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長期投資の入門 第2回 上場企業の永続性について

2022/08/09 15:01 投稿

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【億の近道の読者のみなさまへ】


 みなさま、こんにちは。
 セゾン投信の共創日本ファンドのポートフォリオマネジャーの山本 潤です。

 8月に入り猛暑が続いております。どうかお体をご自愛ください。

 長期投資の入門ということで、2回目となります。

 7月30日の共創日本会議はハイブリッド開催でした。オンラインでは200
名を超える方々が申し込みがあり大盛況でした。
 この場を借りて御礼申し上げます。
 前半部分で音声が小さくてみなさまにはご迷惑をおかけしました。

 次回はこのようなことがないようにいたします。


【上場企業の永続性について】


 株式会社にはあらかじめ決められた寿命はありません。
 適切に経営がなされているならば企業は永遠に存続することが可能です。
 日本では株式会社は明治時代に導入されました。ですから日本の株式会社の歴史は百数十年程度に過ぎません。ただ、演繹的に考えて、営業キャッシュフロー(事業からの収益)の範囲に支出を抑えれば企業活動は継続できます。
 手堅く事業を行うことは永続の前提条件となると思うのです。
 キャッシュフローの範囲内で支出をコントロールする経営をキャッシュフロー経営と呼びます。


 組織の永続性について少し考えていきたいと思います。
 企業が永続するならば、配当余力も永続するでしょう。
 それは今現在の主力事業が必ずしも永続することは必要とはされません。
 事業の内容は時代とともに移り変わってもよいのです。

 企業には経営者が存在します。
 社会が変化すればその変化に応じて事業内容を少しずつ変化させることができるのです。開業何百年の薬屋さんは江戸時代の薬をずっと現代まで何も変えないで売り続けているわけではありません。適切に運営されている企業には寿命はありません。

 時代と共に上場企業の営む事業内容は進化し発展していくものなのです。
 そしていつの時代にも零細な個人経営企業が多数あります。個人経営では経営者に寿命がくれば跡継ぎがいなければ会社は畳まれてしまいます。
 一方で上場企業は社長には任期があり、次世代に経営を引き継いでいくことができます。
 経営者は時代の先を読むことができ、必要であれば時代に合わせて事業内容を意図的に変えていくこともできます。大量の資金を投じて新事業を買収して一定レベルの規模まで新ビジネスを引き上げることもできます。場合によってはライバル企業を買収してしまうこともできます。
 上場企業は過去の富の蓄積があり、財務内容も良好な場合もあります。
 保有現金を使って新しい事業を購入できますし、人材を雇用して新事業を立ち上げることもできます。
 相対的に中小企業に比べると人材によい条件が出せるのが大企業の強みです。


 永続のために企業にとっては適切な変化が大切ではないでしょうか。
 よい変化ができる企業は生き残るでしょう。
 人々の需要や社会的なニーズが先細りになるような成熟商品があればその取扱いを意図的に小さくしていく。そして、成長が期待される商品を新しく開発していく。できるだけ将来性の高い事業を立ち上げ、優秀な人材を将来性の高い新規事業へとシフトさせる。そのような努力を上場企業は行っています。


 よく出される過去の事例が富士フイルムでしょう。
 銀塩カメラのフイルム事業を主力していた彼らは残念なことにフイルムカメラはデジタルカメラやその後スマホの影響もあってほぼ消滅してしまった。
 主力商品の切り替えなしでは生き残ることが難しかったのです。
 しかし先を見越してフイルム事業を縮小する一方で光学フイルムや事務機に事業をシフトしていきました。次に事務機がペーパーレスで時代遅れになるとみるとライフサイエンスなどの新しい成長分野へ経営資源を傾斜していきました。

 もちろん、生き延びることができたからといって株は買いにはなりません。
 それほど単純なものではありません。
 株式投資では銘柄を慎重に選ぶ必要があります。その際、企業としての永続性も評価の基準のひとつくらいにはなるということです。


 株式として投資対象になりえるということと企業が永続的であるということは違う事柄です。富士フイルムを例に出したのは単に変化した会社のひとつとして取り上げたにすぎません。
 ただ、意味がある規模で企業が収益を維持する限り、いつか、インカムゲインの積み上げで初期投資額を超えることもできるでしょう。株式の長期投資では累計のインカムゲインというものが、資産形成のベースになるのだとわたしは個人的に思います。ただし、ある程度の時間はかかりますが。


 このように、社会の変化に対応することで企業は業績の衰退を抑えたり、あるいは維持したり、もしくは成長させることができます。変化に適切に対応できれば配当も継続的に出すことができるかもしれません。
 投資家から見れば適切に変化していく企業は金の卵を毎日生む「幸せの青い鳥」となりうるのです。金の卵(配当)を永続的に産み続けてくれる可能性があるからです。


 個人の事業行為はプロ野球選手にしろ、オリンピアンにしろ、小説家にしろ、ピアニストにしろ、生命体としての寿命を超えることはできません。しかしながら、個人を離れるならば、名門といわれる学校やチームは組織を永続することができています。世界最古級の大学と呼ばれるオックスフォード大学はその起源を11世紀に遡ることができるそうです。住友金属鉱山のHPには「創業430年以上」とありました。家業として脈々と百年以上営む組織体は多数、存在しています。(もちろん、ベートーベンの楽曲は本人がいなくなってからもキャッシュフローを生んでいますが。)


 大きな会社の組織では、次世代のリーダーの育成も重要な経営課題です。
 日本の大企業の多くはグローバル規模で世界各国に次世代リーダーを集めた人材プールを設置しています。その人材プールの中からまずは小さなプロジェクトを次世代リーダーに任せてビジネスの練習を積ませるのです。人望を備えた若手が徐々に実績を積んで取締役へと抜擢されていくのです。

 こうした次世代の若手の育成状況を見つめることも投資にとっては有効なのです。


(つづく)

山本 潤 セゾン投信共創日本ファンド ポートフォリオマネージャー


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