先日私がここ7年ほどフォローしてきたある銘柄が今期の業績(売上、利益)を下方修正した。2月上旬の3Q発表時点での修正ではなく、タイミングを少しずらしての下方修正だった。
 残すところ1か月余りで既に結果が見えたので下方修正に至ったのだろう。
 下方修正の発表はとても残念なことだが、既に株価には織り込まれてしまった感がある。

 明らかに3Qの進捗が悪いと見られたためこの銘柄を持っている多くの投資家にとっては想定された覚悟していた下方修正だったのかも知れません。

 発表の翌日に大きく売られると思われた株価は案外堅調な推移で寄り付きはややまとまった買いが入り、多少でもプラスで始まった。その後は売り物に押され前日比で小幅マイナスで終えたがさほど大きな下げには至らなかった。

 これには潤沢なキャッシュを用いた自己株買いの同日発表という施策があってのものと考えられる。

 単純な下方修正だけの発表だったら株価はここまで堅調なものとはならず、ストップ安が想定されたのだが、投資家は同日に発表された自己株買いを評価したものと思われる。

 筆者はこの銘柄を典型的なバリュー銘柄として捉え多くの投資家にアピールしてきたが、今やこのセクターには様々なキャッシュ潤沢な銘柄が数多く存在しており、珍しくもない事業内容、財務内容の銘柄と言える。

 しかもそうした銘柄を多くの投資家にいつの間にか投資して頂いたという経緯がある。その結果として恐らくは中長期スタンスでの投資と決め込まれている投資家が圧倒的となっているように思われる。その表れが今回の業績下方修正後の株価変動となったと推察される。

 バリュー銘柄企業の伝家の宝刀、自己株買いが炸裂。とは言え、その実施株数や金額を含め経営陣には文句を言いたいことは沢山ある。私のコラムを長年ご覧頂いている皆さんならこの銘柄がどこなのか、おわかりだと思うが、「溜め込んだキャッシュを経営の失敗の穴埋めとして使うなど、もってのほかだ。」という声もあり、できればその決算修正の内容と自己株買いの経緯などを確認しに近いうちに当該企業と面談をしてみようと考えている。


 それにしても同社の業績は再び回復するとは見てはいるがどうやら業績とは違った視点での評価なのかと気になるところだ。つまり下方修正でも大きく株価が下振れしなかった謎が今の相場の好需給を表しているとも言える。

 浮動株がいつの間にか吸い取られ限定されているとすればこうした現象にもなる。

 株価は当面は下にも上にもいかずにこのままの水準で3月末を迎えることになりそうだ。本日から実行される2%ほどの自己株買いの平均単価からもそうした点が想定される。

 これからはキャッシュリッチな企業への個人投資家の要求が一段とシビアなものとなる可能性がある。お金をいつまでも使わず温存したままの企業への要求だが、果たしてこうした要求が受け入れられるものか見守っていきたい。


(炎)


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