有料メルマガ・石川臨太郎の「生涯パートナー銘柄の研究」の過去配信ライブラリ「銘柄研究」「コラム」のうち、コラムの一部を掲載いたします。
自立した投資家、石川臨太郎のコンテンツをお楽しみ下さい。
なお、内容は執筆当時の背景に基づいており、現在の状況と必ずしも一致しないことを予めご了承下さい。
==「大型株がリバウンドする可能性が高いと考えて分散投資を再開」==
(有料メルマガ第490回・2018/07/17配信号)
※注 2018年7月現在の内容ですので留意下さい。
【前略】
私は過去に株式投資で大きく稼いだ投資家の教えを参考にすることが多いです。
昭和電工と東海カーボンのトレードをするときも、福沢桃介の次の2つの教えを常に意識するようにしていました。
『順波には乗り、逆波は逃げよ。成功は機を見るに敏なるにある。』
『人間の成功に、運、鈍、根という三つの資格が数えられる。その中でも、事業経営に一番必要なものは根すなわち執着である。
その反対に、株式相場に執着はもっとも禁物だ。いつでも見切りよく転換することを心がけて、一度に全部をすくいとることをしてはいけない。
シナの五祖禅師が”福不可受尽”といったのはこのことで、福をあまして八分に甘んじ、いさぎよく見切るところに転換の妙がある。』
今日のコラムでは、もう少し詳しく福沢桃介の相場に対する考え方をご紹介しようと思います。
福沢桃介は福沢諭吉の婿養子です。
相場師として日露戦争後の株式投機で財を成し、その後実業界に転じました。
主として電気事業に関与し、名古屋電灯を買収して社長となり木曽川などで水力開発を手がけ、後に大手電力会社大同電力の初代社長となりました。
「諸君が金持ちにならんとして、株の売買をせぬのはウソだ。
しかし株式の売買について、ここにひとつ諸君に注意しておかなければならぬものがある。余人はともあれ、諸君が株の売買をするには利子を標準とすることを希望する。具体的に言えば、定期預金の利子はつねに五分より七分の間を往来している。五分以下となり、七分以上となったことはまず近来においてない。市中の金融が大緩慢で貸付日日歩が1銭6厘以下に下落したときでも、預金の利子は五分であった。また金融が大逼迫で貸付日歩が3銭、
4銭に上がったときでも、預金の利子は7分より上がらなかった。この預金の利子を標準として売買することだ。」
配当利回りが、定期預金利子より上回れば、「買い」、下回れば「売り」だという事だと私は理解しました。
また桃介は次のようにも述べて、財務状態がよい銘柄を薦めています。
「この株は安全か否かということを考えなければならぬ。郵船、鐘紡、炭鉱、東鉄というような、なるべく基礎の強固なものを選び、基礎の薄弱なものはやらぬがよい。たとえ一時配当が多くとも、基礎の薄弱な会社は、会社全体がつぶれてしまえば大損になる。比較的強固だと思っても、なお不安だと思ったら、金を銀行に預けて寝ておればよい。」
あとレバレッジ投資を厳禁しています。
「これは諸君の各自によって定まる問題であるから、具体的にこれこれというわけには行かぬが、要するに、これに全力をあげてはいかぬ。借金してかかるのはもちろんいかぬ」
「日露戦争後において株式の売買に失敗し、事業で倒れたものの多くは銀行から金を借りた人である。」
「人間の成功に、運、鈍、根という三つの資格が数えられる。その中でも、事業経営に一番必要なものは根すなわち執着である。その反対に、株式相場に執着はもっとも禁物だ。いつでも見切りよく転換することを心がけて、一度に全部をすくいとることをしてはいけない。シナの五祖禅師が”福不可受尽”といったのはこのことで、福をあまして八分に甘んじ、いさぎよく見切るところに転換の妙がある。」
欲をかきすぎないで腹八分目で止めておけということです。
このような運用成績が良くなって来ている時に、迷いが出た時に私が利用しているのがミニマックス・リグレット基準を採用して自分の性格あわせて作った投資ルールです。
「ミニマックス・リグレット基準」というのは、将来がどうなるか不確実なとき、またはものごとが裏目に出たときに、自分の後悔が最も少ないような選択をする基準をいいます。
人間は、ものごとが裏目に出たときのダメージに弱い生きものです。
そして裏目に出るという可能性にすら目をつぶりがちです。
そこで私は自分の性格を考えて、ミニマックス・リグレット基準を採用して投資ルールを作るようになりました。
