アベノミクスで日本の株式市場は活況ですが世界的に見ると不況は続いています。特に欧州と中国の動向が関心の的かと思われます。とりわけ造船業界は受注の急減で業界再編の動きが水面下で続いているように言われています。
 三井造船と川重の統合が検討されているともされますが、その一方で実に凄い決算を発表した企業もあります。

 私の故郷である佐賀県伊万里市に本拠を置く名村造船(7014)です。同社は中堅造船会社としての立ち位置をもっています。伊万里市の風光明媚な湾内に造船所を立地し、人件費の安さもあり韓国には負けないコスト競争力を
有している企業だというのが私の大雑把な知識です。
 その名村造船が先週末に発表した2013年3月期の業績は急激な円安効果を受け期中に修正した予想経常利益130億円を更に上回る144億77百万円で 着地したのです。EPSは165.8円(期中計画は144.9円)、一株配当金18円(8円予想)へと増配を発表。BPSは1126円となりました。

 今期も造船不況の中、増収増益を見込み経常利益は180億円を計画しています。
 しかも為替レートは1ドル=95円を前提にしているようですから、現状の為替レートでは38億円程度の上乗せ要因があることになります(但し為替は変動しますので、注意が必要)。今後更に円安が進めば受注面での競争力が増すことになります。

 同社では既に前期中に2015年度末(2016年3月期末)までの仕事量(つまり3年分)を確保したとしていますが、造船不況下ながら中国や韓国との競 争優位を得て、今後の更なる受注確保が期待されます。今期予想EPSは196.7円。時価620円でのPERは3.15倍という水準。実績PBRは 0.55倍です。
 決算短信をじっくり読めば、同社の戦略がわかります。同社の事業ポートフォリオは新造船が主力ながら素晴らしい構成となっていてそれぞれに事業価値があります。修繕船、機械、鉄構陸機それぞれに黒字化しており、造船ビジネスを下支えしています。

 営業キャッシュフローはマイナスで投資、財務のいずれもがマイナスとはなりましたが期末の現預金は700億円と前期に比べて減少していますが、豊富です。
 現在は大阪単独上場銘柄ながら7月からは東証上場銘柄となります。リーマンショック前の2006年に同社は357万株の第三者割当増資を行っており、その際の株価は950円でした。
 その前の2004年にも629万株の第三者割当増資を600円で行っており、トータルで約70億円の資金調達を行っています。時価620円は昨年秋の安値217円から3倍にはなっていますが時価総額は300億円の水準です。

 この水準をどう見るか、造船不況下での好決算。
 皆さんはどのようにお感じでしょうか?

(炎)

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