皆様こんにちは、投資家Sと申します。

 創業(1964年)半世紀を超える投資日報社が、毎週月曜・木曜に発行を行っております、”投資日報α”(月曜版)に”投資家Sの今週の注目銘柄”を連載しております。


 先日、千葉県浦安市にあるディズニーランドの近くまで行きました。

 現在首都圏は緊急事態宣言中となっており、ディズニーランド・ディズニーシーは時短営業・入場者制限を実施して営業を継続しております。上記の運営はオリエンタルランド(以下、OLC)【4661】が行っておりますが、近くまで行くと同社の現在の経営状況が厳しく、赤字となる理由が良く分かります。

 まず、テーマパークの周りを歩いている人の数が極端に少ない、最寄り駅となる舞浜駅周辺も人が少ない、さらに駐車場がガラガラです。

 一方で、舞浜駅に隣接している商業施設イクスピアリ内にあるディズニーストアーおよび、お土産を売っているボン・ヴォヤージュは人で溢れかえっておりました。

 この状況を見て考えたのは、下記の通りです。

1)ディズニー好きの方は、入場制限が解除されたら両テーマパークに行きたい
2)せっかく来たのだから、せめてお土産くらいは買いたい
3)コロナ後のディズニーランド需要はとんでもない事になる可能性大

 OLCの株価は、コロナ禍で大きな影響を受けたにも関わらず本年2月に上場来高値を更新、現在もコロナ前の2019年の株価とほぼ同水準で推移しており、深刻な業績悪化に悩まされている空運株や陸運株と比べて、強い動きとなっております。

 時価総額6兆円を超えるOLCの株価があまり下がらない理由は、業績の悪化は一時的だと市場参加者が考えている事、そしてディズニーランド好き且つ優待目的のファンが、同社株を保有している事に因ると考えます。

 株式の価格や価値を決定するのは、利益水準が重要なのは言うまでもないですが、コミュニティを支える熱烈な支持者やファンの存在が実は重要である事がOLCの時価総額(企業価値)から見て取る事が出来ます。

 バリエーションを考える場合には、見えない価値となる「ブランド」についても考慮してみましょう。株価指標には表れない価値が見えてくると思います。


 今回は、8月中旬に取材を行ったウェーブロックホールディングス【7940】をご紹介しております。主力事業であった壁紙事業を大株主のサンゲツ【8130】に譲渡して、事業構造変革中の会社です。成長分野として地熱ビ
ジネスを手掛けている、東証1部上場の小型バリュー株となります。


■投資家Sの今週の注目銘柄 ウェーブロックホールディングス【7940】


 樹脂加工メーカーの持ち株会社にして日本国内での網戸においてはシェア7割、農業用資材のシェアでは3割を誇るウェーブロックホールディングス(略称、ウェーブロックHD)【7940】は、現在事業構造の変革を行っている。 1月25日の年初来高値以降株価は低迷しているが、長期な目線で見ると面白い銘柄といえる。

 事業構造見直しの先鞭となったのは、同社の主力事業の1つとなる壁紙事業を一手に担っていたウェーブロックインテリアの株式を、インテリア用品大手サンゲツ【8130】に51%譲渡。更に連結子会社から除外した点か。
 壁紙事業は、原油が原料となるナフサ価格の上下が製品価格に大きな影響を及ぼす事から、樹脂依存度が高い同社グループの中でも課題となっていた。
 今回、子会社売却で得たキャッシュを活用して、同社は新規事業の地中熱ビジネスに取り組む事となる。

 地中熱ビジネスとは、土の中の温度が一年を通して一定である事に着目して、夏は冷気、冬は暖気として活用を行う。同社は農業用資材で3割のシェアを持つ事から、農業用ハウスの冷暖房として活用する事が出来る事に着目、既存事業とのシナジー効果を見込んで同事業への参入を行った。
 2期先となる2024年3月期には売上高7億円を計画しており、ESG時代の新ビジネスとして期待が出来る。

 また、同社は自動車パーツに使用する金属調のフィルム生産も行っており、この事業は今後自動車の主流となるEV(電気自動車)にも採用が期待される。

 自動車部品のメッキは従来は金属で行われていたがフィルムはプラスチック製で軽量となる為、車体重量の軽量化に貢献できる。昨今は自動運転技術等で車からの通信が必要となるため、電波干渉を起こす金属よりも、電波の透過率が高いプラスチック製品が好まれている。
 同事業は、今期の41億円から2期先には59億円まで売上高を伸ばす計画となっており、成長が期待出来る分野となる。

 一方、先述の通り同社の株価は現時点では冴えない動きとなっており、8月23日は年初来安値となる656円を付ける動きとなっており、年初から右肩下がりの弱い動きが続いている。株価が下がっているという事は良くない事が起こっているのか―と考えたくなるだろう。しかし、同社の財務内容は事業売却によって改善しており、今期も第1四半期から上方修正を行っている。
 配当利回りも直近では約4.5%となっており、インカムゲインを目的とした投資でも魅力がある。

 同社の現在の時価総額は約75億円、
 超割安の小型バリュー株として注目に値すると筆者は考えている。


(投資日報α2021年8月30日号掲載)


(投資家S)


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 ▼櫻田 学氏プロフィール
  トレース合同会社 社長
  株式会社投資日報社 専務取締役
  大学卒業後、2004年から証券会社にてFXの仕事に従事。
  以後、14年間に渡り、営業・企画・トレーディングの最前線で活躍。
  リーマン・ショック・ユーロ危機・Brexit等々の並居る大相場の中、
  裏方として市場の最前線で指揮を取り、FXの表も裏も知り尽くす。
  2018年秋、11年間勤めたマネックス証券を退社して、
  暗号資産(仮想通貨)の交換業者となる、株式会社ディーカレットの立ち上げメンバーに加わる。
  2020年5月に、相場道を究める為に同社を退職。
  個人投資家として株式投資を行いながら、投資に掛ける時間が限られる兼業投資家の方に有益な情報を届ける為、株式について日夜分析を行っている。
  日本テクニカルアナリスト協会 認定テクニカルアナリスト(CMTA)
  相場に対するモットーは、「利食いたくなったら乗せろ」


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