利益が自分が期待している程度(または期待以上に)出ているとき、予想される出来事、今回で言えば日本の衆議院選挙というイベント、そして企業の業績が良さそうだという状況で株価が上に行く可能性も大きいけれど、あまりにも好調なので何か起きるのではないかと不安が大きくなりすぎている。
このように迷った時、どのような投資行動を取るべきか。
そんなときには、迷ったら半分だけ売って利益を確定しておく。
それが『迷ったら半分』です。
株価は投資家の欲と恐怖によって乱高下します。株に投資して買い値より株価が下がっても、持ち続けたら株価が買い値より上昇することもよく起こります。その反対も起こります。
つまり損したか利益を上げられたかは、その株を売るまでわかりません。
株式市場に不安が少ない、しかし毎年起きている大きな調整が年末までに起きたら、いまの利益が幻と消える可能性もある。
私はキャッシュを証券会社の外にシフトしたことで、自分が予想もしなかったリスクが思わぬところから襲い掛かってきたとしても対応できる準備ができているので、有事が発生しても冷静に対応できると考えています。
イギリスの国民投票でEU離脱が選択されるとは予想もしませんでしたし、トランプ氏が米国大統領に選ばれることも予想できませんでした。
常々、このコラムで書いてきたように、2017年の9月まで中国の不動産バブルが破裂して、経済的に苦境になることを心配していました。
いまでも北朝鮮有事の再発、トランプ大統領の過激な行動など心配事の種は尽きません。
しかし、すでに多くの投資家が知っている事態で発生する株式市場の下落より、いま予想されていない危機が突然に発生して起こる暴落のほうが大きくなる可能性も存在します。大地震がいつ襲ってくるかわかりません。台風の勢力も強くなり、豪雨災害がいつ降りかかるか分からないということも考えておく必要が出てきました。
つまり株式などのリスク資産に投資する時は、
『まだ誰も気がつかずに知らないリスクが、いつ起こっても不思議ではない。』
ということを覚悟したうえで、「リスクは避けるものではなく管理するものである」と考えて、リスクが起きた時に助けになるセーフティ・ネットも計画的に準備しながら、投資を行っていくことが大切なことだと考えています。
購読者のみなさんは、自分が選択して投資した企業に対して、どのくらいの確信をもって「この企業に投資しつづけていくことは正解だ」と感じているでしょうか。
そして、その確信の根拠は何でしょうか。
その確信が自分で調べた企業の持つファンダメンタルズから来ているなら、その企業のファンダメンタルズを変える出来事が起こらなければ、売る必要は無いと思います。
もしチャートで株価の動きから得ている確信ならば、自分の予想と違う動きになったときには損切りすることになろうとも、売って逃げる必要があると思っています。
私は企業のファンダメンタルズを調べて納得して投資するタイプの投資家なので、自分の投資判断の根拠が明確なほうですが、いま市場でついている株価(=他人の評価)の動きで迷いは生じます。
【中略】
怖いのは、病気になったり、家族との関係が悪化して、安心して社会生活をおくることさえできなくなるリスクも増えることです。
だから私は、その株に投資した根拠は常に忘れないようにしたいと思っていますが、人間は迷う動物だということも忘れないようにしています。
株価を上げたり下げたりする原因は複雑に絡み合い、単純に見極めることはできません。その為に投資家は葛藤し、大きなストレスも受けます。
一つの企業の株に投資している金額が大きくなればなるほど、その株が下げている時のストレスは大きくなります。だからストレスが大きくなりすぎたと感じたら、確信をもって買い増してきた株でも、少し投資額を減らして、ストレスを減らす必要があると考えています。損切りでも、利食いでも、とにかく投資株数を減らします。
面白いというか悔しいというか、持ち株数を減らした途端に、その企業の株価が跳ねあがることが良く起こります。
東海カーボンの株価が、まさにそれです。
私の場合は、いまではそのようなことが起きても、悔しがることは少なくなりました。株式投資のストレスを溜めこみすぎると、株式投資より大切な自分の家庭生活や社会生活で失敗をする確率が高くなるからです。
この株式投資での葛藤を経験して、迷いながら投資行動を実行することで、つまり成功したり、失敗したりするプロセスを繰り返すことで、投資家の投資力は育っていきます。
【後略】
経済的独立ワクワク!サポーター 石川臨太郎
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