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IPOのパターン

2022/06/08 14:31 投稿

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 東証市場改革で4月から3つの市場がスタートしました。発足してこれまではやや頭の思い展開が続いてきましたが、本日あたりはようやく明るくなってきたとの印象です。

 東証1部からの流れを受けたプライム市場銘柄が現在1837、東証1部、東証2部、JASDAQからの流れを受けたスタンダード市場銘柄は1457、マザーズから鞍替えしたグロース銘柄467銘柄の合計3761銘柄が取引されています。地方単独上場銘柄まで含めると3800ほどの銘柄が上場して皆様の目に触れていることになります。

 これら3市場の時価総額合計は本日現在723兆円となっており、これはバブルのピーク時とほぼ肩を並べていますが、なかなかこの水準を大きく抜けない中で新たな成長企業の登場を待っている状況です。1銘柄当たりの時価総額が平均して1900億円余りとなる中で、年間100銘柄前後が新たに株式市場に株式公開を果たし成長を目指そうとしていることになります。


 米国ではテスラやアップルなどが時価総額100兆円を超え、このほか多くの巨大なIT企業がダイナミックな事業活動を続けています。

 日本からはトヨタ(7203)やソニー(6758)、キーエンス(6861)などのモノづくり企業が上位についていますが、これらに続く企業の成長が大いに期待されます。

 時価総額が国家全体の力を示すとすれば創業後に一定期間の中でビジネスモデルの確立に成功した新成長企業や試行錯誤の上に成長の入り口に立った企業などが相次いでIPOを果たし日本経済や日本国を引っ張っていくことが重要です。

 ビジネスは創業期から先行投資期を経て成長発展期を迎え成熟期を経て企業によっては衰退期を迎える経緯を辿ります。国内市場だけでは衰退する企業も海外市場での発展を迎えて長期成長を果たしている日本企業も多いかと思います。

 創業期から一定の期間を経てIPOに向かい成長の登龍門をくぐる企業への期待が高まるのがIPO市場の面白さではありますが、そこでは未知数の世界で評価が分かれることが多く、株価の変動に一喜一憂する投資家はせっかくの長期リターンを逃すことも往々にしてあります。

 ファーストRやソフトバンクGなど個性ある成長企業を上場時に見出して投資した投資家はその後どうなったのでしょうか。
 かつては7-11ジャパンに投資した北陸の有名個人投資家が話題を集めましたが黙ってBUY&HOLDして資産を何倍にもできた投資家はそれぞれのオーナー以外には少ないとも言えます。


 企業も人も過去から現在があり未来に向かう過程にある訳ですが、創業後の志高い企業がIPOに踏み切り社会的な意義をもって事業活動した結果、企業成長を果たして企業価値を高める流れを数多くつくっていくことが株式市場というインフラにとっては重要です。
 IPO後は様々な波にもまれ、時に思わぬ高波にのみ込まれそうなこともありますが、そうした苦難を経て投資家にも多大なリターンがもたらされる時がやってきます。

 IPO時の企業にはいくつかのパターンがあります。
 創業3年程度でIPOに至ったケースなどは成長の加速をさせる良いチャンスとなりますが、いずれの企業も創業後10年以内にIPOにまでこぎつけられるのは難しいという印象です。

 創業者が学生ベンチャーで鳴り物入りで2011年にIPOを果たしたリブセンス(6054・村上社長)も創業はその5年前ですし、10年程度のビジネス経験がないと投資家にとっては厳しい結果を見ることになります。
 転職口コミ求人サイトを運営するリブセンスも上場後の成長期待空しくコロナ禍も影響してか前期まで2期連続の赤字を余儀なくされ、今期も赤字を見込むなど停滞が続いています。リブセンスの場合、決して上場ゴールなどではなく成長指向の筈ですからビジネスモデルの改善を図ることで復活を期待したいところです。

 一方で直近10年程度のIPO企業の事例としてその後の成長が顕著なのはエラン(6099)という松本市に本社を置く地方企業です。同社は全国の病院や介護関連施設に身の回り品をレンタルする「CSセット」を提供するビジネスで急成長。設立から7年後の2014年11月にIPO(公開価格1750円・時価総額64億円)した同社は上場時の経常利益4.3億円が前期実績経常利益が28.2億円に拡大し今期も30億円(1Qは9.2億円)を見込んでいます。
 上場後4回の株式2分割を実施し時価1039円は時価総額が600億円にもなっています。およそ時価総額が10倍に膨らんだ計算になります。
 上場後2年程度は評価が低い時期が続きましたが、2017年以降は業績の順調な拡大とともに株高が続いてきました。上場時の従業員数が143名で現在は連結で320名。2倍強の増員に対して売上は75億円から320億円と4倍余りとなっていますから生産性が上がってきた結果の業績向上です。


 こうした好結果をもたらしたIPOは他にも見出せますが、そのためには投資家各位が未来を読み取る眼を養う必要があります。

 IPOのパターンとしては創業して5年から15年程度の企業の成長を目指したものが理想かと言えますが、創業して何十年も経過して既に成熟したと見られる企業でもIPOに至るケースがあり、それがむしろその後の業績拡大につながり投資家にリターンをもたらしているケースもあります。

 1994年に設立され2017年3月にマザーズ市場にIPOした関東・北海道を地盤とするエレベーターの保守点検サービスをビジネスとするジャパンエレベーターサービスHD(6544)は上場時は地味な印象で公開価格550円で上場時の経常利益が5.3億円で公開価格ベースの時価総額は55億円に留まっていたものの、上場翌期から業績が急速に伸び始め、経常利益は13億円⇒20億円⇒27億円⇒37億円⇒42億円⇒今期47億円予想と順調に拡大し、その結果、時価総額は現在1350億円を超えるに至っています。
 上場後は株式2分割を2回実施し4倍に株数は増加し、経常利益が8.9倍となる一方で時価総額は24倍となるまでになっています。

 最近、荷物用のエレベーター設置メンテナンス会社である守谷輸送機(6226・時価669円)がスタンダード市場にIPOしてきましたが、地味な印象なのか評価がなかなか高まずに推移していますが、こちらも保守メンテナン
スの比重が高まっているようで、時価総額115億円(前期実績の経常利益18億円で比較すると出遅れ感があります。
 果たして未来のビジネス発展はあるのか?その答えは数年先にわかるでしょう。


 過去10年タームのIPO銘柄には上場ゴールのような印象の企業も散見されますが、意外にも成長の芽を持つ企業も存在するかも知れません。

 中にはコロナ禍で影響を受けて停滞を余儀なくされている企業もありそうで、一過性の停滞局面を嫌っての売りを浴びせる短期投資家から基本的な成長モデルを見極めながら長期スタンスで投資する投資家本来の姿に戻ることが再び成果を高めてくれるポイントになるのかと思われます。


(炎)


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