の主要業務となりました。まら、ちょうどこの頃、ゆうちょでも投資信託の販売が始まります。
当時、国債投信のグロソブ(グローバルソブリンオープン)が5兆円超、ピクテのグロイン(グローバルインカムファンド)や野村アセットマネジメントのマイストーリーが2兆円超を集める等、投資信託の大ヒット商品が連発します。
世界中の投資信託運用会社の最大手顧客は日本の証券会社や銀行となりました。なお、これは今も基本的には同じです。
これらの商品の投資先は海外の株式や債券であり、日本国民の本格的な海外投資が始まります。
しかし、小泉-竹中体制が終了し、さらに2008年にはサブプライムローンバブルが弾け、深刻な金融危機が起こります。
その後、政権交代も起りましたが、大震災もありました。このような中で、“貯蓄から投資へ”という合唱は、やがて囀りに変わっていきます。最終的には全く聞こえなくなりました。
それは、別の大きな問題、「財政赤字の深刻化」と「日本国債のデフォルト(日本の財政破綻)リスクの上昇」がより深刻化したためでもあります。
この仕組みについて以下に説明致します。
日本の金融機関(特に銀行)は、預かった顧客の資産の多くを日本国債で運用しています。企業への融資金額が減少し、国債への投資が年々増加しています。 つまり、日本国債の需給を主に支えているのは、間接的に日本国民の資産(特に銀行預金)ということになるのです。もし海外投資の積極化、又は、海外移住が 増加すると、国内資金が海外流出し国債を支えるパイが減少するということに繋がります。そしてその事は財政破綻へのリスクを一層高めることに繋がります。
それゆえに、政府主導による投資推奨の声は掻き消され、逆に、海外資産への課税等がより厳格化されました。
(※武富士事件(海外での資産贈与)納税者勝訴を契機に、海外資産への規制は更に強化されると噂されています。)
アベノミクスで再度“貯蓄から投資へ”が加速することを期待したいと思います。
【ストック⇒フロー⇒ストックの資金循環は日本以外の先進国では当たり前】
ただ、ここまで読まれて、何か違和感を感じられている方も多いでしょう。なぜなら、この問題を根本的に解決するには、国全体の資産が増加する必要がある からです。そうでなければ、国民の資産を食い潰しながら延命治療をしているのと何ら変わりがないことになってしまいます。
経済の世界では、日本や米英等の先進国は“ストック”の国、経済成長豊かな国は“フロー”の国と呼ばれています。ロスチャイルドやロックフェラーなどが 凄いのは、豊富なストックをフローに分散投資することで、資産を有効活用し、長年そのストックを増やし続けてきたことです。その結果、英米に資金を還流さ せ、税収に貢献するという正のサイクルが出来ています。世界でも最大規模の政府系ファンドを持つシンガポールやUAEなども、財閥と国という差はあれど、 根本的な仕組みは一緒同じです。
これこそストック資金の好循環であり、早くから内需経済に危機感を強めた日本以外の先進国が自然に行ってきたことでもあります。
【日本の課題の解決に向けて】
もちろん、この資金循環を日本で行うには課題もあります。それは、ほとんどの日本人が金融教育というものを真っ当に受けた経験がないことです。
一方、米国では小学校から「マネー教育」が始まるのは有名な話でしょう。これは、米国だけの話ではありません。
また、身近な所では、シンガポールやマレーシアもマネー教育に力を入れている国として有名です。
現状の日本だと、金融リテラシーが十分に身に付いているとは言えないため、ただ単に投資するのであれば資産を想定以上に削ってしまう可能性もあります。また、長文化するのでここでは掘り下げませんが、金融機関の人間の金融リテラシーも十分でないという現状があります。
こういった根本的な問題を解決するために、日本人全体の金融リテラシーを引き上げる必要があるのではないでしょうか。また一方で、金融機関の手数料重視体質も併せて見直される必要もあるでしょう。
我々ZUUも、この問題解決の一助となるよう全力を尽くしています。
冨田和成
株式会社ZUU 代表取締役社長兼CEO
冨田和成プロフィール
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関し
ては御自身の責任と判断で願います。)
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