皆様こんにちは、投資家Sと申します。
創業(1964年)半世紀を超える投資日報社が、毎週月曜・木曜に発行を行っております、”投資日報α”(月曜版)に”投資家Sの今週の注目銘柄”を連載しております。
先週末近所にあるホームセンター、島忠に行って来ました。
島忠は昨年秋に発生した、DCMホールディングス【3050】とニトリホールディングス【9843】による買収合戦を経て、ニトリHDの完全子会社となり、今年上場廃止となりました。
筆者は、今年3月に行われたニトリホールディングスの決算説明会に参加したのですが、ニトリの経営陣は「島忠との融合を進める」と話しておりましたが、この言葉に嘘は無く、島忠のニトリ化が進んでおります。
関東・関西在住の方以外には馴染みが無い話となり恐縮ですが、島忠の売り場はナショナルブランドの商品が多く、良く言えば昔のホームセンター、悪く言えば洗練されていない売り場構成となっております。
一方でニトリは、殆どの商品がPBブランドとなっており、商品に対するコンセプトが強烈に打ち出された、自社企画商品が殆どです。
現在島忠の売り場では、ニトリ買収前に企画したと思われる商品の処分セールが行われており、定価の70%引きで売られている商品も多数存在しております。
結構な値引き幅だったので商品を手に取ってみたのですが・・どうにもイケて無い商品が多く、安さだけでは食指が動きません。
経済力は落ちたと言えども世界の中では裕福な部類に入る日本の消費者は、世界の中でも目が肥えているとも言われており、品質と価格に対する要求が厳しいです。
実際に、近年日本国内で大成功している小売業はほぼSPA(製造小売業)となっており、前述のニトリ、ユニクロ・ジーユーを運営するファーストリテイリングを筆頭に、無印良品を運営する良品計画も大成功を収めております。
かつての日本は世界2位の経済規模を誇っていた為、国内市場だけでもそれなりに大きなマーケットがあり、規模の小さい会社やブランドでも生き残る事が出来ましたが、今後の日本は人口減少社会となる為、且つてとは異なり寡占化が進む事になると予想されます。
今回のニトリによる島忠買収はその幕開けであり、減少ペースが早い北海道・東北地区を地盤としている会社を中心として、合併・買収が加速すると考えております。
「かつての敵は今日の友」として、同業同士による合併・買収が、今後3~5年の株式市場における注目材料となりそうです。
今回の注目銘柄は、小売り・流通業界に先駆けて合併が進み、現在は日本国内でわずか3グループとなってしまった、最大手のメガバンクグループについてご紹介致します。
■三菱UFJフィナンシャルグループ 【8306】
三菱UFJフィナンシャルグループ(以下MUFG)【8306】は、国内最大の金融グループとなり、傘下に銀行・証券・信託銀行を抱えている。
銀行株は、日銀によるマイナス金利が導入された2016年から5年に渡って冴えない動きとなっており、万年割安の状態であったが、ここに来て変化の兆しが見えている。
国内での大幅な金利上昇は今後3年程度発生しないと思われるが、海の向こうアメリカでは、金融市場でもアフターコロナが本格化している。
先日行われた米FOMCでテーパリング(量的緩和縮小)の検討が示唆された事により、超緩和状態の金融政策終了が近づいている。
現在のアメリカの物価上昇は、新型コロナウィルスによる供給制約・米中新冷戦・トランプ前大統領時代に行なわれた移民政策の変更に伴い、慢性化しそうな条件が整っている。FRBのパウエル議長は、「物価上昇は一時的」との発言を続けているが、筆者の見立てでは今の物価上昇が一時的だとは思えず、金融緩和の縮小を想定よりも早めざるをえない状況が近づいてると推測する。
テーパリング終了=金利上昇が本来の姿であるが、FEDによる資産購入プログラムは21年6月時点でまだ続いており、世界中の機関投資家によるイールドハンティングの動きも活発に行われており、足元米長期金利は上がらない状況。長短金利差が収益源となる金融機関には、厳しい状況がまだ続いている。
一方で、年単位で金利動向を考えた場合には、上昇方向に向かう可能性は相当高いと考えられる。理由は下記の3点。
1)FEDによる国債買い入れは早ければ年内にも縮小
2)インフレが続けば物価の上昇を放置する事は出来ない
3) 債券は史上最大規模のバブル商品
これらの理由及び、アメリカ長期金利は数十年クラスのボトムを20年3月の0.31%で付けた可能性が高く、ボトムを付けた相場は上昇に転じる可能性が高い。
結果として、国内メガバンクグループで最も海外展開が進んでおり、米金利上昇の恩恵を受けるMUFG株は、今年の下半期~2022年に掛けて注目銘柄となる可能性が高い。
足元の株価は、金利上昇一服を背景として600円付近での揉み合いとなっているが、本銘柄の最大のセールスポイントは、金利上昇という株価上昇に繋がる材料が有りながら、配当利回り約4.5%の高配当株であり、インカムでも収益が得られる。
ことわざに反し、二兎を追う者は”二兎を得る”ような銘柄になる可能性をMUFG秘めていると、筆者は考えている。
(投資日報α 2021年6月28日号掲載)
(投資家S)
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▼櫻田 学氏プロフィール
トレース合同会社 社長
株式会社投資日報社 専務取締役
大学卒業後、2004年から証券会社にてFXの仕事に従事。
以後、14年間に渡り、営業・企画・トレーディングの最前線で活躍。
リーマン・ショック・ユーロ危機・Brexit等々の並居る大相場の中、裏方として市場の最前線で指揮を取り、FXの表も裏も知り尽くす。
2018年秋、11年間勤めたマネックス証券を退社して、暗号資産(仮想通貨)の交換業者となる、株式会社ディーカレットの立ち上げメンバーに加わる。
2020年5月に、相場道を究める為に同社を退職。
個人投資家として株式投資を行いながら、投資に掛ける時間が限られる兼業投資家の方に有益な情報を届ける為、株式について日夜分析を行っている。
日本テクニカルアナリスト協会 認定テクニカルアナリスト(CMTA)
相場に対するモットーは、「利食いたくなったら乗せろ」
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