本日はニッチ戦略が成功した企業を紹介します。
■トリケミカル研究所(4369) [東証一部]
●事業紹介
半導体向け化学薬品を製造。絶縁膜材料で世界高シェアを持ち台湾向けが大きく占める。
半導体技術の発展や通信や情報処理分野への半導体レーザーを用いた光技術の応用が活発化するにつれ、その製造過程で用いられる半導体用特殊ガスの種類と量が徐々に増えています。
●半導体ガスについて
半導体ガスは金属と電気的に反応して重要な役割を演じるものです。
半導体材料ガスは、ほとんどのガスが自然界には存在していないこともあって、専門の特殊ガスメーカーにより製造されています。
例えば、半導体材料ガスで大量に使用されているシラン(SiH4)は、還元(SiCl4+LiAlH4→SiH4)や不均化反応(1種類の物質が2分子あるいはそれ以上で相互に酸化、還元その他の反応を行った結果、2種類以上の物質を生じること)によって製造することができますが、工業的には不均化反応で製造されています。
シランは主に成膜材料です。基板という板の上にシランガスをあて、温度を上げたり真空にするプロセスを踏んで、その板の上にとても薄い膜を作るのに使います。
その他にエッチングという工程で使う塩素、塩化水素、フロン類などで成長させた膜を削ったり掘ったりして縦方向の加工をします。
半導体材料ガスと言っても、その製造方法は合成、還元、不均化、分解などさまざまな化学反応が採用されています。また半導体材料ガスの原料の選定や製造方法、その純度等には各特殊ガスメーカーのノウハウが詰め込まれており、同じガスであっても、工業的には数種類の製造方法で製造されているガスも存在します。
また、半導体のエッチングや光ファイバーの脱水工程などに使用される塩素(Cl2)は、一般的に電気分解(2NaCl→2Na+Cl2↑)によって製造されます。
●同社の強み
同類の特殊ガスの製造は他社でも可能ですが、同社は小規模な生産量でも採算確保できる事業構造で、半導体の生産歩留り、性能を左右する品質差があります。そのため、半導体製造プロセスの微細化が進むほど同社のシェアは高まる傾向にあります。
中国ファーウェイへの輸出規制強化の影響が警戒されていますが、その減産分はアップルのiphone12や韓国サムスンのglaxy、中国のローカルスマホメーカーによる増産でカバーされる見通しであり、デジタルトランスフォーメーション(DX)や5Gが牽引して今後も成長が期待できそうです。
同社の強みは大手企業が扱わない、少量多種の製品を中心に扱っていることと、顧客からの高純度化ニーズ及び差別化への対応を推し進めることです。
●業績確認
8月31日に決算を発表しました。
22年1月期上期(2-7月)の連結経常利益は前年同期比6.6%増の
24.4億円に伸び、従来の18.1%減益予想から一転して増益で着地しました。また、通期の同利益を従来予想の44億円から49.8億円(前期は43.2億円)に13.2%上方修正しています。
上方修正の背景には、最先端半導体向けを中心に半導体製造用化学化合物の需要が旺盛だったこと、製品構成が計画よりも改善したことがあります。
また、韓国関連会社の業績が想定を上回ったことで持ち分法利益が増加したことや、為替相場が想定レートに対して円安に推移したことも寄与したとの事です。
株価は7/20の安値2914円を起点とし戻り相場を形成中。
今後も好業績の見直し買いが続くと思われます。
(あすなろ産業調査部 藤井勝行)
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