日本の株式市場は相変わらず停滞気味に推移している。

 短期的には米国市場の金利上昇やコロナ禍の感染拡大それによる景気の先行き不安などを停滞理由として多くの市場関係者が解説しているが、これまでの相場の変動から見てやむを得ないのかも知れません。

 それでもグローバル指向、技術指向、成長指向の上場企業には世界中の投資家の関心が集まっていますのでしばらくすればまた活気を取り戻すものと筆者は楽観的に考えています。

 このところの話題の中で気になるのは東証の市場改革です。
 現状の市場区分は東証1部、2部、マザーズ、JASDAQという4区分となっていますが、それをプライム、スタンダード、グロースの3市場に分けていこうというのが今回の市場改革の骨子です。
 同時に指数も改革されようとしており、東証2部やJASDAQは2022年4月に廃止される予定です。
 また、中小型株成長株指数を表すマザーズ指数は2022年10月から定期入れ替えがなされ、2023年10月からは東証グロース市場250指数に名称変更される予定です。
 さらに、東証1部(2191銘柄)全体を表すTOPIXが、流通時価総額100億円以下の約600銘柄(東証1部全体の3割)が除外されようとしています。

 皆さんがお手持ちの銘柄にもそうした銘柄が含まれているのかも知れません。


 ここでのポイントは流通時価総額というものです。

 全体の時価総額(発行済み株式数×株価)から役員所有株+自己株+10%以上保有の役員以外の大株主保有株+その他特別利害関係者保有株式の株式数×株価を差し引いて計算される流通時価総額が100億円未満だといくら全体の時価総額が大きくてもプライム市場には残れないことになりますのでそのボーダーラインにある企業は対応に迫られているかと思います。

 これまでは東証1部銘柄のすべてがTOPIX組入れ銘柄でしたが、今後はこの基準をクリアできない銘柄は指数に採用されないことになります。つまり選別型への移行です。2025年1月には完全除外される予定です。
 多くの投資家はこの市場改革、指数改革を前提に投資スタンス、銘柄選定を行っているものと思われますが、TOPIX指数に採用されないおよそ600の該当銘柄には見えない売り圧力が高まっているのかも知れません。

 気概ある企業は東証市場改革に向けた対応を積極化させようとしているのかも知れませんが、足元のコロナ対応に加え、流動性向上を含めた市場対策にも注力する必要がありますのでなかなか大変です。

 流通時価総額100億円というボーダーラインをめぐってのせめぎ合いの株価変動が続くのかと思いますが、少なくとも収益性の向上や財務内容を維持できている企業価値の高い中堅優良銘柄にはプライム市場への移行が当面の課題となるのかも知れません。

 事業規模の拡大を図るための施策の一つがM&Aですが、キャッシュリッチで成長指向の企業にとっては今回の市場改革に合わせて、流動時価総額向上に向けた何らかのアクションを積極化させる良い機会かと思われます。

 全体時価総額400億円前後で浮動株比率20%程度の企業であれば時価総額を高めるとともに売出等も実行しながら浮動株の増加に努めるとともにそのためのIRを積極化させる必要があります。


 そうしたリアクションを採った企業の株価こそ中長期的に投資家にリターンをもたらすと言えそうです。


(炎)


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