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 最近は景気が悪化するとのコメントが増えるとともに、株価が上がったときには円安メリット、下がったときには円高デメリットとの単純なコメントが増えていますが、ここ最近の市場コメントは何となくぼやけています。

 本当にそれほどの景気悪化になるのか?

 円高とはいっても1年前からはまだ10数%の円安ですし、資源高が続くうちは安易に円高に戻るとも思えません。利上げ無しでも円安に進むことも無く・・・。
 今後も金利の引き上げへのプレッシャーが高まるとは言え、せいぜい1%が限度です。例え新年度の企業収益が今期と同程度に留まっても日経平均株価が26,000円で予想PERは12倍強ですが、その割には弱気派が増え、年前半は欧米の景気悪化の影響で株価は下げ易いとのコメントが多いようです。でもこれらは既にある程度見えている事象ですよね。


 もっとも、世界の市場の混乱に拍車をかけているのが欧米の投機マネーです。
 資源に限らず日本の債券や株式も乱高下しています。
 昨年の夏は自分達の金で資源価格を吊り上げ、自分達がバカ高いエネルギーを買わねばならない事態になりました。資源メジャーや兵器産業は笑いが止まらない事でしょうが、その他大多数の国には迷惑千万な話しです。
 今はウクライナ戦争をネタに儲け先を探し回っていますが、日本も中国や台湾と共に気をつけねばいけません。「人命より自分の贅沢優先」の連中ですから。

 批判は多いものの、為替介入も利上げも今のところ日銀の戦略は成功しているようにみえますし、政官の対応が呆れるほど鈍い中でも日銀は頑張っています。黒田総裁が頑張らねば今頃はまだ2万円にも届かなかったのではないでしょうか。
 日本の潜在成長率(足元で約0.6%)と比較すると0.5%でも相当のプレッシャーがあるように感じますし、オーバーナイトのスワップ金利は1%への上昇を織り込んでいました。故にYCCの解除は無いにしても、若干の修正はあるかも、それとも据え置きか、との議論になっていました。


 2年前からの日経平均株価は一時的に30,000円を超えた時期もありましたが方向が定まらないまま、特に昨年は概ね26,000円から28,000円のレンジ相場でしたが、何とも主体性の無い相場で外人投資家次第の様相でした。


 さて、一方の米国株は2021年いっぱいまで上げ続け、22年に入り、利上げの進捗とともに下落してNYダウ平均は一時30,000ドルを割りましたが、現状では昨年高値から1割ほど下げた33,000ドル辺りを推移しています。金利が大きく上がっているにも関わらず底堅いです。

 確かに、GAFAなどの大型ハイテク株の変動は大きかったものの、上がらない日本株に比べて売買高の規模も収益力も、そしてアクティブさも圧倒的な差を感じます。


 この日米の差は何なのか?

 一つには米国では経済の新陳代謝が活発で企業も市場も成長している事。
 もう一つは成長に応じた株主還元(配当など)が大きいことだと思います。
 一方の日本市場は形ばかりの株主還元で資金を貯め込むだけのレガシー企業が多く、且つ時価総額が小さく、成長期待の低い企業も多いために投資家から評価されないという問題を抱えています。

 こんな中で、来年から改正されるNISAについては想定以上の改善です。
 仮に最大で今後5年間で1,000万口座に1,800万円が入るとするなら総額で180兆円もの資金がNISAに流れ込む計算になります。
 以前はNISA拡大に慎重だった銀行勢も品揃えが増えたことと、収益基盤を増やさねばならなくなった事情により抵抗勢力から推進勢力に変わった模様です。
 最近2人の友人から続けて「銀行からNISA口座を作れと矢の催促だけど、どうしたらよい?」と言う相談を受けました。もちろんメガ銀での口座開設は避けるよう伝えました(笑)。

 証券を傘下に収めた大手銀行が攻勢を強めている様子ですが、政官財(財=銀行)の利害が一致したからこそNISA拡大に繋がったという好例です。
 お寒い好例ですが。

 銀行も運用商品で稼がねばならない時代となり、これからは投資環境の整備が進む可能性が出てきましたが、怪しい金融商品には気をつけましょう。


 政策決定会合では日銀は動きませんでした。昨日は一時的な買戻しで上げただけで大した出来高ではありませんでした。
 これからの数か月間は欧米のインフレ動向と金融政策、そして資源価格の動向次第で相場の方向性が決まっていくと思われますが、当面は日米の金利差(幅)に変化は出辛く、資源価格も横ばいと考えれば、今月下旬からの四半期
開示も含め、徐々に不透明感が薄れていく(案外相場は強い)と言ったイメージでおります。世間の予想もふらふらとしていますので、漠然とですが。

 次にどのようなショックがあるのかは予見できませんが、今のところリーマンショックのような劇的な変化は予想できませんから、この面からは日本はもちろん世界的にも割安な投資先を探し、タイミングを待つのに面白い時期と考えています。


 余談ですが、東日本大震災以来、脱炭素エネルギーへの転換や送電網整備などの逆風に耐えてきた電力業界(=原子力ムラ既得権)もロシアのお陰で息を吹き返しました。
 大手メディアも(政府主導で?)「電力足りない!」の大合唱です。本当はこの10年間の既得権グループの抵抗が根本原因ですが、原子力ムラも防衛ムラもロシアには足を向けて寝られません(苦笑)。


 いよいよ日本から資金が逃げ出さないよう、日本株に投資したくなる仕組み作りが求められます。既得権にしがみ付くジーサン達には期待できませんが、まずは自国市場が成長する態勢が整えられない限り「貯蓄から投資へ」は実現不可能では無いかと思います。

 現在の個人の株主構成は60代、70代以上に偏り過ぎています。
 若者が日本株を避けているようでは将来に期待を持てません。


(街のコンサルタント)


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